実を食べて種を蒔いたら、小さなトゲトゲの葉が出てきた。さて、これは何のフルーツ?【良原リエの「台所ではじめよう カンタン!リボベジ栽培」・3】
親子で植物を育ててみたい! 収穫できるものなら、なおいいな……。そんな風に思っても、実際にガーデニングに挑戦するのはちょっと面倒。そんなかたにおすすめなのが「リボベジ」です。都会のまんなかの小さな庭で、たくさんの植物を育て、『食べられる庭図鑑』という著書も出している、音楽家・良原リエさんの連載です。
第3回 大切に守られているマンゴー編
果物を食べていると、種が出てくることがあります。今の季節なら、リンゴや柑橘類などに見つけることができますね。私は種を見つけると嬉しくなってしまいます。土に蒔く楽しみがあるからです。種なしのカキやブドウでは残念に感じてしまうほど。
種を見つけたら、冬の間に土に蒔いてみてください。指で穴を開け、種を入れ、土をかぶせます。屋外の雨の当たる場所に置いておきましょう。厳密には種それぞれに適した蒔き方がありますが、たいていはこれで大丈夫です。暖かくなる頃に、かわいい双葉が顔を見せてくれると思います。
気にせず食べてしまっている小さな種もあります。例えばイチゴやキウイなどの種です。イチゴの表面やキウイの断面に、小さな種が見えますよね。これらも蒔いておけば、芽が出ることがあります。イチゴの場合は包丁などで薄く皮を剥くようにして種を取り、キウイの場合はスプーンなどですくって土の上に置き、軽く土をかぶせます。我が家では、秋に芽が出たイチゴとキウイが越冬中。なんとか春まで元気に過ごしてほしいです。
小さな種と言えば、ドラゴンフルーツもおすすめです。ドラゴンフルーツの実を割ってみると、たくさんの黒い粒々が見えるはず。これらをスプーンですくって蒔いてみてください。しばらくすると、なんともユニークなトゲトゲの葉が出てきますよ。この風貌からもわかるように、ドラゴンフルーツはサボテンの仲間なのです。
果物の種まきで一番のおすすめはと聞かれたら、断然、マンゴーです。マンゴーの種って見たことがありますか?
マンゴーを食べる時、切り分けるのが難しいですよね。実の中央に大きな種があり、しかも果肉がしっかりとくっついています。果肉をこそげ取るにも手こずるほど。
このイカの甲羅にも似た大きな物体は、実際には種ではなく、種を守る殻です。本当の種はこの殻の中に入っています。中にある種を傷つけないように殻の端っこをハサミで切り、ぐいっと開いてみてください。中にソラマメを大きくしたような、ふっくらとした種が鎮座しているはずです。これを土に埋めれば、適温になると芽が出てきます。
果肉がくっついて面倒だなと思っていた殻は、種が傷つけられないように、食べられないように、そして生きて出られるようにと大切に守っていたのです。私は、息子がお腹の中にいた時のことを思い出しました。大きな殻は大きな愛そのものですね。
私たちが食べている食べ物の多くは、命を繋ぐための種を持っています。果物を収穫するまで育てるには、原産地と同じ環境や大きな木に育てる必要もあったりとハードルが高いのですが、芽が出る様子や成長していく過程を観察するのはとても楽しいものです。
毎日、眺めていると不思議と愛着がわきますし、食材を大切にする気持ちも高まるのではないかと思います。
お手軽な自然体験や実験遊びとして、自由研究としてもおすすめです。子どもたちと一緒にぜひ確かめてみてくださいね。
良原リエ
よしはらりえ/音楽家。アコーディオン、トイピアノ、トイ楽器の奏者。E テレ「いないいないばあっ!」の音楽をはじめ、映画、TV、アニメ、他アーティストの楽曲の演奏、 制作に関わる。トイ楽器を用いた子ども向けコンサート、ワークショップなども行っている。著書に『食べられる庭図鑑』『まいにちの子そだてべんとう』『たのしい手づくり子そだて』(アノニマ・スタジオ)『トイ楽器の本』(DU BOOKS)など。