2020年3月2日

子どもたちを知るヒントを、絵本からもらっています。写真家・繁延あづささんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・9】

気になるあのママ・パパは、絵本をどんなふうに楽しんでいるの? 親子の読み聞かせについてお話をうかがう連載。第9回は14歳と12歳の男の子、5歳の女の子のママで、kodomoe webの写真投稿連載「みんなのコドモPHOTOギャラリー」の審査員もつとめる、写真家の繁延あづささんです。

子どもたちの成長の仕方がそれぞれ違うことを、絵本が気づかせてくれた

――絵本の読み聞かせはいつごろからどんなふうにされていますか?

長男が生まれたときが始まりなので、もう14年も読み聞かせしていますね、自分でもびっくりです!  長男はもう読み聞かせることはありませんが、12歳の次男は今でもたまに末っ子と一緒に聞いています。 読むタイミングは、やはり寝る前の布団に入るときが多いです。夕飯終わって寛いだあとに「歯磨きとトイレをすませて、絵本選ぼう〜」と言うことで、子どもを寝室へ促してます。

私にとっても、布団で寝転んで読むのが日々の楽しみのひとつです。ただ、長男は絵本好きで10冊以上持ってくることもあり、かなりヘトヘトになっていた記憶があります。

――読み聞かせをする絵本はどうやって選びますか?

それぞれ好きに選ばせています。今は多くて3冊ぐらい。それと別に、選ばなくてもいい絵本(?)も枕元に置いてあります。『母の友』(福音館書店)で毎年11月号でされる「こどもに聞かせる一日一話」特集や、古本で買った『ママお話きかせて』(小学館)など。一話ごとに日付が付いていて、「今日はこれなのか〜」と与えられた機会を楽しむように読んでいます。そういうものが枕元にあると、読む気分じゃなくて絵本を持たずに布団に入ったけど「やっぱり読みたい!」となったときにすぐ開けますから。うちは寝室が2階で、一度布団に入ったら動きたくない親子なので(笑)。

子どもたちを知るヒントを、絵本からもらっています。写真家・繁延あづささんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・9】の画像1

――読み聞かせをしていてよかったなと思うことはありますか? お子さんのことで発見したことなどもあれば教えてください。

読み聞かせで助けられてきました。子どもって最初は言葉を話せないし、たとえ話せるようになっても、言葉でうまく伝えられるようになるには何年もかかりますよね。そういう時期に、絵本を一緒にめくりながら指差したり、笑いあったり、会話したりながら、コミュニケーションを補助してもらっていた気がします。

たとえば、『おっしくっらまんじゅう』(福音館書店・こどものとも012)という絵本があります。トマトとみかんとりんごとバナナが、いかにも寒そうに青ざめている場面から、おしくらまんじゅうしながら赤や黄へと色づいて、あったまってほてったような笑顔になっていく。おかいみほさんの可愛らしい絵が心地よく、娘と寒い冬に何度も読みました。「さむい」と「あったかい」という言葉と意味を、彼女はこの絵本を頼りに得たんじゃないかな。  

発見ということでは、子どもたちそれぞれを知るヒントを絵本からもらっています。好きな絵本を選ばせながら成長をみていると、それぞれ好みだけでなく、成長の仕方が違うことに気づかされます。

長男は年齢のわりに早くから科学絵本や長編物語に移行していきました。彼にとって“絵本”は、メディアだったのだと思います。楽しんだり言葉を知ることはもちろんですが、自分が生きている世界を知る窓のようなものに思えたのでしょう。「知りたい」という欲求とともに、言葉を獲得していく様子を目の当たりにしました。保育園年長のころ、私がウトウトしながら読むのがじれったかったようで、「もういい、じぶんで読むよ」と私の手から『ドリトル先生アフリカゆき』(すでに絵本じゃないですが)を奪い、ここで早くも長男への読み聞かせは終了しました。  

一方で、次男は絵本に執着なく、私との時間を楽しむのみ!  選ぶ絵本の特徴は、平和的でナンセンスでユーモアあるもの。シンプルな言葉の短い話を繰り返し読むのが好きでした。言葉と絵の雰囲気を楽しむアーノルド・ローベルの『ジャイアント・ジョン』『ふたりはともだち』などがお気に入り。一緒に読んでいると、「私もこういうの好きだったなあ」というのが思い出されて、少し次男のことがわかった気がしたんです。私も小さい頃、心理学でいうところの《安全基地》を、絵本の中にも持っているような子だったなあと。早々に役割終了した長男への読み聞かせに対し、次男にはまだ私の役割が残っているのが嬉しいです。  

子どもたちを知るヒントを、絵本からもらっています。写真家・繁延あづささんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・9】の画像2

あとは、大人の私にとっても楽しみが多かったことですね。科学分野の本であれば、そこにはきちんとした基本情報から最新情報までが描かれていますし、専門家が監修されていたりもする。子ども向けにわかりやすく書かれているから、入り口としては最高です。奥付にある名前を参考に他の本に手を伸ばすこともありました。

――繁延さんご自身は、子どもの頃、読み聞かせをされた思い出などはありますか?  

