2020年3月26日

疲れっぱなしの日々も絵本に救われた。絵本作家・柴田ケイコさんの読み聞かせ【うちの読み聞かせ・10】

気になるあのママ・パパは、絵本をどんなふうに楽しんでいるの? 親子の読み聞かせについてお話をうかがう連載。第10回はkodomoe の絵本『ぽめちゃんとだっくすちゃん』を3月に刊行、現在中学生と小学6年生の男の子ママでもある、絵本作家の柴田ケイコさんです。

地味な存在に思える絵本が、子どもたちに与える大きな影響力

――柴田さんは、いつごろからどんなふうに絵本の読み聞かせをされていますか?

子どもが0歳のときからほぼ毎晩、寝る前に読んでいました。もともと私が絵本に興味があったので、読み聞かせの絵本は基本的には私目線でいいなと思ったものを図書館で借りたり、本屋さんで見つけたり、でしたね。絵にインパクトのあるものを選んでいたように思います。最初は赤ちゃん絵本、2歳くらいからは、文字が少なめの絵本や仕掛け絵本をたくさん読んだ覚えがあります。

我が家の絵本棚。私のお気に入りの絵本や資料としているものも多く、特にこだわりなどはないですね(笑)。約200冊ぐらいあるでしょうか。

 

――ジャンルなどはこだわりなく、という感じですか?

そうですね。教育的な視点で選ぶ感覚はあまりなくて、お話と絵がいいバランスで、楽しくてワクワクするような絵本、手遊びできるような絵本、ちょっと怖い絵本とか。絵本をきっかけにして、いろんな楽しみ方を経験してほしいなと思って。

子どもたちが少し大きくなると、私が選んだ本と子どもたちに選んでもらった本、それぞれ読んでいたので、冊数はかなり増えましたが、1日のなかで唯一ゆっくり子どもたちと過ごせる時間だったので、忙しい中でもあえて時間を作るようにしていました。

――お子さんたちの成長を見て、絵本の影響を受けているな、と思うことはありますか? 

絵本の読み聞かせをした結果、なのかどうかはわかりませんが、ふたりとも絵本さえあれば病院の待合でも落ち着いて待ってくれるような子でしたね。長男は外に遊びに行くというより本を読むことが大好きで、保育園時代は暇さえあれば、園でもレゴか本を読んでいたそうです。次男は本を読むのは苦手ですが、外に遊びに行き、虫を捕まえては図鑑に載っているものか確かめたり、観察して絵を描いていました。

むしろ、読み聞かせの影響をいちばん受けているのは、絵本を作る側になれた私自身かもしれないと思っています。

文字を読むことにハマっていた長男。私の仕事の資料まで、絵本のように読んでいました。

こちらは、よく図鑑から絵を写していた次男の絵です。

――絵本を描くようになったのは、お子さんが生まれてからなのですよね。読み聞かせの経験が、ご自身の絵本づくりに影響を与えていると思うことはありますか?

最初の絵本『めがねこ』(手紙社)については、長男の弱視がきっかけで、息子にめがね嫌いになってほしくない、同じ境遇の方に読んでもらいたい、という思いから作った絵本で、直接読み聞かせがきっかけ、というわけではないのですが……、実は毎週1回、小学校で読み聞かせをする活動を8年間行っていて、そのなかで感じていることがいろいろあります。

先生方からの話ですが、読み聞かせをした日はスムーズに授業に入って行きやすいとか、先生以外の大人が来て、絵本を読んでくれるということをとても楽しみにしている、といったエピソードなど。絵本って、ちょっと地味な存在にも思えますが、自分が思っている以上に、子どもたちにとって影響力のある存在なんですよね。そう思うと絵本づくりは奥深く、簡単なものではなく、だから面白いものなんだと思います。

――柴田さんご自身が子どもの頃の、読み聞かせの思い出などありますか?

両親が共働きでとても忙しい家庭だったので、読み聞かせをしてもらった記憶はないのですが、家に林明子先生の絵本があったことは覚えています。あと、図書館で見つけて大好きになったのは「ねずみくんのチョッキ」シリーズです。絵本ってカラーがほとんどの世界なのに、あのモノクロで描かれた絵がただ可愛いだけでなく、少しだけ奇妙な雰囲気もあって、衝撃的で……。ぐいぐいひきこまれました。

柴田さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊

――それではここで、柴田さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊を教えてください。

『もこ もこもこ』 
(谷川俊太郎/作 元永定正/絵 文研出版)

何回も「読んで!」とせがまれた絵本ですが、なぜか読んでいて気持ちいい言葉の並びでした。気づいたときには、もうボロボロになっていたのを覚えています。

『がたんごとんがたんごとん』
(安西水丸/作 福音館書店)

これも何回も読まされました。息子たちが乗り物が好きだったのと、シンプルな絵が言葉とマッチしていてとても読みやすい感じがしました。

せんろはつづく
( 竹下文子/文 鈴木まもる/絵 金の星社)

持っていた絵本ではなかったのですが、図書館に行くと必ず息子が読んでいた絵本です。このシリーズがずっと好きでよく借りてきて読んでいました。

――いま、読み聞かせをしていた時間を振り返って、いかがですか?

子どもたちが小さいときは、忙しいときにかぎって熱を出したり、ぐずって泣いたり叫んだり……。疲れっぱなしの毎日でしたが、私の場合、絵本に救われたことがたくさんあります。好きだったから読み聞かせも楽しめたし、そのバランスでなんとかここまで育てることができたと思います。

小学2~3年生ぐらいになったときに、子どもたちが寝る前の読み聞かせをせがんでこなくなって、もう卒業なのか、ああ、成長したんだなって思ってちょっと寂しい気持ちになりました。たくさん読んできたように思いますが、もっともっと読み聞かせをしたかったですね。私にとって読み聞かせは子どもたちと過ごした大事なふれあいの思い出のひとつです。

柴田ケイコ
柴田ケイコ/絵本作家・イラストレーター。高知県高知市在住。広告全般、出版物、WEB媒体など、あらゆるジャンルでイラスト制作で活動中。絵本に『めがねこ』(手紙社)『おいしそうなしろくま』(PHP研究所)『ぽめちゃん』(白泉社)など。 http://www.shibata-illust.com/

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