2020年8月4日

保育園再開でコロナに関する新ルールがスタート!【教えて!世界の子育て~ドイツ~】

海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。
場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じことや違うこと、各国からリアルな声を伝えてもらいます。

ドイツで5歳と3歳の娘さんを育てている中原さん。日本と同じく、新型コロナウイルスによる影響がまだ続いているドイツでは、休園となっていた保育園が再開する地域が出ています。ウイルス予防のために決められた新しいルールに、子どもも大人も戸惑い気味。久々に登園した保育園で起こったこととは?

コロナ禍で
恐る恐るの保育園再開

唐突に始まったロックダウンのせいで、上履きもお昼寝布団も園に置きっぱなしのまま、みんな一斉に引きこもってしまったので、再開1日目はまるでコロナなど無かったかのような、手ぶらでの登園になりました。
最後に園に行ったのは、まだ冬の空気が残る3月だったので、あのときのままロッカーに置いてあった外遊び用のジャケットも長靴も内側にボアが付いていたり厚手だったり。すっかりTシャツ姿に様変わりした子どもたちの姿とはまったくチグハグです。まるでタイムスリップをしたよう。いや、実際に私たちはコロナを通して違う次元に来てしまったのでしょう。

その証拠に、見慣れたはずの保育園も微妙に異なっています。出入り口の消毒液や、以前は防犯のため少し開けてある程度だったのに今は大きく開け放たれた窓という窓。ところどころお名前シールが剥がされて空になっている子どもたちのロッカーや、いたる所に立つ(コロナ関係の)注意書きの札。廊下で遊ぶ園児はおらず、立ち話をする保護者もほとんどいません。みんなどこかピリッとしています。ううーん、変だわぁ。ちょっと似てるけど違う。こんな雰囲気だっただろうかこの保育園は。そんなパラレルワールドに来たかのような、奇妙な違和感を持って、娘たちが通う保育園は再開しました。

コロナに関する新ルールがスタート!再開した保育園でとまどう子どもたち【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像1

保育園の入り口には「教室に子どもを届ける時は手を消毒してね」のメッセージ

がんばって
守ってみせます、新ルール!

保育園の再開といっても、実際のところ園はロックダウン中も完全には閉まってはいませんでした。なぜならば、病院で働く医療従事者や食料品店の従業員のために子どもの預け先は常に必要だったからです。久しぶりに会う先生たちは、私たちが家にこもっていた間、わずか数人の園児のためにずっと園を開け続け、ミーティングを重ね、再開したときコロナを広げないための園内ルールを考えていてくれたのでした。

そして、いざ全体が再開するとなったとき、いくつかのルールがメールで送られてきました。
●登園希望者は1週間前に翌週分の登園予定時間とお迎え予定時間を登録。それ以外の時間は出入り禁止(登録事項は感染があった場合の接触をたどるため保健所が持ち帰るそうです)
●子どもたちは教室で遊ぶこと。園庭で遊ぶ時は場所を区切り、ほかの組と接触を持たせない
●親が出入りする際は手を消毒する
●園内に入った保護者は施設や物に手を触れない
●家族にひとりでも咳の出る者があったら登園できない
など。

コロナに関する新ルールがスタート!再開した保育園でとまどう子どもたち【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像2

こんな感じで新しい情報が来ます。この手書き文字がさっぱり読めないので通りがかりの保護者に音読してもらっています

保育園、再開初日。久しぶりに会うお友達の姿に、長女リンゼも次女おいもも興奮を隠せません。うれしくて、「せんせいにあげるの!」と庭のアジサイを切って花束を作り、腕に抱えて登園しました。そんなにもうれしいのね! と、いじらしくてお母さんは涙ぐんでしまいました。

コロナに関する新ルールがスタート!再開した保育園でとまどう子どもたち【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像3

いよいよ靴を脱ぎ、上履きに履き替えるのももどかしく、それぞれの教室に飛び込……まないのです! どうした子どもたち! 日頃のエネルギーはどこへいった? 表情は喜んでいるし頬も紅潮しているけれど、しばらくの期間、まったく家族以外の人に会ってこなかった子どもたちは、すっかりシャイになってしまっていました。どうしたらいいのか分からず、挙動不審でドアの陰に隠れて中に入ろうとしません。そしてしまいにはお母さんと一緒じゃなきゃ嫌だ! と泣き出す始末。でもお母さんは中には入れません。“保護者は教室への立ち入り禁止”のコロナによる新しいルールが頑として私の前に立ちはだかっているのです。先生はため息をついて言いました。「もうみんなの顔忘れちゃった? 先生はやっとあななたちに会えてうれしいのに!」
お母さんも人に会うのが億劫になってしまったので、気持ちは分かる! 久しぶりの教室に1歩足を踏み入れるだけでも、子どもたちには大仕事となりました。

