2026年8月6日

芸人・男性ブランコ平井まさあきさんインタビュー「『そのままやってたら順番が回ってくるやろ』芸人仲間の何気ない一言に救われてきたから、頑張れる」

独創的なコントや漫才で人気を集める、お笑いコンビ「男性ブランコ」の平井まさあきさんが、初の短編小説集『生きとし生ける音』を上梓しました。生き物に夢中だった子ども時代や思い出の絵本、お笑いを志したきっかけ、物語を紡ぐ楽しさについて伺いました。

小さな頃から生き物が好き
東京で虫を見つけるとわくわく!

――平井さんはどんなお子さんでしたか?

お調子者でしたね。みんなの前でよくはしゃいでいました。次男坊だったので兄ちゃんの後ろにくっついて、のんきに「いぇーい」みたいな。兄ちゃんは割と真面目なタイプだったこともあって、余計に自分の呑気さが目立っていたと思います。

海の近くに住んでいたのもあって、じいちゃんがよくサワガニ採りに連れて行ってくれたんですよ。スコップで掘ると、サワガニがうじゃうじゃいて。それを家で育てていたので、水族館などが好きになったのも、そこからかもしれません。カニや昆虫って、近くで見ると面白いんですよ。見た目も動きも。芸人になりたての頃は、お金もないし、ネタも作らなあかんし、それどころじゃなくなっちゃいましたけど、今もずっと変わらず生き物は好きですね

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地元は兵庫県豊岡市というところで、カブトムシ捕まえたり、釣りに行ったり、自然が身近にありました。そんな環境で育ったから、自然と生き物が好きになったんでしょうね。でも東京って、生き物自体が少なくないですか? ほんとうに全然いない。子どもたちはどうしてるんやろ。カナブンは、ギリいるかな。なのでたまに虫に会うとちょっとテンションがあがります。

――子どもの頃、好きだった絵本を教えてください。

『ぼくを探しに』(シルヴァスタイン/作 倉橋由美子/訳 講談社)が大好きでした。今読み返してみると、漢字があるから子どもの頃は文字はよく読まずに絵を眺めていたのかもしれないですね。おかんが「これ面白いよ」って読んでくれた記憶もあります。読み聞かせをしてもらいながら、めっちゃ笑ってました。今読んでも面白いなぁ。

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――お調子ものだった平井少年がお笑い芸人を目指したのは、いつ頃からですか?

お笑いを意識したのは小学校5年生の頃。ちょうど『めちゃイケ』全盛期で。「自分もいつかめちゃイケメンバーになるんだ!」って思ってました(笑)。関西出身だから他にもゴリゴリのお笑い番組を見て育ってきたんですが、高校生の時に見たラーメンズさんのコントに衝撃を受けまして。笑いだけではない様々な感情を描いていて「今まで見てたものと違う!」と興奮しました。それまでは「お笑い芸人になったらテレビとかに出られるのかなぁ」と、漠然に考えているだけだったんですが、ラーメンズさんを目にした瞬間に「これをやってみたい!」と強く思ったのを覚えています。

先輩の一言に救われたことも
一筋の光があるから頑張れる

――コントや漫才のネタを手がけてきた平井さんが、小説という表現に挑戦されたのは、どのようなきっかけからですか?

ラーメンズさんのコントしかり、自分が心をつかまれるものは物語性を感じるものが多いので、物語を作ってみたいという、「物語欲」みたいなものはずっとあったんです。普段作っているコントが5〜10分ほどのものが多いので、もっと長いコントや、演劇を作ってみようと考えていたこともあります。ただ、挑戦するならどんな物語がいいのだろうと悩んでいて。そんなとき、ちょうど担当編集さんからお声がけをいただき、書いてみることにしました。

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――実際に小説を書いてみていかがでしたか?

コントって状況説明がいらないんですよ。「カランコロン」って音がしたらそこはもう喫茶店なんだとわかってもらえる。でも、小説は状況説明をしないといけない。かといって説明しすぎると説明くさくなってしまうじゃないですか。何を書いて、何を省くのか、その取捨選択もセンスの一つなんだと身に染みました。僕はまだその技術がないのですごく難しかったですが、舞台ではできないことがなんでもできるのは、嬉しすぎました。舞台や映像でやったら「これ、予算いくらかかるの?」ということも、小説なら無限にできる。ブラックホールだって、簡単に作れちゃいますから。

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――本作『生きとし生ける音』には、登場人物の人生を少しだけ前にすすめてくれるような存在が多く登場しますね。平井さんにも一歩踏み出す勇気を与えてくれるような存在はいますか?

食べるものや住居と違って、お笑いや、映画、演劇、音楽などのように生きるために必要でないとされているものに触れると豊かな気持ちになれますよね。心の響くものに触れた後に、「今日はちょっと一駅歩いて帰ろうかな」と思える瞬間が本当に最高。心がギソギソするというか、トゲトゲしてきたら、映画などを観るようにしています。他のものから、豊かさを享受してもらうのが大切。最近は『急に具合が悪くなる』という映画を観て、一駅歩いて帰りました。

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あとは、どこかで芸人の同期や仲間たちがいるから「大丈夫やろ」と思えているのもあるかもしれないですね。「本当にしんどい」って愚痴をこぼしたときに、後日先輩がポストしてくれた何気ない言葉に救われたこともあります。「大丈夫ですかね?」って聞いたら、「そのままやってたら順番が回ってくるやろ」と言ってもらえたことも。そうした一筋の光を感じる体験があったから、辞めずに進んで来れたのかもしれません。

平井まさあき
ひらいまさあき/1987年生まれ、兵庫県出身、大学の演劇サークルで出会った浦井のりひろと男性ブランコを結成。2021年『キングオブコント』、2022年『M-1グランプリ』それぞれ決勝進出。2023年には「第八回上方漫才協会大賞」で特別賞受賞。

INFORMATION

『生きるとし生ける音』
平井まさあき/著 KADOKAWA 1980円
2026年8月5日発売予定

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「そよそよ」「こぽこぽ」など、音を表すオノマトペから生まれた13編を収録。男性ブランコ・平井まさあきが、優しさと驚きに満ちた世界を描く、初の短編小説集。

インタビュー/高田真莉絵 撮影/馬場わかな

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