2021年12月17日

伝統のじゃがいもレシピをシンプルにアレンジ。福島県・みそかんぷら【おうちでカンタン!郷土ごはん・9】

子育て中は台所仕事がままならないことって、たくさんありますよね。おいしくて栄養のあるものを食べさせてあげたいけれど、とにかく料理する時間がない! レパートリーもマンネリ化!  そんなときのお助けメニューにできる“郷土料理”を、さまざまな地域で育ったママたちに教えていただきました。

ごはんに合う! じっくり煮詰めるじゃがいも料理
福島県・みそかんぷら

結婚して福島に移住したことで、はじめて福島の郷土料理に触れた柏木智帆さん。実家のお義父さんが育てたじゃがいもで作る「みそかんぷら」は、味噌とみりんの味付けでじゃがいもをホクホクに煮た、ごはんのお供になるおかずです。
「みそかんぷらは、ピンポン球くらいの小さなじゃがいもで作るのがならわし。いつもこれが食べたくて、小さなものばっかりコンテナからもらってきちゃいます。大きなじゃがいもは本来のみそかんぷらには使われませんが、食べやすいサイズに切ると、皮のついていない部分が少し煮崩れて、それもまたおいしいんですよ」

今回、郷土ごはんを紹介してくれたのは……
柏木智帆さん
かしわぎちほ/お米の可能性を追究し続けている、お米ライター。米農家に嫁ぎ、福島県に移住。家族と田んぼに触れる生活を送りながら、「お米を中心とした日本の食文化の再興」や「お米の消費アップ」をライフワークに、お米の魅力を発信し続けている。

素揚げして煮込むレシピを簡単に

みそかんぷらは、福島県に古くから伝わる郷土料理。むかし、じゃがいもがお米代わりだった食糧難の時代によく作られていたものだそう。「かんぷら」は福島の方言で「じゃがいも」のことで、語源はオランダ語のじゃがいも「アールダップル」なのではといわれています。

できるだけ小さなじゃがいもを選ぶのがポイント!

「むかし山梨県に取材で行ったとき、『せいだのたまじ』という郷土料理を知ったのですが、これがみそかんぷらとまったく同じ料理なんです。みそかんぷらを初めて食べたとき、『せいだのたまじだ!』って思いました。本当は、小さなじゃがいもを素揚げにしてから煮るのですが、揚げ物は手間がかかるので、油で炒めてから煮込むようにしています。郷土料理は、もちろんそのままの味や作り方で受け継いでいくことも大切ですが、手間がかかるところはアレンジして、自分なりに繋いでいくのもいいですよね。普段は炒めて、たまには揚げて、ってどちらも楽しむのもおすすめです。ちなみに亡き義祖母は、普通サイズのじゃがいもを大きめの拍子木切りにして味噌と砂糖で味を付けて煮込んでいたそうです」

柏木さんちのみそかんぷら。芽が出ているところを皮ごと剥く。

甘くてしょっぱい、昔から知っている味

柏木さんはみそかんぷらを食べると、長野のおばあちゃんちを思い出すそう。それは、おばあちゃんちの近所で売っていた、五平餅のような味つけの餅に似ているからだといいます。
「子どものころ、母方の祖母の家にいくと、いつも母は油で焼いて甘い味噌で味つけした餅を買っていました。その餅は香りや味がみそかんぷらとよく似ていたような気がして、みそかんぷらを食べると不思議と長野を思い出すんです。白いごはんが進みますし、じゃがいもの皮がはげた部分がとろりとしてくるのもまたおいしい。夫は、煮崩れたところをごはんにかけて食べるのが好きだと言っています」

お義父さんの畑は、家庭菜園の大きさをゆうに超えるサイズ!

ある日の食卓。この日はパートナーが育てたイタリア米でライスコロッケを。

そんな柏木さんのモットーは、「ママがストレスをためないこと」なのだそう。自分が食べたいものを作ったり、ちょっと高価なものでも食卓にのせたり、小さなごほうびを自分にあげることも大切にしているんですって。おいしいものの力は偉大ですよね。
それでは、みそかんぷらを作ってみましょう。

揚げずに手軽な方法で
みそかんぷらの作り方

材料(2人分)
じゃがいも(小)……500g

ごま油……適量
だし……600ml
味噌……大さじ3
みりん……大さじ2

作り方

1.じゃがいもはよく洗い、芽は取る。
2.鍋にごま油をひき、香りが出てきたらじゃがいもを炒める。
3.じゃがいも全体に油がよくなじんだら、だしを入れて蓋をし、沸騰するまで煮る。

4.沸騰したら、味噌とみりんを入れ、じゃがいもが柔らかくなるまで蓋をして中火で煮る。

まだ水分がひたひたにあります。

5.じゃがいもに楊枝を刺し、中まで柔らかくなったら蓋を開け、汁気を飛ばす。

6.おつゆがとろりとするまで煮詰める。

できあがりはこのくらいの水分量。少しあとでかけられる程度の汁気を残して。

かんぷらいもは、お砂糖とみりん、味噌で作ったり、お醤油を入れたり、さまざまなレシピがありますが、柏木さんおすすめの「みりんとお味噌だけ」という作り方はとてもシンプルで、自然な甘みとうまみを引き出しています。

ヒトクチメモ

小さいじゃがいもはなかなかスーパーに売っていないのですが、ときおり規格外で安く売られていたり、新じゃがのシーズンにも出回ります。でも、もしかしたら皮の薄い新じゃがではなく、分厚い皮のときに作った方がおいしいかも!  じゃがいもの皮の歯応えと、ホクホクの中身のバランスがたまらないんですよね。味噌とみりんだけでできる甘くてしょっぱいお味噌の味は、なんともいえないおいしさ。すりごまを最後に入れてもいいのだそう。子どもたちはごはんそっちのけで、じゃがいもばっかり食べていました。味つけがしっかりしているので、お弁当のおかずや作り置きにも向いていますよ。

おかずだけでなく、小さい子のおやつにも、こんな味つけのものがあったらホッとできるかもしれませんね。寒い日の食卓も、ホクホクのじゃがいもが温めてくれますよ!

吉川愛歩
よしかわあゆみ/食のライター・料理家
13歳と5歳の母。暮らしと食のコンテンツ制作に携わり、執筆と料理の仕事をしている。『メスティンBOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などのレシピ監修も行っている。
Instagram : @yoshikawaayumi

 

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