かまいたち・濱家隆一さんロングインタビュー「相方、同期、奥さん。スーパーラッキーが重なってここまで来れた」
「キングオブコント2017」で優勝したことを機に、東京進出。今やテレビで見ない日はないほど、売れっ子のかまいたちのツッコミ・濱家隆一さん。kodomoe2020年12月号では、野球に明け暮れた青春時代、くすぶっていた若手時代、そして一児のパパとして奮闘する今の暮らしについてなどをお伺いしました。kodomoe webでは、その中から濱家さんの子ども時代を中心に、インタビューの一部をご紹介します!
はまいえりゅういち/1983年大阪府生まれ。NSC大阪校26期生。2004年に、相方の山内健司さんとお笑いコンビ「かまいたち」(結成時のコンビ名は「鎌鼬」)を結成。「キングオブコント2017」優勝。「M-1グランプリ」3年連続決勝進出。「かまいたちの机上の空論城」(関西テレビ)、「かまいガチ」(朝日テレビ)などレギュラー番組多数。YouTubeチャンネル「かまいたちチャンネル」を運営中。
貧しかった子ども時代。
今は大金持ちになりたい!
――編集部から過酷なミッションが出ていまして、幼少期の貧乏の話を掘ってほしい、と。
ああ、ぜんぜん大丈夫です。
――え! 子どものときの話は掘られたくなくてセメントで固めているとYouTubeで言ってたから、どうしようと思ってたんです。
いや、大丈夫です。まあ、しゃべられへんことはいろいろありますけど。前の父親が借金いっぱいしてとか、そのへんは……(笑)。
――そこにはシャレにならない何かがあるけど、そんなことも関係して貧乏だった、と。
そうなんですよ。僕の世代ぐらいではまあまあな貧乏だったんじゃないかなと思います。ごはんはぜんぜん食べられてたんですけど、後々聞くとみんなと同じような感じではなかったなって。すいとんを食べてたり。
――途中から貧乏になったとかではなく。
物心ついた頃から貧乏だったんで、自分が貧乏っていうのは感じてなかったですね、こういうもんやと思って育ってたので。小学校5年のとき母親が再婚したんで、そのぐらいから普通の家庭やったと思います。たぶん生活保護とかもらえたんやろうけど、もらわずに母親が働いてたんで、昼も夜もあまり家にはいなかったですし、ボロボロの文化住宅みたいなとこに住んでました。
――友達と比較して気づくわけですよね。
そうですね。ウチの相方がよく「こいつ習いごと1回もしたことないんですよ」って言うけど、そんな珍しいこととも思ってなくて。比較したときにわかったのは、小学校のときに仲いい友達が少年野球やってたんですよ。「みんなやってるから僕も行きたい」って言って、「じゃあ見学だけ行っといで」って言われて、見学に行って申込用紙をもらって帰って。
で、なんとなくうやむやになって、また「行きたいねんけど」「ほんまに行きたいなら見学行っといで」って、僕、見学に3回行ったんですよ! そのときに、もしかしたらっていうのはあったんですけど(笑)。
――最終的にはやらせてくれたんですか?
いや、習わせてもらえなかった。
――野球は道具が高いですからね。ボクも友達との比較で「あれ、ウチっておかしいのかも?」って気づいたタイプでしたけど。
そんなに裕福ではなかったんですか?
――そんなつもりはなかったんですけど、友達が家に来て、「おまえんちのミロは薄い」って言われて。「え、ミロってお湯で溶くんじゃないの? 牛乳だったの!?」みたいな。
ハハハハ! それ、めっちゃわかります。僕はバンホーテンのココアを初めて牛乳で飲んだとき、めっちゃ感動しましたもん。
――これがホントの味だったんだっていう。
そうそうそう! 水でやるんちゃうんやって思いました。一緒ですね(笑)。
――あと、ボクは子ども部屋が廊下だったんですよ。アパートの廊下に姉とふたりぶん無理やり机を入れて、普通に生活してました。
ああ、わかる。ウチも子ども部屋はなかったな。文化住宅もほんまにボロボロで、作りもおかしくて。アホが作った家なんやろなと思うんですけど、ドアチェーンがめっちゃ長いから外から余裕で外せたり(笑)。
――防犯の意味がない(笑)。
誰も入らへんやろっていう(笑)。
――友達を家に呼ぶのはちょっとしんどいとか、そこまではいってなかったですか?
ウチは基本的に母親が家にいないから、子どもだけになるから家に友達を呼んだらダメっていうのはありましたね。
今の父親と再婚してからはマンションに住むようになって、中学校1年か2年やったんですけど、友達がやる誕生日会がめっちゃうらやましくて。お呼ばれして行ったりもするんですけど、マンションに引っ越してどうしてもそれをやりたくて。でも小学校の頃に行った誕生日会の記憶しかないから、中2とかなのにポッキーとかしょうもないもん出して。友達に「え、小学生の誕生日パーティーみたいやな」って言われたのもめっちゃショックで。
――そういうトラウマは消えないですよね。
そう、消えないんですよね。
――ボクも小学校のときに初めて友達の誕生日パーティーに呼ばれたとき、お金がなかったので100円のプラモデルを持っていったとき、「え?」って感じの空気になって。
めっちゃ一緒! めっちゃ一緒です!
