2017年7月1日

モデル・俳優 栗原類「お母さんたちも自分の時間を大切にしてほしい」

自分の時間も大切にしていた母

栗原さんの母・泉さんは国内外で音楽関係の翻訳の仕事をしながら、ひとりで子育てをし、息子の日常や仕事をこれまで常にサポートしてきた。

――お母さんから「いつも相手への感謝の気持ちを忘れないように、ありがとうと言葉で伝えるように」と言われてきたそうですが。

 僕はそもそも人の気持ちを読み解く能力が高くないんです。しかも顔の表情も無表情に近い感じで固定されているんですけど、だからと言って、決して今のこの瞬間をうれしいと思っていないわけではないんです。母親は、「顔で表しにくいならちゃんとそれを言葉で伝えなさい」「オーディションで自分を選んでくれた、自分がうれしいと思うようなきっかけを作ってくれた人たちには、ちゃんと言葉で感謝していることを伝えなさい」とよく言っていました。モデルの仕事現場では、「今何時?」「疲れた」「まだ?」、その3つは絶対言うなというのも、小さい頃から常々言われていました。
 僕を育てることで、母親は自分の人生をほとんど僕に使ってくれていたと思うんです。でもだからと言って、自分の時間を大切にしていなかったわけではないんです。子育てにはもちろん時間をいっぱい使ってくれたんですけど、かと言って生活のすべてを子育てや家事労働だけには決してしなくて、自分で息抜きの時間を作るようにはしていました。祖母の家に僕を預けてライブに行ったり、友達とごはんを食べに行ったり。そういう自分への時間を作ることによって、子育てから一時的に解放された感じを得て、余裕ができるんだと思いますね。そういう時間があったので母親は多分、今までずっと僕を見てこられたんだと思います。

――kodomoeの読者でも日々の子育てに疲れたり悩んでいる方もいると思いますが、もし栗原さんからアドバイスがあればお聞かせいただけますか。

 子育て中のお母さんには本当に、自分の時間を大切にしてほしいと思うんです。例えば「○○くんはこういうことができません」という言葉は、その子自身ではなく親にぶつけられるものであり、子どもより親の方がすごい抱え込んでしまうと思います。しかも発達障害のお子さんを持っている親御さんだったら、当然一般的な家庭の倍以上のものを抱えなきゃいけないと思うんです。でもやっぱり、うちの母親は自分の時間をすごく大切にしていて、それにより子育てへの余裕もできたんだと思います。もちろんそれだけじゃなくていろんな国の教育方法の本とかも調べたり学んだりしていたのですけど。自分だけの時間を大切にしようとすると、「なんで子どもを放棄するんだ」などと言われてしまうこともあると思います、特に日本だとなおさら。でも、そういうことを言われたとしても、そこでは本当にぶれないでほしい。
 だって子どもを育てるのは親の方で、親が子どもを導く存在となるのに、その親が倒れたり全力を出せなかった場合、その子の未来もとても大きく変わると思う。導く側の人が最大限の力を発揮できないと、すごいもったいないことになってしまうと思う。なので、どんなに忙しくなっても息抜きはしてほしい。自分の時間は大切にしてほしい。それを他人にどう言われようが気にしないでほしい。それこそ自分の時間を持つことによって、多分、自分自身のことがもっと好きになれるんじゃないかと思います。少なくとも僕はこの本を書いて、自分自身のことがすごい好きにはなれたので。

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