コロナに関する新ルールがスタート!再開した保育園でとまどう子どもたち【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像4

もうひとつ、次女のおいもさんにはちょっとショックなことがありました。仲良しのお友達の姿が、見当たらないのです。「せんせい、フィリーネは? フィリーネはどこ?」コロナ前にはいつも一緒に遊んでいたフィリーネ。教室を捜し、園庭を捜し、トイレをのぞいても姿はありませんでした。
結局理由はわかりませんでしたが、持病のある家族に感染した場合のリスクを考慮して家で過ごさせている家庭や、この3か月の間にコロナで転職・退職したり引っ越したりした家庭もあったよう。そういった事情がフィリーネにもあったのかもしれません。仕方のないこととはいえ、おいもさんは「さようなら」を言えないままお友達と会えなくなってしまったのでした。

新ルールのために
再びのステイホーム

保育園の再開後、しばらく経った少し肌寒い日に、ビニールプールに飛び込んでびしょ濡れになったリンゼが、翌日軽い咳と鼻水を出しました。子どもにはよくある、ごくごく微々たるもの。咳や鼻水こそ出ても、体力気力は満タンです。以前だったらこのくらいなら預けることができていました。仮に大事をとってひとりがお休みしたとしても、もうひとりは登園していました。ところが、新しいコロナルールではそうはいきません。

リンゼの咳はおいもの咳。ふたりともステイホームなのです。咳はおいもには移りませんでしたが、ただただ長引いたのです。結局1週間以上この元気あり余るパワフルなふたりは保育園をお休みしました。以前の私だったら「こんなに元気なのになんでじゃ!」と憤慨していたことでしょう。でも自分が健康な園児の親の側や保育園の側に立ってみれば、今は当然の処置に思えます。
「ま、仕方ない」健康と安全のためのルールは大事だもの。それに私たちは“おこもりのプロ”。大丈夫。咳がおさまるまでですって? 余裕よ! こうして2か月のおこもり経験を生かし、私たちはプロらしくのんびりとこもって過ごしました。

コロナに関する新ルールがスタート!再開した保育園でとまどう子どもたち【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像5

おこもりのプロが、ジャム用のカシスを房から外す指先

新しいコロナルールでは、子どもに限らず先生の家族が体調を崩したときも、先生は出勤することができません。その場合は即座に代わりの先生がやって来ます。ドイツでは、さまざまな職場においてそういった措置が取られていると思います。これはとてもドイツ的で、信頼できるところです。安心して子どもを預けて働くことができ、休むことができるように、きちんと取り決めがされており、そのためのサポートが徹底している。これは理にかなった当たり前のこととは言え、真っ当でとても好ましく思っています。

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お月様とツバメを見にお散歩にも行きました。明るいですがこの時はもう、21時過ぎなんですよ!

地域や保育園、個人にも求められる
コロナの新ルール

コロナに対する認識や衛生管理の程度は、必ずしも一定ではありません。地域によっても、保育園によっても、人によっても違います。大筋の対策は地域の保健所が出しますが、最終的な決定や細やかな決めごとは各団体や個人に任されています。私たちの地域は感染者数もごく少なかったため割と早めに保育園が再開しましたが、まだ閉まったままの地域もあります。

始まってからの対応も園によって異なり、例えば隣の保育園は、毎朝の検温はもちろん、建物内に入るのは子どもたちだけで、保護者は入り口の門で子どもを係の先生に引き渡し、早急に去るなどしているそうです。私たちの保育園のルールも少しずつ変わってきていますが、さらに家庭によって取り組み方は違います。感染させない努力をしている人もいれば、ルールを守っているフリをしているだけの人も見られます。そういった、いろんな人が混然となって生きる社会ですから、保育園が行う自衛的な対策が行き過ぎだとは決して思いません。

ドイツは感染の拡大をおさえつつも、時折大規模な集団感染が起きています。地域によっては、まだ人と会うことが制限されていたりと油断はできません。また、これからヨーロッパはバカンスがはじまります。ここでの感染も間違いなく起きると言われています。ドイツ人にはバカンスは命ですから、いくらかは出かけていくことでしょう。(ここにも個人の裁量が見て取れます)

ああ、次から次へと感染の波。サーフィンしたことは無いのに、次々にやってくる波を乗りこなさねばならない。まったく大変です。でも、皆、知恵を絞って柔軟に乗らねばならないのです。コロナ前の世界に戻れないのはみんな同じなのだから。

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コロナに関する新ルールがスタート!再開した保育園でとまどう子どもたち【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像8今回の海外ママは
中原さん
結婚を機に夫の故郷ドイツに来て9年目。趣味はレストラン巡り、庭いじり、手芸などなど。掃除と片付けも趣味になったらいいのになあ……といつも思っています。5歳と3歳の娘たちがいます。#中原ドイツ子育て Instagram @s_vn
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