『ひみつひみつのひなまつり』【今日の絵本だより 第36回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ひみつひみつのひなまつり』
鈴木真実/作 講談社 1650円
ひなまつりの日曜日、皆さんいかがお過ごしですか。
今回は、愛らしくてとても元気なひなまつりの絵本をご紹介します。
『ひみつひみつのひなまつり』。
えいちゃんがお部屋でお絵描きをしていたら、押し入れから誰かの声が聞こえてきます。
ふすまを開けたら中から出てきたのは、お内裏さまと、お顔がずいぶんふっくらとしたおひなさま。
えいちゃんのおひなさまは、この一年の間にすっかり太ってしまったようです。
「きままに すごして おったら この とおり。
だれだか わからんように なって しもうて、
うんどうしに でて まいりました」
ですって。
さあ、おひなさまのダイエット作戦の始まりです。
まずは、えいちゃんのお人形たちとかけっこ。
それから、風船でトランポリン。
うーんと力を込めて、毛糸でみんなとつなひき。
いろんな努力の甲斐あって、おひなさまはすっかり元通りの、すっきりした姿になりました。
五人囃子の奏でる笛や太鼓にのせて、三人官女や右大臣、左大臣、みんな一緒に喜びの舞を踊ります。
押し入れに帰るおひなさまが、えいちゃんの手を取って言いました。
「ひなまつりは、えいちゃんが すこやかに そだつよう ねがいを こめた おまつりです。
しあわせに なられますよう、
ずっと ずっと いのって おりますぞ」
ああ、いいですねえ。
家族だけでなく、おひなさまたちも、この家の女の子の幸せを願ってくれている。
ずっとずっと。
そう思うと、ひな人形を出すのもしまうのも、より感慨深くなりますね。
とんだりはねたり、子どものように元気なひな人形たちですが、着物や小道具もしっかり描かれています。
五人囃子のこの人が歌い手だね、とか、ひとりだけ踊らないのはあの仕丁だね、と、それぞれの人形についても、親子でおしゃべりができそう。
ひなまつりの時季の定番に、おすすめの一冊です。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。