2020年9月10日

骨盤が痛い(涙)そんな時どうしたら?【妊娠中のトラブルシューティング・4】

妊娠するとカラダのあちこちが痛かったり、お腹が張ったり……。マイナートラブルが絶えないものの、その対処法がわからない人も多いはず。そこで、産前産後のママ25000人の体を整えてきた助産師の是枝貴子さんが、妊婦の痛みや辛い症状のメカニズムとその対処法をレクチャーします。Vol.4は妊婦の骨盤の痛みとその整え方を解説します。
モデル/惟村寛子 撮影/志田三穂子 取材・文/野々山幸(TAPE)イラスト/原田晃 スタジオ/マミースタジオ 

妊娠すると仙骨が出っ張る?

「仰向けからお尻を持ち上げたり、寝返りをうつときに
お尻の真ん中の骨が痛くなるので、
痛くならないに体勢を探り探り起き上がっています」

「お尻の骨に激痛が走るので仰向けで膝を伸ばして寝られない」

「健診で仰向けに寝た後に痛くてなかなか起き上がれない」
                マミーサロンを訪ねる妊婦さんたちの声

妊娠をすると「リラキシン」というホルモンの作用を受けて、骨盤まわりの筋肉やじん帯がゆるみます。さらに子宮が大きくなり骨盤にかかる重みが増してくるため、それを受け止める骨盤には大きな負担がかかってしまいます。身体のクセやバランスの取り方は人によって様々なので、その重みを骨盤のどこで受け止めるかによって痛む部位が異なります。骨盤の前側に負担がかかることで痛みを生じる「恥骨の痛み」については、前回の『妊婦の恥骨が辛いワケ【妊娠中のトラブルシューティング・3】』の通りですが、今回は骨盤の後ろ側に負担がかかることで痛みを生じる「仙骨・尾骨の痛み」についてお伝えします。

骨盤は、左右1対の寛骨、仙骨、尾骨という複数の骨から構成されています。
その中の寛骨は、子どもの頃、腸骨・恥骨・坐骨という3つの骨に分かれていて軟骨によって連結している構造ですが、思春期以降にそれらが癒合し、1つの寛骨になります。
そのうち、身体の後面にある、逆三角形の形をしている骨が仙骨。仙骨は、寛骨(腸骨)と仙腸関節で連結されています。さらに、仙骨の先にくっついているのが尾骨です。

通常、仙腸関節は、筋肉やじん帯によってがっちりと結合されているので、みなさんがイメージする関節とは異なり、ほとんど動きを持たない関節として知られています。しかし、妊娠してリラキシンの影響を受けると、仙腸関節を結合している筋肉やじん帯がゆるむことで、仙腸関節がルーズになります。そのルーズになった仙腸関節に子宮の重みがのしかかることで、仙腸関節がひろがり、その結果、仙骨や尾骨が後方に突出してきます。それが妊娠中に起こる仙骨や尾骨の痛みの原因です。このタイプの妊婦さんは、仙骨や尾骨が圧迫される体勢(仰向けなど)で痛みが増します。

仙骨の出っ張りすぎor腰の反りすぎ? あなたのタイプは?

仙骨や尾骨の痛みは、以下の2種類のタイプにわけられます。

①仙骨の出っ張りすぎタイプ
仙腸関節がルーズになることで、仙骨が出っ張りやすくなるのは、先ほどお伝えした通り。仙骨が出っ張りすぎないようにコントロールするのがお尻の筋肉の役目です。お尻の筋肉がしっかりと備わっている人は、仙骨が突出してこないよう中に押し込んでおけるのですが、お尻の筋肉が弱い方は、仙骨を押し込めておけないので、妊娠週数が進むとともにどんどん仙骨が出っ張ってきてしまいます。お尻に力を入れたときにお尻のほっぺにえくぼができない方は要注意!