小学生の一時期、『日本昔話』を読み聞かせしてもらっていた覚えがありますが、母は教師で忙しかったのか、あまり読んでもらった記憶はありません。ただ、童話が語られるレコードを買ってくれて、応接間のソファで寝転がって解説本の絵を眺めなが聴くのが大好きでした。恥ずかしながら、レコードが私の読み聞かせ体験ですね(笑)。

繁延さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊

――それではここで、繁延さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊を教えてください。

『はちうえはぼくにまかせて』
(ジーン・ジオン/作 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 もりひさし/訳 ペンギン社)

子どもたちを知るヒントを、絵本からもらっています。写真家・繁延あづささんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・9】の画像3

この本は子どもたち全員のお気に入り。今でも頻繁に読みます。 夏休みどこにも連れてってもらえない主人公トミーが考えたのは、夏休みに出かける近所の人たちの鉢植えを預かって、1日2セントもらうこと。ただお金をもらうのではなく、植物たちがどうしたら元気に育つかを調べ、世話して、大人たちに感謝される小さな少年の話に子どもたちもワクワク。

この本を小さい頃に何十回と読んだ14歳の長男は、いま鶏を育て、採卵して近所の人に販売しています。この絵本の影響じゃないかとひそかに思ってます。
(長男の養鶏話は『婦人之友』にて掲載。現在第一弾がwebで公開中 https://www.fujinnotomo.co.jp/

『わたしのくつ』
(柴田愛子/文 まるやまあやこ/絵 ポプラ社)

子どもたちを知るヒントを、絵本からもらっています。写真家・繁延あづささんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・9】の画像4

娘がよく持ってくる絵本です。あたらしい靴が嬉しい。汚したくないから思い切り遊べない。そんな葛藤が一日一日少しずつ変化して、ある日ふと吹っ切れたように、一歩踏み出していく。娘はもしかしたら、自分の気持ちが描かれていると思ったんじゃないでしょうか。気持ちをうまく伝えられない子どもにとって、大人の理屈は乱暴かもしれない。読み聞かせながら、私もハッとしました。

次男と同じくさして絵本好きでもない娘ですが、たまに「あ、自分の言葉で話してる」と思わせられる瞬間があります。よく考えてみれば、それは自身の気持ちを言葉にしているとき。用件を伝えるのと違って気持ちを伝えるのは難しいですが、それを伝えようとするのはこうした絵本の影響があるのかもしれません。

『土神ときつね』
(宮沢賢治/作 大畑いくの/絵 ミキハウス)

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宮沢賢治の名作を絵本作家の大畑いくのさんが描いた作品。正直なところ、この絵本ではじめて『土神ときつね』の空気感がグッと入ってきた感覚がありました。大畑さんの絵が手がかりになったような。子どもたちに読み聞かせながら、私自身がものすごく感動! 一方で当時幼かった子どもたちの反応は薄かった(笑)。でもそれはそう。大人になるにつれて抱えてしまう醜いものを、感じ取るのもやはり大人だから。まだ読み聞かせを楽しんでくれる12歳(思春期)の次男にひさびさに読んでみようかな。

――14年続いている読み聞かせは、まだまだ続きそうです。

はい。子どもたちが成長して、絵本を読み聞かせる相手がいなくなることが残念でなりません。

子どもたちを知るヒントを、絵本からもらっています。写真家・繁延あづささんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・9】の画像6繁延あづさ
しげのぶあづさ/写真家。雑誌や広告での撮影のほか、出産撮影や子どもの撮影、また農・猟に関わる撮影も。近著に『うまれるものがたり』『長崎と天草の教会を旅して』(共にマイナビ刊)がある。『母の友』(福音館書店)、ウェブマガジン『あき地』(亜紀書房)にて連載中。14歳&12歳の男の子、5歳の女の子のママ。

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