2022年10月20日

炊き込みごはんのときは、白ごはんも炊く。その理由は…【柏木智帆さんちの食卓・2/我が家のごはん日記】

 忙しいママにとって、日々の家事の中で悩ましいのがごはんのこと。適度に手を抜きたいけれど、家族には栄養のあるものをバランスよく食べてもらいたい。では、食にかかわるお仕事をしているママたちは、家族のごはんをどうしているの? 

今月の担当はお米ライターの柏木智帆さん。米農家のご主人、3歳の娘さんと3人暮らしで、福島・会津地方で「米文化の再興」と「米消費アップ」をテーマに活動しています。

柏木智帆さんちの食卓 #week2

〈日曜日・昼〉

 

夫が稲刈りのため、3歳の娘と2人ランチ。おむすびを作り、朝の残りの味噌汁を温め直し、娘が好きな鯵の開きを焼くことにしました。

鯵の開きは、私が実家で暮らしていた頃から好きだった神奈川県の鮮魚店のもの。良い鯵が入ったときだけ売ってくれるので安心できるお店です。福島県民になった今でも定期的に送ってくれる母に感謝!

そんな大好きな鯵の開きですが、おいしい部分は娘のために取り分け、私は骨のそばや皮付近を。私が娘と一緒に1尾すべてを食べられる日が来るのは、娘が1人で1尾を食べきれるようになったころかな。その日を想像すると、うれしいような、さみしいような……。

鯵の開きは皮側を上にして皿にのせるのがポリシーでしたが、見た目で娘が嫌がってしまわないように、いまは、身側を上にして皿にのせるようにしています。食べてもらうための小さな工夫を積み重ねる日々です(それでも食べてくれないものだらけ)。

 

きゅうりは甘酒みそ漬け。先日お亡くなりになった料理家・舘野真知子さんレシピの「甘酒みそ」を漬け床にしました。 甘酒みそは甘酒(濃縮タイプ)と味噌とすりおろした生姜を混ぜるだけ。きゅうりスティックに付けてもおいしいです。

私はぬか漬けが好きなのですが、夫はぬか漬けが苦手。今年の春から野菜の漬け床は塩麹か甘酒みそに変えていましたが、やはりぬか漬けも恋しい。来年の春からはまたぬか床を復活させようかな。

〈日曜日・おやつ〉

さつまいもがおいしい季節。

実家の母が作る米粉とさつまいもでできた「鬼まんじゅう」に挑戦しようと思いましたが、せっかくならば娘が一緒に作りやすいほうがいいかなと思い直して、先日娘と一緒に作ったお月見団子にさつまいもを混ぜた「さつまいも団子」を作ることに。蒸したさつまいもを潰し、だんご粉と水を入れて、耳たぶくらいの硬さまで練ります。お団子を丸めるところからは娘もお手伝い。ちょっぴりいびつになりましたが、それでも上手にできました。

最後に蒸したら完成です。しかしなぜか私が作った団子ばかりを食べていた娘。自分で作ったほうに愛着がわくと思ったのですが、そうでもないようです。

食べ比べてみると、たしかにきっちり丸みを帯びた団子に比べ、外側のひらひら部分が水っぽい仕上がり。娘はちゃんとおいしいほうを選んで食べていたのでした。

今回はホクホク系の「紅あずま」を使ったためか、娘は醤油とみりんと片栗粉と水で作ったみたらしあんを付けて食べていました。

甘いものが苦手な私にとっては今回のさつまいも団子は素朴な甘さで好みでしたが、次回は「安納芋」「紅はるか」などのねっとり極甘品種で、みたらしあん要らずのさつまいも団子を目指そうと思います。

この日の午後は娘と一緒に稲刈り真っ最中の田んぼへ。お兄ちゃん(義兄)がコンバインで稲を刈っていく様子を見て、「いねがすいこまれてる!」と娘。稲刈りが進むほどに、周囲の景色は黄金色から茶色へ。すべての田んぼが茶色くなったころ、紅葉が始まります。

 

〈月曜日・夜〉

 毎食の基本は、ごはんと味噌汁。この日のおかずは「ししとうの甘辛焼き」「厚揚げの甘辛焼き」「れんこんのきんぴら」「じゃがいもの煮物」と甘辛一択の食卓ですが、食感や風味が違うので同じ甘辛でも意外と飽きないもの。ごはんがぐんぐん進みます。

