2020年4月13日

『はるのワンピースをつくりに』【今日の絵本だより 第120回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『はるのワンピースをつくりに』
石井睦美/文 布川愛子/絵 ブロンズ新社 本体1300円+税

いつもと違う今年の春、なかなかおでかけのできない日々が続いていますが……。
せめてひととき絵本の中から、春の気分はいかがでしょうか。
今回は『はるのワンピースをつくりに』をご紹介します。

そよそよと、風がすみれの香りを運んでくる春の日。
うさぎのさきちゃんは、森の中にあるミコさんのお店へ出かけます。
ミコさんは、みんなに評判の仕立て屋さん。
さきちゃんは新しく、春のワンピースを仕立ててもらうのです。

ミコさんは
「どんなワンピースが いいかしら。
 さきちゃんの きぶんを しらなくっちゃね」
と、さきちゃんに質問をします。
「ねえ さきちゃん、はるの はなって どんな はな?」
さきちゃんは、うれしそうに答えます。
「すみれに たんぽぽ。ひなぎくに ひなげしでしょ。
 ばらに、それから チューリップ!」
ミコさんの質問は続きます。
「はるの いろって どんな いろ?」
「はるの おとって どんな おと?」
それから、それから……。

さきちゃんの答が、どれも素敵なんです。
「なのはないろに、クローバーいろ、
 さくらそういろに、あおぞらいろ。
 それからそれから おひさまの ひかりいろ!」
春の色を聞かれて、こんな風に鮮やかに答えられるかしら。
ミコさんの質問も、いいんですよ。
「はるになったら だれに あう?」
「はるになったら なにが したい?」
そう、春って、こんなに期待でいっぱいの季節。
お花がいっぱい咲いて、たくさんの明るい色に満ちていて。
今はあまり外に出られなくても、春は、私たちの心の中にちゃんとある。
春を思うだけで心が柔らかくなる、それが、いつもの春からのプレゼント。

さあ、さきちゃんのイメージを聞きながら、ポケットやボタンもひとつずつ相談して、ミコさんはカタカタカタと一晩ミシンをかけて……。
できました! 春がいっぱいにつまった、ふんわり明るいワンピース。
その愛らしさ、ぜひページを開いて見てみてくださいね。
できたてのワンピースに早速着替えたさきちゃんが、はずむように駆けていく先は?
優しさあふれるラストにも、ふわっと胸が温かくなるのです。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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