ご近所に出没する妖怪と、妖怪マップを妄想【ぼくとフジオ・23】
『ねたあとゆうえんち』や『よなかかいじゅうイビキラス』(ともに白泉社)などでおなじみの絵本作家でイラストレーターの大串ゆうじさんが、子育ての中で日々湧いてくる「妄想」を描きます!
こんにちは。今回は妖怪を題材にしていろいろと考えてみたいと思います。
息子のフジオ(4歳)が妖怪大好きというよりも、僕が妖怪のことを子どもの頃から大好きで、小学校の図書室にあった水木しげる先生の妖怪図鑑を何回も借りては家で読んでいた記憶があります。フジオと一緒にいる時に、「これってもしかしたら妖怪のしわざじゃない?」などと話していたので、いつかこの連載でもフジオの日常と妖怪を絡ませて何か出来たらな~、と考えていました。
最近フジオが地図を描くのにハマっていて、家の周辺の地図を描いては嬉しそうに「テントウムシがよくいる公園はここ! 踏切はここ!」と言ったりしています。その様子を見ていて、「フジオの日常生活に潜んでいる妖怪たちの居場所などを描きこんだ地図を作ったら面白いかも……!?」と閃きました。
昔の人も、自分たちの理解を超える奇怪なことや、異常な現象を絵にしたり名前をつけたり、妖怪という形あるものにして、まさに妄想創作そのものです(本当に妖怪を目撃したという人の体験談を元に作られたパターンもあると思いますが)。いにしえの妄想創作者達を敬いつつ、僭越ながら僕も妖怪を考えてみることにしました。
第23回 フジオの日常に潜む……近所の妖怪マップ
まずは妖怪マップに入れる妖怪を考えてみました。
その1 夜のタマちゃん
近くのラーメン屋さんが飼っていて近所のアイドル的な存在となっているとても人懐っこい猫のタマちゃん。フジオもそんなタマちゃんが大好きです。
ところが、先日、夜中にコンビニに行こうとマンションを出た所でゴソゴソゴソという音が……。ん?っと見ると……、そこには昼間のかわいい顔とは全く別の野生の本能むき出しのタマちゃんがネズミを咥えてギロロ~ンと僕を睨んでいました……。「この事言ったらわかってるよな……」とタマちゃんが喋ってきたような。こなかったような。
妖怪マップに入れておきましょう。
その2 虫寄せ爺
マンションの階段には毎日いろいろな虫がいて、フジオは毎朝階段の虫を見つけるのをとても楽しみにしています。夜間の照明に引き寄せられて集まってきているんでしょうが、それにしてもいろいろな虫がいます。もしかして夜中に虫を誘き寄せている頭がピカピカの妖怪がいるのかもしれません。フジオにしてみたら嬉しい妖怪です。
その3 魔さつブレー鬼
駅の近くの道で電車を見ていると、電車が駅に到着する際に何ともいえない独特の臭いがして気になっていました。フジオもよく「くさい!」と言います。あれはブレーキが加熱してゴムが焼けた臭いらしいです(古い形式の電車で臭うことがあるそうです)。
でも、もしかしたら臭いオナラを出す妖怪が車輪にしがみついているのかも……?とフジオと話しながら考えた妖怪です。
その4 かべぐいドクロ
近所にけっこう年季の入った雑居ビルがあり、壁にもところどころヒビが入っていたり、なかなかの風格なのですが、このヒビは壁をかじるのが大好きな妖怪「かべぐいドクロ」が毎晩ガリガリとかじってできたヒビかもしれません……。
その5 夜中の保育園
以前、夜中に散歩をした時に、たまたまフジオが通っている保育園の前を通りかかったのですが、昼間のにぎやかな雰囲気とは違い、シーンと静まりかえっている感じがとても不思議で印象的でした。その時「もしかして、夜中になると妖怪保育士の先生と妖怪園児たちが集まってきて夜中の保育園が始まるのかも……?」という妄想をしてしまいました。
そしてこの妖怪達を地図の中に入れて近所の妖怪マップを作りました。
これを見ながら妖怪を探すのも良し、妖怪に会わないようにするのも良しの妖怪マップです。
新しい妖怪を見つけたら、どんどん付け加えてアップデートしていくといいでしょう。妖怪マップを作っていたらフジオも刺激を受けたみたいで独自の妖怪の絵をどんどん描いていました。もう少し大きくなったら妖怪の映画とか一緒に観たいな~と思っています。
以上「近所の妖怪マップ」でした。ありがとうございました!
大串ゆうじ
おおくしゆうじ/1976年茨城県出身。多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。個展などで作品を発表しながら、雑誌、テレビ、広告などのイラストレーションで活躍。著作絵本に『よなかかいじゅうイビキラス』、『ねたあとゆうえんち』(白泉社)『しょうてんがいくん』(偕成社)がある。
www.senggeng.com/kushi/