2018年2月15日

絵本作家・おくはらゆめ 「うそでもいいから言われたかった! やすんでいいよって(笑)」

まじめになりすぎてしまった、はじめての子育て

―― 太郎くんはいくつになったのでしたっけ?

 1歳8か月です。(註・この取材は2017年に行われたものです)

―― この絵本のラフは、太郎くんが生まれてしばらくして、kodomoe編集部に見せてくださったものでしたね。

 妊娠する前からあったテキストで、そのときから、ぜんぜん言葉も変わってないんです。子どもができる前に描いた『しっぽがぴん』を描き終わった頃に作ったかも。小さい頃、とんぼを指の先っぽに止まらせるのが好きで、そのことを描きたいと思って作ったお話だったんです。でも妊娠する前は、『しっぽがぴん』とかに比べたら、このお話はちょっと弱いなって思ってた。たとえば、むかし描いた『やきいもするぞ』なら、絵本としてのパワーが強い感じがしたんですけど、『やすんでいいよ』はそういう作品と比べたらパワーが弱いなあって。でも、気に入っていたから、そのうち直そうと思ってたんですけど、そのときはどこを直していいかわからなかったんです。

――いつ、やっぱり絵本にできるなと思いましたか?

 太郎が生まれてからかな。子育てが、想像よりだいぶだいぶ大変でした。もともと子どもは好きだったし、むかし学童保育でアルバイトしていたから、出産前は「育児は楽勝かな」なんて思ってたんです。一番大変だったのは、生まれて半年から1歳になるまでくらい。作品はほとんど描けていなかったのですけど、夜、太郎が10回くらい起きるので、ぜんぜん休めなくて。眠れないのが、私はかなりくるみたいで。その子によるんだろうけど、太郎はショートスリーパーで、しかも昼間もすごくよく動いて体力があったから、毎日が必死でした。

――大変だったんですね。学童の小学生たちよりも(笑)。

 学童は、若い頃(夫の)石井くんが私より前に働いていたことがあって「よかったよ~」って言っていたから、絵本作家になりたての頃、私も働いてみたいなと思ってアルバイトしたんです。1、2、3年生の担当で。小学生は言うことを聞かないと大変だけど、今考えると言葉も通じるからぜんぜん楽。赤ちゃんは境界線が何もないから……道路にも行くし、あぶないところもがんがん進んでいくし。

――同じく絵本作家である、旦那さまの石井聖岳さんと助け合っての育児でしたね。

 石井くんも絵本作家で、基本家にいるから昼間は替わってもらって寝させてもらったりもするけど、泣いたら私がおっぱいあげなくちゃいけないし、なんだか休めなくって……。何より自分の性格が「ゼロか100」だから。きっちりするようになった。「あ、もうお風呂の時間」とか。別のことなら、ちょっと休むと、もうぜんぜんさぼっちゃうんですけど、子育てはそういうわけにはいかないから、まじめになっちゃって……子どもがいなかったら、普段はすごく適当なんだけど。

――たしかに普段のおくはらさんは、おおらかなイメージです。奥に隠れている、きまじめな部分が出てきたんですね。

 そう、まじめになりすぎちゃった。こんなに自分のペースをくずされると思ってなくて。なめてました、ほんとに……子育てを(笑)。「言うても……」って思ってたけど、もうほんとに、ぜんぜん息つく暇を作れなくて。そのとき、たまたま『やすんでいいよ』のラフを読んだら、「ああ、このままでいい。子どもにもだけど、お母さんに読んでほしい !」と思いました。自分で自分の絵本にグッときた。「やすんでいいよ」って、うそでもいいから言われたい!(笑)って。(絵本の中の)くまみたいなのが、来てくれればいいなあって。

――そんな中で絵本を制作をするのは大変なことですね。

 でも、この間の4月に保育園に行くようになって、今はとてもとても助かってます。最初は3歳くらいまで家でみるのもいいなって思っていたけど……想像よりもよく動くし、太っていて重たいからおんぶしながら描いたりもできないし、太郎が家にいるとぜんぜん仕事ができなかったから。まだ生まれる前ほどはできていないけど……『やすんでいいよ』とその次に出した『貝の火』は、保育園に入ってからラストスパートをかけて頑張りました!

シェア
ツイート
ブックマーク
トピックス

ページトップへ