 実はこれまでの食卓には肉料理が一つも登場していません。夫はベジタリアン(卵と乳製品は食べるラクト・オボベジタリアン)で、私はベジタリアンではないものの肉と乳製品が食べられないからです。

その代わり、厚揚げが大活躍。「厚揚げの甘辛焼き」はごはんに合う味付けで食べ応えもあるので、出番が多いメニューです。娘は厚揚げの甘辛焼きを気に入って食べてくれていた期間もあったのですが、今はまったく食べなくなりました。じゃがいもの煮物も一口も食べてくれず、食べるのは海苔で巻いたごはんばかり。米農家の娘がごはん好きでよかったな。

枝豆も茹でました。夫の実家の農園が近所の飲食店向けに契約栽培している会津伝統野菜の「かおり枝豆」。通常の枝豆に比べて香り高い品種です。

このかおり枝豆は飲食店で「豆ずり餅」に使われています。豆ずり餅とは「ずんだ餅」のこと。枝豆と砂糖で作ったずんだあんを絡めた餅料理です。わが家では私が甘いものを好まないせいで、かおり枝豆は日本酒の肴です。

 〈火曜日・夜〉

 西会津町の農園から届いた野菜セットの中に「そうめんかぼちゃ」が入っていました。

 以前に酢の物で食べたことがありますが、嫌いじゃないけど特に好きでもなかったので、酢の物はやめようと決めたものの、どう調理しようか迷いました。

 結局、そうめんかぼちゃだから素麺のようにして食べようかなと思いましたが、いや黄色いから中華麺かなと思い直し、冷やし中華のようにして食べることに。

この日のメニューは、「そうめんかぼちゃの冷やし中華風」「オクラとアスパラのおひたし」「いんげんとモロッコいんげんと油揚げの炒め煮」「大根の皮のきんぴら」「茹でかおり枝豆」「トマト(お父ちゃんが栽培)」。

そうめんかぼちゃの冷やし中華には、千切りきゅうりと味玉を添えました。

食べてみると、紛れもなく冷やし中華! そして意外と白ごはんに合うことを知りました。「ラーメンライス」も良いですが、「冷やし中華ライス」もアリかもしれません。

これならグルテンフリーなので小麦アレルギーの娘も食べられる!と思いましたが、娘はひと口も食べてくれませんでした……。

お米は滋賀県の生産者の「コシヒカリ」。夕食のごはんは1種類のお米を土鍋と炊飯器で炊き比べしていることがほとんどで、私の前にはいつも白飯が入った茶碗が2つ並んでいます。

〈水曜日・夜〉

夫と松茸名人と一緒に近所の山へ松茸採りに出かけました。

山の中で植物や虫や目に見えない菌などたくさんの生き物に囲まれていると、乾いた心が潤うというか、生命力をもらえたような気分になります。これが森林セラピーってやつでしょうか。とはいえ、歩くのはほとんどが道なき道。藪の中を進むのはなかなか労力の要ることです。

実は少し前にも娘と夫と3人で同じ山へ松茸採りに出かけていました。ところが、娘が私に「だっこ! だっこ!」と言うので、しかたなく娘を抱っこしながら斜面を登り、娘を抱っこしながら藪の中を進みましたが、14kgの娘の体重が私の足腰にのしかかり、あちこちから突き刺してくる木の枝から娘を守ることに限界を感じ、途中であきらめて帰宅したのでした。

今回、最初に松茸を見つけたのは、やはり名人! 

そして、夫も負けじと発見!

私は最後の最後まで松茸を見つけることができませんでしたが、名人が「あったよ」と教えてくれた松茸を採らせてもらいました。名人に感謝。

この日の夕食は迷わず「松茸ごはん」に決定。

 

しかし、炊き込みごはんを主食に据える時、どんなおかずにしようか迷いませんか。私はいつも迷います。そこで考えた解決策は「炊き込みごはんと一緒に白ごはんも炊く」という方法。炊き込みごはんはそれだけで楽しみ、おかずは白ごはんで食べるというスタイルで、これがわが家の定番。たまに炊き込みごはんをおかずに白ごはんを食べることもありますが、あまり人から理解されません。

この日のおかずは「厚揚げと白滝の煮物」「ほうれんそうの胡麻和え」「卯の花」。松茸と豆腐の吸い物も作りました。

娘は松茸ごはんは食べませんでしたが、白ごはんと大好きな白滝を堪能しました。小麦アレルギーの娘は素麺やうどんが食べられませんが“チュルチュル系”が好きなので、白滝はありがたい存在です。

