「子どものイヤイヤ期はママのイライラ期」保育のプロ・柴田愛子先生に聞きました【第3回】
2023年12月14日

「子どものイヤイヤ期はママのイライラ期」保育のプロ・柴田愛子先生に聞きました【第3回】

横浜にある認可外保育施設「りんごの木」を中川ひろたかさんたちと設立し、絵本『けんかのきもち』や『わたしのくつ』などの著者でもある柴田愛子先生。 保育者やママ向けのセミナーの講師で全国を飛び回る中、kodomoe webに寄せられるママの3大お悩みに答えてもらいました。今回は、最終回で3番目の悩み、子どものイヤイヤ期についてです。

 イヤイヤ期は「私は私」のはじまりのサイン

今は、どの雑誌やテレビでも「イヤイヤ期をどうするか」って取り上げているけれど、結局わからなくて情報に翻弄されてママは疲れちゃう。子どもが「イヤ」って言うと、「どうしてイヤなの?」って聞いてしまう気持ちはよくわかります。でも、子どもは「どうしてイヤなのって言われても、イヤなだけなんだ」っていうことなんです。だから「こうでしょ? ああでしょ?」って言い聞かせてわからせようとしても、子どもにしたら「なんか言ってる」と、ちっともママの言葉も気持ちも届きません。私は4歳からが人間だと思っています。それもまだ、人間としては中途半端な4~5歳。5~6歳になると言葉を使って思考するし、言葉のコミュニケーションができるからわかりやすくなります。

子どもの発達上、イヤイヤ期はお母さんと自分が違う人間だって気づいたということ。「あなたの思うようにはいきませんし、もっと尊重してくれませんか? 私は私で、あなたじゃないんですけど」ってことなんです。それを、2歳や3歳の子どもが言葉で言えたらいいんですけど、子どもにとっては「イヤ」しかない。ぐずぐずしていることもそうなんですけど、「どうしてぐずぐずしてるの?」とお母さんは聞くけれど、それが言えたら子どもじゃないんですよ。「なんでぐずぐずしちゃうの?」って聞かれても、「だってなっちゃうんだもん」って。客観的に、そこを通訳することが大事。通訳してくれる人が近くにいるといいんですけどね。
「子どものイヤイヤ期はママのイライラ期」保育のプロ・柴田愛子先生に聞きました【第3回】の画像1

 「イヤイヤ期」はママの「イライラ期」

イヤイヤ期は自分宣言なんです。「私は私、あなたの思う通りにはいきません」って言い続けているんですよ。そういう時期なので、ママはあきらめていただきたいわけです。今、イヤイヤ言いながら、「自分」に気づいているんです。これからのその子の人生80年、100年をを支える大きな根っこになっていくから、イヤイヤ期は、ないよりあった方がいいですよ。ただ、イヤイヤ期は、言い換えるとこちらのイライラ期。その上、イライラを子どもにぶつけると、子どもは壊れちゃうから、ママは大人なのでイライラを逸らす方法を見つけるのがオススメです。子どもの言うことを「はいはい」って真に受けないのはスマートですが、一緒にお風呂に入って口を湯の中につけて「ばかやろー!」って言ってもいいですし、キッチンでお茶碗を割る、カラオケで騒ぐ。大人には解消方法がいくつもあります。これがとても大事。ママは、イライラを自分の体から追い出す必要があります。これが子どもに言うことを聞かせようっていう方向に行くと、親も子もつらくなるだけですから。
「子どものイヤイヤ期はママのイライラ期」保育のプロ・柴田愛子先生に聞きました【第3回】の画像2

 ママは自分の人生を生きていく

それでも「イヤイヤ期はいつ終わるんですか?」ってよく聞かれます。ラジオで5年ほど育児相談をしていますが、しょっちゅうくる質問です。その度に「自分宣言は一生、形を変えて続きます」って答えています。子どもが4歳くらいになるとイヤイヤ言うのは効率が悪いって気がつきます。それに「お母さんはそうかもしれないけど、僕は違う」って言えるようになる。10代になって親に「うるせえな」って言うのも「あなたはあなたで、私は私であなたではありません」って言い続けているんです。だから、イヤイヤ期は、一生モノですね。親はいつでも親の言う通りにさせたいと思い、子どもはいつも親の言う通りになるもんかって思う。だから、親が先にあきらめましょう。その分、自分の人生を大事にしたほうがいいです。子どもは思うようにいかないし、もう子どもに老後を見てもらうっていう時代ではないですから。子どもが自立して、自活して、健康な人に育ってくれたら、それだけでいいですよね。子育てが終わったらもう私はへなへなの抜け殻、ではなくて、「私は私の人生を生きている」って言いましょう。親がいて、子どもは生まれるんです。子どものために親があるわけではありませんから、自分を大事に、優先していきましょう。

撮影/繁延あづさ ※こちらの記事は2020年2月に公開された記事を再掲載しています。

柴田愛子
しばたあいこ/1948年東京都生まれ。保育者。1982年、横浜市で認可外保育施設「りんごの木」を創設。2歳から5歳までの子どもたちが通う。保育の現場に立ちながら、雑誌、新聞、テレビ、ラジオなどで「子どもに寄り添う」姿勢を伝える。著書に『子育てを楽しむ本』『保育の瞬間』『こどものみかた』他多数。絵本に『けんかのきもち』(日本絵本賞受賞)、『ぜっこう』『ありがとうのきもち』『わたしのくつ』『ざりがにつり』他。
りんごの木 http://www.lares.dti.ne.jp/~ringo/

シェア
ツイート
ブックマーク
トピックス

ページトップへ