2019年7月29日

ひとり遊びばかり。引っ込み思案なわが子が心配です【保育士さんの「育児のウラワザ」4】

集団に入れるようになるには、長期的なフォローが必要

――園の活動で集団に「参加」することに抵抗があったり、お友達と一緒のことをやろうとしない子は多いものですか?

田中:毎年ちらほらと見かけます。自分が今までできる範囲を超えて、はじめてやることに対して、固まって動かなくなってしまう子ですね。最初から恐怖心を持ってしまったり、はじめてのことに防衛反応が働きやすいのだと思います。

――そういう子に対して、保育園ではどう接しているんですか?

田中:まずは声をかけています。たとえばはじめての遊具なら、「支えてあげるから、ちょっとだけやってみる?」と促します。それで、恐る恐るでもやってみようとなる子ならいいのですが、背中を支えてあげても、前に進まず、逆にぎゅっと後ろに下がるような力を入れてしまう子は、今までよく見てきました。

そういう子には、ある程度、中長期的なスパンで接し方を考えるようにしていて、「やりたくなるときをじっと待つ」ということを優先しています。「やりたくないなら、やらなくていいよ」と声をかけながらも、これは楽しいことなんだとわかってもらうために、同じ場所で見ていてもらいます。他のお友達と楽しんでる姿を見せていると、「楽しそうだな、ちょっとやってみようかな」と気持ちが動く瞬間というのがあるんです。それを、必ず見逃さないようにします。

――それは、じっと見ていただけなのが、反応して笑ったりとか、自分はやらないけど、ちょっと近づいてきてまわりをぐるぐる回り出したり、そういうことですか?

田中:そうですね。そんなふうに、自分から動いてきた瞬間に「やってみる?」って声をかけます。それでもやっぱり子どもに不安はあるんですよ。だから、そこで一人でやらせるのではなくて、「一緒にお手伝いするから、ちょっとやってみようか」って言ってあげてください。本当に、しっかり支えて危なくないように、安心させながらやってみて、「ほらできたよ、やったね」って。

一回達成感を感じさせてあげると、その一回だけで克服する子もいます。少なくとも、意欲はすごく高まっていく姿が今まで見られてきたかなと思います。

はじめてのところはいつも「おっかないところ」

――保育の活動ではなく、イベントなどで、チャンスが一回しかないというときは、どうしていますか? 親子イベントなどで、「いまステージに上がらないと、次は体験できない」という瞬間に、やきもきしているお母さんたちをよく見かけます。

田中:自分から行けないお子さんというのは、集団を怖いと感じていたり、普段と違う雰囲気や環境が怖いと感じている子が多いです。そういうところは、子どもにとって、「楽しい」より「ちょっとおっかない」ところ。大人であれば、お化け屋敷に「楽しいから行っておいで」と一人で送り込まれるような感じです。大人でも、不安になりますよね。

――なるほど、大人だってはじめての人たちや知らないところは、怖いですもんね。

田中:それでも、ずっと怖いわけではなくて、不安というのは、ある程度経験でカバーできるようになってくるものです。怖くて集団に入れないのは、「まだ経験が必要で、その時期じゃないんだな」と、僕は思っています。大きくなったら大丈夫になる子も、たくさんいますから。

もし完全に拒否でなく、おっかなびっくりながらも一緒にその場所に入っていけるなら、それが「経験」になります。やってみたら意外と最後の方は楽しんでたということもよくあるでしょう。多少拒みながらでも、「大人の力添え」で楽しめると思えば、挑戦してみることもケースバイケースであると思っています。

あとは、参加の仕方もありますね。「見てるだけで楽しい」とか、「少し距離を置いた方が安心できる」とかいう子は、無理しないほうがスムーズかもしれません。それが、泣きながら逃げ出しちゃうぐらい嫌がっているのにやらせると、かえってトラウマになって、二度と参加できなくなることもあるんですよ。明らかに様子がマイナスになるのであれば、それは一旦諦めるほうがいいのかなと思っています。

なかなか一歩が踏み出せない子に。一緒に読んでみたい絵本

田中:そういう、なかなか一歩が踏み出せない子におすすめの絵本があります。直接言わなくても、ひとつできたら嬉しいね、という気持ちを伝えるのに役立ってくれるかもしれません。田島かおりさんの「はずかしがりやのしろうさちゃん」シリーズで、『しろうさちゃんとおねえちゃんのかえりみち』(ポプラ社)では、誰かに話しかけられるとおねえちゃんの後ろに引っ込んでしまうしろうさちゃんが、好きな遊びの中では自分から話しかけられたり、おねえちゃんに代弁してもらうことで成長していくシーンが描かれています。もしよかったら、一度読んでみてくださいね。

POINT: ・子どもを集団の中に促すだけでなく、大人が積極的に仲立ちして
・大人はいつも味方ということを伝えていれば、あるとき一歩が踏み出せる
・はじめてのことは、やってみようと心が動く瞬間を見逃さず声かけを
・できないことより、できたことをひとつずつ褒めてあげよう

第5回は、「なかなか寝てくれない我が子……寝かしつけの技を教えて!」です。

【第3回】年中・年長でまた号泣!「行きたくない!」を楽しみに変えるには?
【第2回】朝の保育園で号泣!ママと離れられない子を送り出すには?
【初回スペシャル】だいすけお兄さん、盛り上がる遊びを教えて!
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聞き手:日下淳子
くさかじゅんこ/kodomoe編集ライター・元保育士・一児の母。親子と絵本と音楽をテーマに活動中。

イラスト:山川あかね
やまかわあかね/イラストレーター・布人形作家。インスタグラムにて育児日記を公開中。https://www.instagram.com/dummpuppe/

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