脳科学者・瀧靖之先生「やる気のスイッチを押せる子を育てるには、やっぱり親の力が不可欠!」
親が無理しない範囲で、楽しみの時間を作ってあげること
――瀧先生は、お子さんにピアノを習わせているということですが、お子さんに楽しいまま気持ちを持続してもらうためにやっていることは、どんなことですか。
幼児のモチベーションを保つには、「楽しい」と思うことが究極に大事だと思います。もちろん、上達するにはある程度の練習や嫌な時間も必要なのですが、幼児の場合は、楽しいという気持ちをいかに削がないようにするかがひとつ。それから、できるだけ親が関わって、親子で楽しくやるとか、そういうことが大事だと思うのです。私は自分もピアノを弾くことが楽しいので、ひたすら弾いている姿を見せています。親が楽しくがんばっている姿を見せ続けるのは、大事だなと思います。
あとは、褒めることです。自分が子どもの頃は、こんなにうまく弾けなかったなと思うと、6歳でよくそこまで弾けるなと思って、心から褒められます。努力をしたときに、いかに褒めてあげられるか。そこがモチベーションを保つ秘訣だと思います。努力しないときは褒めないですよ。ただの褒め殺しではダメなんで(笑)。
――やっぱり、親が一緒にやったり、褒めてくれたことを、子どもはよく覚えているということなんですね。
そうなんですが……とはいえ、やっぱり我々子育て世代って、仕事もして、子育てもして、すごく忙しいじゃないですか。でもいかに、そこに1分でも5分でも、子どもと楽しめる時間を作れるかなのかなと思います。これができたらこんなに楽しいんだよっていうことを、わかるように見せてあげるというか。
ただし親は大変ですし、共働きの夫婦なんて、そんなの無理だろうって思う気持ちも、よくわかるんです。だから、親子の時間って大切なんだなっていうことだけを、頭の片隅に入れておくだけで、まずはいいと思います。ちょっと時間ができたときに、少しでも一緒に本を読めるか、少しでも一緒に楽器が演奏できるか、少しでも見せてあげられるか。それとも、まったくやらないか。その差は大きいと思っています。
決して無理する必要はないんですけど、今日お話ししたことの少しだけでも、ほんの一部をやるだけでも、効果は大きいと思っています。
取材・文/日下淳子(編集ライター/元保育士) 撮影/黒澤義教