2017年7月28日

絵本作家・植垣歩子「お年寄りを描きたくて、大好きだった絵本の道に」

子育てには絵本のアイディアがいっぱい

主人公のゆうくんは息子さんにそっくり!

―― 新刊『すっぽんぽんのはだかんぼう』。「子どもが大好き!」「お風呂前に読んでいます」などの声が寄せられていますが、どんな風に生まれた絵本なのでしょう。

 若いとき、読み聞かせで保育園を訪れたことがあって、ちょうどプールの教室が終わった子どもたちがいたんですね。はだかになってやたらにハイになっていて。「ああ、はだかになると子どもってハイになるんだねえ」と思って、いつかそんな絵本を描きたいなあって。お風呂の絵本っていうより「脱ぐ!」っていう絵本を描きたいって思ったんですねえ。ただ、はだかんぼうの子どもをよく見る機会がありませんでした。それで、自分の子どもができたら、よーく見てやろうと。生まれたらじっくり見られたので、では描こうと思いました(笑)。
 最初は、子どもが服を1枚ずつ脱いでいくっていうストーリーを考えたんですけど、すっぽんぽんのハイな感じが出なかったんです。それで、息子が好きな果物をたくさん登場させるといいかなって思ったんですね。

―― 息子さんと一緒に読みましたか?

 読みましたねえ。息子は「すっぽんぽんの はだかんぼう!」とか「みかんちゃんと くりくんが いっしょに きたよ」というところとか、覚えましたね。彼は栗というものをこの絵本ではじめて知ったんです。この間、実際に栗を見る機会があって「これなーんだ?」って。一応、絵本の栗とこの栗が同じものだってわかってましたねえ。そして持ち帰って、絵と比べてましたね……私の画力を確かめるように(笑)。よく見た後、今度は食べさせてみました。これで息子は、登場する果物をぜんぶ食べたことがある、ということなりました。そうやって、栗に触れたことがないほかの子どもたちも、おさんぽしたときに「ほら、これが栗だよー」って教えてあげたら、またお話から世界がひろがるんじゃないかな、そうなるといいなあって思いますねえ。

 当初、栗くんは一回しか脱がなかったんです。栗の殻がさらにむけるっていうことをあまり考えていなかったんで。そうしたら編集部から、栗は二回むけますねってご指摘いただいて、そうか……栗はもう一回むけるよねえって思いましたねえ(笑)。それで最後のシーンで、さらに殻を脱いだところを描き加えました。息子にも、イガイガの殻から取り出したあと、さらに殻をむいた状態も見せましたよ。読んでくれた子たちも、こうやって食べるんだよって、お母さんに見せてもらってるかもしれないなあと想像しましたね。

―― 子育ての中から、今後どんな絵本が生まれそうでしょうか?

 息子と、車とか重機……ブルドーザーなんかを見るようになって。工事現場とか、今まで立ち止まったことがなかったんですが、いろいろとふたりで見てますねえ。そうしたら、だんだんかっこよく思えてきて、たくさん並んでると「スーパースターが揃ってるねえ」って、ちょっと嬉しくなったりして。工事現場のおじさんも優しくてね。いろいろ説明してくれるんです。「あれはアスファルトフィニッシャーだよ」とか(笑)。アスファルトを平らにしきつめる機械ですね。「今、アスファルトは熱いから、靴を履いていないワンちゃんは歩くと足を火傷しちゃうんだよ」とか教えてくれて。ゴミ収集車も好きですしね。手を振ると振り返してくれますよー。私も一所懸命に振っちゃったりして。子どもと一緒にいると、重機を描きたくなりますねえ。
 ただ、喜ぶものがすぐ変わるんですよね。一番最初は時計だったんですね。それで時計の本を描こうと思っていたら、ほかのものに興味が移って。すぐ置いてかれるので、タイミングは遅れてしまうんですけど、少しずつ形になっていけばと。やりたいことはたくさんあるんですけど、まだ頭の中が散らかってる感じですね。だから、そのとき、どういうものに興味があったかを思い出せるように、育児日記を描いてますね。絵もついた育児日記なんですけど、夫も一緒に描いてるんですよ。

―― 育児絵日記! 見せていただけますか?

 夫のほうが私よりうまいんです。表情とか。ただ、恥ずかしいことも描いてあるんですよねえ。私が怒っているところを「ブラック歩子が出た」とか描いています。やめてほしいです(笑)。
 面白い行動や言葉を記録したり、「お風呂のお湯が今日すごく減ってるね」って話になって「そうだ、息子が大きくなってるからだ!」ってふと気付いたことを描きとめたり。子育てしていると、いろんなことをすぐ忘れてしまいますよね。日記があると、のちのちの参考になるんじゃないかなと思っています。

旦那さまの描いたイチゴ狩りの日の絵日記。

こちらは植垣さんのお風呂での発見を描いた絵日記。

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