②腰が反りすぎタイプ
妊娠週数が進むとお腹の重みに耐えるために、腰がどんどん反ってしまうタイプの方がいます。腰が反りすぎると相対的に仙骨が外に出っ張ってしまいます。このタイプの方は、腰の筋肉が縮み疲れがたまってしまうので、頑張りすぎている筋肉の緊張をゆるめるケアが必要になります。

タイプ別!仙骨や尾骨の痛みを和らげる対策

(仙骨が出っ張りすぎタイプの対処法)


対処法①:おしりの筋肉をきゅっと締める
お尻をキュッと締めると、骨盤を自力で締めることができるように。トコちゃんベルトやさらしなどのアイテムを使うことも大事ですが、できるだけ自分の筋肉で骨盤を締めておけるようにしておきましょう。
信号待ちのとき、キッチンに立っているとき、電車に乗っているときなど、気づいたときに「ながら」でいいので、お尻のほっぺにえくぼを作るように、キュッと引き締めてみて。

対処法②:さらしを巻く
仙骨が出っ張っている人は、さらしや骨盤ベルトを用いて、お尻の足りない筋力を補ってあげるケアが有効。さらしでもベルトでも、お尻の筋肉をサポートするため、前から後ろ向きに巻くのが鉄則!

1)まずは立った状態でさらしを巻く位置を確認。恥骨にさらしの下端が少しかかるくらいの位置にさらしを当てる。腰骨にさらしがかからないように注意する。


2)さらしを後ろに持っていき、お尻のいちばん膨らんでいる部分で交差させる。


3)2)で巻いたさらしがずれないように仰向けへ。お尻を持ち上げながら、さらしをお尻に沿わせる程度に交差したさらしをひく。余ったさらしはそのまま前に持ってきて入れ込む。最初から寝た状態で行ってもOK。

(腰が反りすぎタイプの対処法)

対処法①:腰のストレッチ
腰が反りすぎている人は、腰の筋肉が縮んでしまっているので、それをやさしくストレッチするのが◎。身体を前屈させて腰の反りをストレッチするのが効果的だけど、妊婦さんはお腹が大きく前かがみが難しいので、お腹に負担をかけず寝ながらできるケアできる方法をご紹介します。
壁に近い位置(股関節と膝関節が直角になるくらいの位置)で壁に足を向けて仰向けになり、足を持ち上げて壁にくっつける。足裏全体というより、足の外側を壁にくっつけて、壁に向かって軽くあぐらをかくような体勢にするとラクです。ソファやベッドサイドに足をのせることでも同じ効果があります。※仰向けが苦しくなる方や気分が悪くなる方は控えましょう。

対処法②:腰のあたため
腰の反っている部分をカイロやあれば米ぬかパックなどを腰の下に入れてあたためる。対処法①の腰のストレッチの体勢で温めると効きめ倍増!同時に仙骨をあたためても良いです。

 


1/4折さらし
骨盤のゆるみチェックや骨盤ケアに使用できるマミーサロンおすすめのさらし。通常のさらしの1/4幅に加工されているのですぐに使える優れもの。(1000円+税 マミーサロン)

トコちゃんベルトⅡ
トコちゃんベルトⅡは、骨盤を前から後ろに向かってサポートするベルト。仙骨や尾骨の痛みがある方にはおすすめ。
※人によっては効果に差があるため、ベルトを選ぶ際は、助産師のいる施設で指導を受けてください。

「寝ているときにお尻が痛い」と感じても、それが骨盤の仙骨、尾骨の痛みだとすぐにわかることは少ないですよね。骨盤の構造を理解して、どこが、なぜ痛いのか原因がわかることで、少しでも妊娠中のストレスを軽減できるはずです。それでなくても動きや生活の制限が増える妊娠中。セルフケアでよくなる痛みやトラブルは積極的に改善しましょう。

次回のVol.5では、妊婦が気をつけたいお腹の張りについて解説します。

是枝貴子
これえだたかこ/産前産後のママとベビーのためのヘルスケアサロン「マミーサロン」主宰。助産師、鍼灸師、フットケアトレーナーなど数多くの資格を持つ。産科勤務時代、ママのカラダを助けたいと一念発起し骨盤ケアを学ぶ。25000人以上の妊婦、産後ママをケア。現在月200名以上の施術に従事。
5歳の男の子、1歳の女の子のママ。仕事と子育てに追われる日々を綴るブログやインスタも人気。
マミーサロン http://www.mommy-salon.com
ブログ https://ameblo.jp/diary-mommysalon
Instagram https://www.instagram.com/mommy_salon_kore/?hl=ja

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