さようなら 赤ちゃん【菊田まりこの子ども是好日・10】
失うことの哀しみは果てしないよね。でも、そういう時ほど
いま手の中にあるものを見てみる。
だからといって、その哀しみはすぐには、去らないし、
波のように、何度も打ち寄せるものだから。
心が涙を流しているうちは
無理に止めず、流れていたっていいじゃない。
そのうちに、涙は自然に乾いて、キラキラした結晶になって
心の中に、ずっと大切にしまって置けるようになるからね。
いま、手の中から失ったもの、手の中にあるもの、
どっちも。私のところへ来てくれて、ありがとう。
菊田まりこ
きくたまりこ/絵本作家。絵本『いつでも会える』でボローニャ国際児童図書展で、ボローニャ児童賞・特別賞を受賞。絵本に『ゆきの日』(白泉社)『ひとつぼし』(学研プラス)『月のしずく』(WAVE出版)、育児エッセイに『だっこしておんぶして』『君へのてがみ』(角川文庫)、翻訳を手がけた絵本『わたしのそばできいていて』『おばあちゃんのおくりもの』(WAVE出版)など。
http://kikutamariko.jp