卯の花の具材は、ごぼう、人参、油揚げ、ネギだけ。卯の花は家庭や飲食店ごとに具材が違っておもしろいですよね。私が好きだった卯の花は、神奈川県にあった今は無き居酒屋のもの。どかっと山盛りの卯の花が置かれたカウンターの風景も良かったのですが、イカゲソが入っていたのがとってもおいしかった。実家の母は桜えびも入れていて、これもおいしい。 

今はベジタリアンの夫がイカもエビもNGなので、わが家の卯の花はネギ多めなのが特徴と言えば特徴なのかな。

〈土曜日・昼〉

娘が通うこども園で運動会がありました。

お弁当を持っていって園庭でシートを敷いて娘と夫と一緒におむすびを食べて…と楽しみにしていましたが、園からのお知らせを見ると、なんと朝の30分間で終了の予定。ならば帰宅してから食べようと思い直して、お弁当を作りました。

 

おむすびは塩むすびと「しそおむすび」。

結婚後に義実家では海苔ではなく大葉の塩漬けを巻くおむすびが定番だと知って驚きました。近所の人に聞いても同様のおむすびを食べるそうで、さらにこれをそのまま焼いた「やきめし」が、かつては農作業時の「こびる(小休憩)」で食べられていたそうです。

しその葉の塩漬けの作り方はお父ちゃん(義父)に教えてもらいました。

しその葉を沸騰した湯に10秒ほどくぐらせたら氷水へ。その後、布巾で1枚1枚の水気を取って、ラップに塩をふってしその葉を1枚のせ、また塩をふってしその葉を1枚のせ…と繰り返して、数枚ずつラップでまとめて冷凍庫へ。使うときは1枚ずつ剥がしてそのままおむすびにぺたり。

娘は「はっぱのおむすびだー!」と喜びますが、食べません。でも、見た目を喜んでくれますし、私も夫も好きなのでときどき作ります。

おかずは、「うずらの味玉」「みそかんぷら」「蒸しとうもろこし」「蒸しさつまいも」と“娘が食べるかもしれないもの”でそろえました。

「みそかんぷら」は福島県の郷土料理。皮付きの小じゃがいもを炒めてから出汁と味噌とみりんで水分がなくなるまで煮込み、甘味噌だれを絡めます。本来は炒めずに素揚げする料理ですが、わが家ではごま油で軽く炒めるだけ。

この料理は結婚前から作っていましたが、山梨県の郷土料理「せいだのたまじ」と呼んでいました。同じ料理で名前が違うのですね。福島県民になった今では「みそかんぷら」と呼ぶようになりました。

みそかんぷらの作り方はこちら

娘は串に刺した「うずらの味玉」を見て、最初は「おだんご!」と喜んでいました。ひとくち食べてみてお団子ではないことが判明してからも食べ続け、ほとんど1人で完食。気にいるとそればかり食べる一方で、みそかんぷらは甘味噌だれをなめるだけ……。

娘は運動会のダンスで扮したトンボさんが気に入ったようで、帰宅してお弁当を食べている間もトンボさん。その日の午後も夜も、翌日スーパーへ買い物に行くときもずっとトンボさんでした。

お弁当を食べたウッドデッキの前の田んぼは、お兄ちゃんが前日に稲刈りしたばかり。黄金色の稲を前にランチとはいきませんでしたが、切り株から漂う稲の香りもまた良いものです。

柏木智帆
かしわぎちほ/お米ライター。元神奈川新聞記者を経て福島県の米農家に嫁ぎ、夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送っている。年間200種以上の米を試食、その可能性を追究し続ける人呼んで「米ヘンタイ」。「お米を中心とした日本の食文化の再興」と「お米の消費アップ」をライフワークに、お米の魅力を伝える活動を精力的に行っている。娘のお弁当生活が始まり「茶色いお弁当」のおいしさを伝えるべく奮闘中。今後は米食を通した食育にも目を向けている。

Instagram: @chiho_kashiwagi
Blog「柏木智帆のお米ときどきなんちゃら」: https://chihogohan.hatenablog.com/

連載中
お米ライターが探る世界と日本のコメ事情」(Forbes Japan)
「お米偏愛主義論」(論座)

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