2014年7月20日

7月のテーマは「水族館の絵本」【広松由希子の今月の絵本・32】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

7月のテーマは「水族館の絵本」

うーん、うだる。脳みそがみそ汁になりそう。
こんな日は、水族館にでも行きましょうか。

一歩踏み込めば、ゆらゆら別世界。
地上でうだうだしている脳内を、洗われる気持ち……
ちょっと珍しい、絵本の水族館へご案内。

hiromatsu32

 

まずは、眺めているだけで涼しい水のなかへ。

「魚は、水のなかで暮らしています。」(1 ブラウントラウト)

魚が暮らす自然の風景を見ながら
「魚のこと」について、一から学べる科学絵本です。

「凍りそうに冷たい水のなかにもいるし……」(2 ホッキョクイワナ)

「温かい熱帯の水のなかにもいます。」(3 クイーンエンゼルフィッシュ)

「魚は、ヒレを使って泳ぎます。」(4 レインボーダーター)

めくるごとに美しい写実的な魚が現れ、
説明は短い1フレーズだけ。
わかりやすく、生物が苦手な大人も自然に引き入れられます。
巻末には、15種の魚の詳しい生態も。

「たいていの魚は肉食です。」(13 オオクチバス)

「生きているうちは、成長しつづけます。」(14 ジンベイザメ)

一冊読み終わると、魚ってどういうものか、
少しわかった気がします(この年で!)
陸のものも、水のものも、いっしょに生きているんだなって
涼やかな気持ちで思えます。

sakananokoto

『魚のこと』(自然スケッチ絵本館)
キャスリン・シル/文 ジョン・シル/絵
増本裕江/訳 玉川大学出版部

本体1700円+税 2011

 

 

魚の生態を大きくとらえたところで、
「魚の顔」に注目してみましょう。

えっ、顔?
クマやウサギやネコと言われると、顔を思い描くのに、
魚と言われて、顔を思い浮かべることって、ないですよね?

ギョギョッ!(ベタですみません)
こ、こんなにいろんな顔があったとは!
正面向きの魚がずらりと並んだ
最初の見開きから、度肝を抜かれます。

横から見ると、ファッショナブルなエンゼルフィッシュも、
正面顔は「あららっ」だし、
上から平たく見るばかりのヒラメの顔
向き合ってみると?
目や口、歯、鼻、耳は、どうしてこんなことになっているの??

見やすくデフォルメされたイラストと、
ゆかいな吹き出しの台詞やコメントで、魚の世界にはまります。

kao

『さかなのかお』(絵本・すいぞくかん1)
ともながたろ/絵 なかのひろみ・まつざわせいじ/文
アリス館 本体1400円+税 2004

 

 

ぞろぞろぞろぞろ、子どもたちが魚の口に!?
次は、表紙からびっくりの「びっくり水族館」に入館しましょう。

開いて、またびっくり。
横に長ーい画面が蛇腹に折り畳まれている
シリーズ「絵巻えほん」の1冊。

ひざの上でめくって読むこともできますが、
じょろろーんと広げたら、部屋の中に水族館が出現。
黄色い制服のみんなに紛れ、
先生に引率されて巡りましょう。

「デンシャウオ」にとびついて。
「アルクサメ」に右往左往。
「ハナサキウオ」にうっとり。
でも、いちばんとんでもないのは……「ダメタコ」
(名前からしてダメすぎる!)

おかしな魚たちに反応する、子どもの集団を見るのも楽しい。
水族館を見終わったら、ぱたぱた絵本を閉じましょう。
無事に「出口」にたどり着いたかな?
表紙から裏表紙まで、たっぷり「びっくり」してください。

bikkuri

『絵巻えほん びっくり水族館』
長新太/作 こぐま社

本体2000円+税 1990/2005改訂新版

 

 

へんてこな水族館をハシゴしたい人は、
「うえのどうぶつえん」の下にあるという
『したのすいぞくかん』へどうぞ。

大まじめにふざけた
ダジャレとも言い難いような
ダジャレ水生生物のオンパレード。

「かえるいるか」
「らくだくじら」
「さるいるか」……って、そんなのイルカ!

実在する魚、しない魚、
いりみだれての混沌ぶり、
画面の爆発ぶりがすばらしいです。

shitano

『したのすいぞくかん』
あきびんご/作 くもん出版

本体1200円+税 2008

 

 

さらに、ダジャレを究めたい人は、
元祖『だじゃれすいぞくかん』へ
もう一軒ハシゴ。
ダジャレ絵本といえば、このコンビでしょ。

読むほどに
まじめにアジがって、
汗水タラしてるのも馬鹿らしくなり、
サバサバしてくるカモメ。
(あっ、カモメは水族館にいなイカ)

dajare

『だじゃれすいぞくかん』
中川ひろたか/文 高畠純/絵
絵本館 
本体800円+税 2001

 


 

すみません。後半、乱れて。
暑さに頭をやられたみタイ。
では、またアシカ……じゃなかった、また来月。
涼みつつ、楽しい夏をお過ごしください。

 

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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