2020年10月20日

作家・西加奈子さんロングインタビュー「通じ合うってめちゃくちゃうれしい」【前編】

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イラン生まれ、エジプト&大阪育ち。人間味溢れる力強い作風で幅広い年代から支持される作家の西加奈子さん。自由に育ててくれた両親や、お子さんへの思いを語ってくれました。
エジプトと日本で過ごした子ども時代のお話や、ご自身がお子さんに読んでいる絵本についてなど、笑いあり、そして日々子育てに奮闘するママたちの心がふっと軽くなるインタビューです。

※kodomoe2019年10月号に掲載のロングインタビューを全文公開。記事の中の年齢などは取材当時2019年のものです

にしかなこ/1977年、イラン・テヘラン生まれ。2歳までテヘランで育ち、大阪に戻った後、小学1年生の夏にエジプト・カイロに渡り4年間を過ごす。2004年『あおい』(小学館)でデビュー。2015年第152回直木賞を受賞した『サラバ!』(小学館)には、幼い頃過ごしたカイロの街の風景が描かれている。2020年11月13日には著書『さくら』を原作とした映画が公開予定。近著は『おまじない』(筑摩書房)など。

楽しかったエジプト暮らし

――西さんはお父さんの海外赴任の関係で、イランで生まれ、小学1年生から4年生までをエジプトのカイロで暮らしたそうですね。文化も文字も異なる国での生活は大変ではありませんでしたか。

そうですね。でも、カイロで通っていたのは日本人学校だったので。多分、家族の中で母が一番大変やったと思います。買い物ひとつとっても、日本にある野菜がないとか、イスラム教の国なので豚肉がないとか。私はただ長い旅行のようで、すごく楽しかった。町はむちゃくちゃ汚かったんですけど、『サラバ!』の取材で当時暮らしていた町を訪れたとき、「あ、こんな素敵なとこに住んでたんや」って思いました。

帰国後に住んだ、公園も道も全部ピカピカで同じ家が並んでいる日本のニュータウンよりは、カイロのごちゃごちゃしてる町の方が好きでした。何かワクワクするというか。両親が忙しくて、結構子どもの自由にさせてもらっていたので、毎日が冒険のようで。
「行ったらあかんよ」って言われていたところにも行ったし、「生水飲んじゃダメよ」って言われても飲んでた(笑)。それがすごく楽しかったですね。多分、子どもにとってはある程度猥雑なところの方がいいんじゃないかなって。

カイロの日本人学校では、1クラスが5、6人とかで、村みたいな感じですよね。日本人が歩いていたら大体知ってる人だし。エジプシャンも人懐っこいし子ども好きやから、村の中でみんなに愛されて育ったような感覚でした。
ただ、小学5年生のはじめに日本に帰ってきたら、1クラスに40人、それが何クラスもあって。先生との距離も遠くなるし、結構それがしんどいというか、カルチャーショックで。給食も同じ食器で同じもの食べて、好き嫌いは言ったらあかん、とか。マラソンなんかもわざと頑張らないで、手をつないで走る子たちもいて、それがショックでした。多分、自分がまわりの子より子どもっぽかったんだと思うんですけど、1学期はちょっとしんどかったですね。

――その後は少しずつ慣れていったんですか?

そうですね。私なりに空気を読むようになってまわりに合わせていったので。それがよかったかどうかはわからないですけど。作家になったのも、後づけかもしれないけど、まわりを観察して、「今これをやったらあかんのかな」とか、そういうことをよく考えていたからというのもあるのかなと。
クラスの真ん中でスターな子って、なかなか小説には手を出さないと思うんですよね。小学5年生は、過渡期の年齢やったと思います、いろんなことが。

――お母さんには、学校のことを相談しましたか?

ああ、しました。もう、母にはすごく感謝していて。あるとき、体が給食を受け付けなくなっちゃったんですね。それで勇気を出して「実は給食が食べられないんやけど」って言ったら、母が、「あ、そうなんや。ほな、お母さん、センセに手紙書いたるわ」って(笑)。で、本当にすぐ伝えてくれて。1学期の終わり頃は給食の時間だけ保健室に行ったり、無理に食べなくてもいいようにしてもらえました。

母がそこで、「どうしたん!? 大丈夫!?」みたいに言う人でも、「ダメよ! 食べなさい!」って言う人でもしんどかったやろうし。母のそのフラットな反応が、すごくうれしかった。ふだんから、こちらがちょっと「しんどい」って言うだけで、「学校、休み! 休み!」と言うような人やったし。それはすごく楽でした。

――食べられなくなってしまったのは、「給食ってなんか変だ」という気持ちからでしょうか。

そのときは言語化できなかったんですけど、アルミやプラスチックの食器によそわれて、「はい、これをこの時間内に食べなさい」みたいなのが苦しくて。多分、子どもなりに新しい環境になじもうとしている中で、ストレスが「食べる」ってことに対して表れたのかもしれないですね。
でも2学期からはすごく食べて、おかわりもするようになって。通知表に「西さんのおかげで女子がおかわりするようになりました」って書かれたり。夏休み明けからガラッと変わりました。慣れたんやと思います。

――エジプトでは給食は?

お弁当だったので、嫌いなものは入れないし、カップラーメンを持ってくる子とかもいたし、まったく自由やったんです。兄はカイロから日本に帰ってきたとき中学生だったので、突然給食で、坊主頭で詰め襟の制服で。兄の方が辛かったと思います。

作家・西加奈子ロングインタビュー「通じ合うってめちゃくちゃうれしい」【前編】の画像1

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