僕もなけなしの100円で駄菓子を買って行って。最後にそこの子がお返しってみんなにお菓子を渡すんですけど、3倍ぐらいデカいお菓子もらって。「え、濱家にお返し渡すの嫌やー」ってお母さんに言ってるのが聞こえたとき、めちゃくちゃ恥ずかしくて……。
――ダハハハハ! 同じですよ。ボクも高額なお返しをもらっちゃって、これは得したって喜んでいいのかどうか、みたいな。そのへんが関係してると思うんですよね、濱家さんがインタビューで「お金が欲しい」的なことをすごいストレートに言ってるのは。
ハハハハハハ! 僕はほんまに高い服を着て美味い飯を食ってデカい家に住むために芸人になったんで、とにかく大金持ちになりたいです。あと何年生きるかわからないですけど、今母親が65歳で父親が62歳かな? とにかく金を渡してお金のある人生を、ちょっとでも昔のマイナスを減らしたいなと思うんで、とにかく金稼ぎたいですね。
――子どもには苦労させたくないと思いますか?
もう絶対に苦労させたくない!
――そんなストレートな欲望がある芸人さんって、今は少ないですか? 意外といます?
僕はみんなそうやろうと思ってたんですけど、番組で言ったら東野(幸治)さんに「そんなまっすぐ言うヤツおるか」って言われました。でも大金持ちになりたいですね。ひとり暮らししたときもとにかくデカいテレビが欲しいとか、そういう憧れが。
――やり残しが多すぎるんでしょうね。
そうなんですよ。
――白い紙無限遊びの話も最高ですよね。
ハハハハハハ! ずっと1枚の紙で落書きして。スペースなくなったと思って裏返して、また埋まって裏返したら、さっきまで描いててもうスペースないと思っても、またスペースが見つかるんですよね。またそこにバーッと描いて、もう描くとこないやろって裏返すと、こっちよりもまだあるなって無限にスペース見つかるんですよ。隣の芝生は青いじゃないですけど、さっきまでのヤツよりぜんぜんスペースあるな、みたいな。
――そんな経験ってプラスになってますか?
どうなんですかね? マイナスになってるんちゃうかと思うのは、反動で金遣うときはめっちゃ遣うんですよ、競馬でも20~30万円とか。でも、そのくせユニクロに行って1200円のズボン買うのためらったりとか。
――これだけブランドものを買ってるのに!
そうなんですよ、ドカーンと金を遣うのは気持ちいいんですよ、金つこてるって気がして気持ちいいんですけど、ちっちゃいものに「これホントにいるか?」ってなるからマイナスなんちゃうかなと思うんですけど。
――過去への復讐みたいな部分もある、と。
金持ちへのアンチテーゼみたいなもんかもですね。
――学生時代、ちょっとヤンチャになっていくのは家庭環境も影響していたんですか?
昔の写真が金髪やったりピアス開けてたりするから言われるんですけど、別にヤンキーとかグレたとかではないんですよね。
――眉毛が細すぎるだろってぐらいで。
そうですそうです(笑)。だから、あんまり反抗期っていう反抗期もなくて。学校で先生と揉めてとか、つかみ合いのケンカになったり、そんなのはあったんですけど。
――十分荒れてますよ、それ!
そうか、たしかに(笑)。でも暴走族に入ったりとか、そういうのはなくて。チャリンコをパクッたりもないし、どっか万引きに行ったり、そんなんもないですし。ただ、ちょっと気性が荒いほうだったんで(笑)。
――それよりは野球に専念していた?
野球と、友達と遊んで楽しい学生生活っていう感じでしたね。関西なんでおもろいヤツがヒエラルキー上みたいな感じだったから、そういう意味では前に出て目立ったりして。だから僕がNSC(吉本総合芸能学院)に入るって言ったときも周りはそんなに驚かず、「まあ昔から言ってたもんな」って。
(kodomoe2020年12月号へつづく)
INFORMATION
『かまいたち YouTubeチャンネル「ねおミルクボーイ」』
YouTubeの定番コンテンツである「モーニングルーティーン」などの企画から、「キングオブコント 2020」の解説まで、さまざまな動画を隔日ペースでアップ中。チャンネル登録者数は64万人(10月現在)。ぜひ、みなさんもチャンネル登録を!
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インタビュー/吉田豪 撮影/永峰拓也 スタイリスト/嶋岡隆(office Shimarl) ヘアメイク/藤井陽子
kodomoe2020年12月号では、相方・山内健司さんや奥さん、そして、娘さんのことなど、さらにお話は続きます。
かまいたち・濱家隆一さんロングインタビューは、kodomoe2020年12月号でお楽しみください♪