2020年10月27日

作家・西加奈子さんロングインタビュー。お母さんがすべて、とは絶対思わないでほしい【後編】

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イラン生まれ、エジプト&大阪育ち。人間味溢れる力強い作風で幅広い年代から支持される作家の西加奈子さん。自由に育ててくれた両親や、お子さんへの思いを語ってくれました。
前編ではエジプトや大阪で過ごした子ども時代についてや、お子さんとの関わり方についてお聞きしました。後編では、さらに子育てのルールについて、ご自身の作品についてなどをお聞きします!

※kodomoe2019年10月号に掲載のロングインタビューを全文公開。記事の中の年齢などは取材当時2019年のものです

にしかなこ/1977年、イラン・テヘラン生まれ。2歳までテヘランで育ち、大阪に戻った後、小学1年生の夏にエジプト・カイロに渡り4年間を過ごす。2004年『あおい』(小学館)でデビュー。2015年第152回直木賞を受賞した『サラバ!』(小学館)には、幼い頃過ごしたカイロの街の風景が描かれている。2020年11月13日には著書『さくら』を原作とした映画が公開予定。近著は『おまじない』(筑摩書房)など。

お母さんがすべて、とは
絶対思わないでほしい

――子育てにおける、西さん流のルールは何かありますか。

ルールを決めちゃうと、破ったときに辛くなっちゃうから決めないようにしています。私は母のおかげで、結構早いうちから「親もひとりの人間」っていうことがわかったので、必要以上に尊敬することがなかったんですよね。親の言うことを「絶対」って思わずに済んだ。「学校、休み!」っていうのもそうですし。ダメな部分もあったし、夫婦ゲンカもよくしてました。
親が子どものことを「自分のもん」って思ったら絶対ダメじゃないですか。子どもが100%こっちだけを見ている状況は、あんまり長くない方がいいかなぁと。今はもちろん、子どもはすっごく母親を、私のことを好きでいてくれますし、私もめちゃくちゃ愛してるけど、「お母さんがすべてって、絶対思わんでええからな」とは思います。
いろんな意見を吸収してほしいから、うるさいぐらいに「これはお母さんだけの意見だよ。私の意見だよ」ということは言おうと思っていて。「We(みんな)」っていう主語でしゃべるんじゃなくて、「私は」こう思う、と。「他の家の人は知らんけど」とか(笑)。

ずっと親の影響から逃れられへんことって、なんか呪いみたいだと思うし。「母が悲しむから夢を諦めよう」みたいなんとか、もう絶対ありえへん。私はむちゃくちゃ愛しちゃうので、多分呪いをかけやすいタイプというか。だから特に気をつけていますね。
人間の幸せは自由であることやと思うし、自分が「自由じゃない」ことにすごくストレスを感じるので、子どももあらゆることから自由であってほしいと思います。

――西さんのご両親も、そういう考えでしたか?

すごく自由にさせてくれました。私、10代の終わり頃に、髪の毛染めてアフロにして、クラブ行って朝帰りして、爪も派手に塗って、みたいな時期があったんですよ。近所の人や親戚からは「加奈ちゃんどないなったん?」って言われていたらしいんですね。でも、母はまったく気にしてなくて。「すごい髪やな」とは思ったらしいんですけど。聞いてみたら、「加奈子の中身がまったく変わらんかったから、お母さんの中で加奈子は中学生ぐらいで止まってんねん」みたいな。父には爪のことだけ、「なんやその色?」って言われたけど、「お前どうなったんや!?」とかもなかったですし。本当に自由でした。信じてくれてたんやと思うんですよね。だから信じてさえいれば、まぁいいのかなって。信じて自由にさせるっていうのが一番、こっちも楽ですしね(笑)。

――お母さん、偉大ですね。

いや、でも、そこで母が偉大すぎたらしんどいじゃないですか。めっちゃ尊敬せなあかんから。でもちゃんと、イヤなとこも尊敬できへんとこもあるし(笑)、めっちゃ人間なんですよ。そこそこというか。本当ちょうどよかったです。

私、だから反抗期がなかったんです、一切。父親が海外赴任で長く家にいなかったというのもあるんですけど。母が最初から肚(はら)を見せてくれていた感じがありましたから。それはそれで、母の心許なさが不安やったりもしたんですけど、そのかわり「なんで偉そうに言われなあかんの」っていうのがなくて。
むっちゃ覚えてんのが、私が部屋で勉強してたときに、母がバタバタと走ってきて「あんた勉強なんかしてる場合ちゃう!」って言われて。「どうしたん?」って聞いたら、「ダウンタウンが『24時間テレビ』で泣いてるで!」って(笑)。親が先にそういうヤバさを出しておくっていうのも、ありですよね。
あとお風呂問題で言うと、父から「一緒にお風呂に入ろう」と言われたことがなくて。逆に私から「お風呂入ろう」って誘ったら断られた。「あれ、そうなんや? 親ってだいたい喜ぶと思ってたけど!?」って(笑)。
親の方から先に「ひとりにして」って感じを出すという。子どもだからって全力で愛すわけやないっていう態度だったから、私も調子に乗らんと済んだかもしれないですね。

親だからってすごくなんかない。もちろん、子どもがピンチのときは全力で守るっていう約束はしたいですけど、「親やから完璧」なんてことは絶対ないから。それは早々にわかってほしいんですよね。
なんやったら子どもの方が今んとこ完璧やで、って思いますし。優しさとかに関して言ったら。嘘とかもつけへんし。親だって間違ったことをめっちゃ言うっていうのは植えつけたいですよね。だからあんまり信頼してほしくないというか、「また言ってる」ぐらいの感じに思っといてほしい。

――「親は子どもを全力で愛さないといけないし、子どもにもそう思わせないと」って考えている人も多いかと思いますが。

本当に子どもを愛してたらそれを表明してもいいけど、なんか無理して「愛してるで」っていうフリはせんでもええかな、とは思うんです。そのために社会があるんだし。おじさんおばさんでもいいし、他の人が愛をくれてもいいし。もう、早いうちからニートのおっさんとかと会わせといた方がいいと思いますよ(笑)。昔よくおった楽しいニートのおっさんね。自由なんやって。

――西さんの作品にも、そういう人がときどき出てきますよね。

そうなんですよ。私、いわゆる社会っていうところから外れた人が好きで。偏ったらいけないですけど、たまには出会うべきやと思いますね、そういう人と。それを「イヤ」と思うか、「いいな」と思うかは、本人の自由やから。ただなんか、本当にクリーンなとこだけにおるのって、やっぱり危ない気がするんです。

作家・西加奈子ロングインタビュー「お母さんがすべて、とは絶対思わないでほしい」【後編】の画像1

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