2021年3月9日

絵本作家・植垣歩子さん。我慢していた長男が大泣きした、思い出の絵本【うちの読み聞かせ・12】

気になるあのママ・パパは、絵本をどんなふうに楽しんでいるの? 親子の読み聞かせについて語っていただく連載。今回は、コドモエのえほん『すっぽんぽんのはだかんぼう』も人気の絵本作家の植垣歩子さん。6歳と3歳の男の子のママである植垣さんに、お話をうかがいました。

 絵本は、機嫌よく読んであげたい

── 植垣さんは、どんなふうにお子さんに読み聞かせをしていますか?

子どもが読みたがったときは、可能なかぎりいつでも読むようにしています。長男が幼稚園に入る前は、寝る前に絵本を読むのが儀式のようでした。それも何冊も! 幼稚園に入ってからは、疲れて早く寝てしまったり、ほかのことで忙しく遊んでいたりと、寝る前に何冊も絵本を読むことはしなくなってきましたが、年長になった今でも、読みたい時は絵本を持ってきますし、そこは本人に任せています。

最近、本人の希望で『エルマーのぼうけん』と『エルマーとりゅう』(ルース・スタイルス・ガネット/作 渡辺茂男/訳 ルース・クリスマン・ガネット/絵 福音館書店)を続けて読み聞かせしました。3歳の弟は、兄がそういう長めのお話を読んでいるときは、つまらないので邪魔をしてきます。 そうすると兄は機嫌が悪くなる(笑)。そんなときは夫が弟に絵本を読み聞かせたりします。 一緒に楽しめる絵本は、『チャレンジミッケ!6 こわーいよる』(ウォルター・ウィック/作 糸井重里/訳 小学館)とかでしょうか……。

── 読む絵本は、どんなふうに選んでいるのでしょうか?

息子たちに任せています。長男は「今日はお母さん選んで」ということもあるので、 そんな時は大喜びで、自分が読みたいものか、息子にぜひ読んでほしい絵本を選びます。

絵本作家・植垣歩子さん。我慢していた長男が大泣きした、思い出の絵本【うちの読み聞かせ・12】の画像1

3歳の次男は、よく一人で絵を眺めています。

── 読み聞かせをするときに、何か決めていることはありますか?

「機嫌よく読んであげる」ということでしょうか。 私が次男を妊娠中、長男がよく「やなぎむら」シリーズを読みたがりました。 私が大好きな絵本なのですが、文章が少し長くて、疲れている時など読むのが辛いこともありました。

そのシリーズの『サラダとまほうのおみせ』(カズコ・G・ストーン/作 福音館書店)で、虫たちが楽しかった一日のことを寝る前にお話しする場面があって。夫によると、その場面を読むときは私が必ず笑って、その顔を長男が毎回嬉しそうに見るらしいのですが、あるとき、私の機嫌が悪くて、その場面がきてもニコリともせず、仏頂面だったようで、その顔を見た長男が言葉で表せないくらい悲しそうな顔をしていたと。今でも夫から、「あの時の長男の顔が忘れられない」とたびたび言われます。 悪かったなあと思います……。どうせ読むのなら、機嫌よく読んであげたい。でも、お母さんも笑顔になれない時もあるので、読むのがつらい時は無理をしないでほしいです。

──それは胸にささるエピソードですね……。息子さんにとって読み聞かせは、絵本の内容以上に、お母さんと心を通わせる大切な時間になっているんですね。

6歳の息子は最近、反抗的です。弟に対する態度や言葉使いなどを巡って私とのいざこざが絶えないことも。しかし、彼もまだ6歳。言いすぎたなあと思う時は、ふて寝してる長男のところに絵本を持って行って読み聞かせをすると、お互い素直になれたりします。親子が一番密着していた頃に、さんざん読み聞かせをしていたので、あの頃の気持ちをお互い思い出すんでしょうかねえ。

絵本作家・植垣歩子さん。我慢していた長男が大泣きした、思い出の絵本【うちの読み聞かせ・12】の画像2

仲良く3人で絵本を読むこともたまにはあります。たまにですが……。

 

植垣さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊

── それでは、植垣さんの思い出の読み聞かせ絵本3冊を教えてください。

『サラダとまほうのおみせ』ほか「やなぎむら」シリーズ
(カズコ・G・ストーン/作 福音館書店)

絵本作家・植垣歩子さん。我慢していた長男が大泣きした、思い出の絵本【うちの読み聞かせ・12】の画像3

さきほどもお話しした「やなぎむら」シリーズです。妊娠中に比較的長い文章の絵本を長男が好んで希望したのは、私との時間を長く持ちたかったからかなとも思います。次男を産んで、明日退院するというとき、お見舞いに来た長男に「明日は絵本読んであげるね。『やなぎむら』がいいかな」と言ったら、それまで泣かなかった長男が大泣きしてしまいました。いろいろ我慢をしていたんだなと思います。この絵本シリーズにはたくさんの思い出がつまっています。

『みんなで!どうろこうじ』
(竹下文子/作 鈴木まもる/絵 偕成社)
絵本作家・植垣歩子さん。我慢していた長男が大泣きした、思い出の絵本【うちの読み聞かせ・12】の画像4

『みんなで!どうろこうじ』などの鈴木まもるさん絵の車シリーズは、長男も次男も大好き。今は次男の方が夢中です。 長男は車の絵本が好きでよく買っていましたが、今まで車の絵本に興味のなかった私はいまいち良さが分からないことも。そんな時に出会ったこのシリーズは、車だけでなく街の様子なども細かく、いろいろな発見があり、私も心から楽しめました。車絵本ビギナーのお母さんにもオススメです。

道路工事の重機にも詳しくなり、道路工事の現場に出くわすと、ついつい親子で見入ってしまいます。 車好きの息子がいなければ、一生知らない世界だったかもしれません。

『こぐまのたろ』
(きたむらえり/作・絵 福音館書店)

絵本作家・植垣歩子さん。我慢していた長男が大泣きした、思い出の絵本【うちの読み聞かせ・12】の画像5

この絵本は私が子ども達に読んで聞かせていると、スーッと心が落ち着いてくる魔法の絵本です。 大好きで、ずっとこの世界にいたいと思います。 子ども達もそれを知っていて、私がピリピリしていると持ってきてくれたりします。

何度も読んでいるのに、いつも同じところで泣けちゃいます

 

── ところで、植垣さんは子どものころ、どんな絵本がお好きだったんでしょうか?

たくさんの絵本を読み聞かせしてもらっていて、その時の幸福感が今の仕事につながっているし、私の心の支えです。でも、具体的にと言うと、なぜか怖かった絵本の思い出しか出てこない(笑)。 福音館書店の『なおみ』(谷川俊太郎/作 沢渡朔/写真)は怖くて、あの表紙の色が目につくと、隠していましたね。でも、今も手元にあります。

── お子さんに読み聞かせをすることで、お仕事や絵本づくりに影響していると思うことはありますか?

具体的なことではありませんが、息子たちに読み聞かせるのは自分が幼少の頃に親しんできた絵本が多いので、子どもと一緒に読んで、その反応を見ていると、自分の子どもの頃の気持ちを思い出すことが多いです。 子どもの時に感じたような気持ちで絵本に向き合えているような気がします。それが、今の仕事にも影響を与えていると思います。

仕事とは違いますが、年齢のせいか、息子たちに読み聞かせしていて、私の方が感動して泣いてしまうことが多くなってきました。 最近では、『ダンプえんちょう やっつけた』(ふるたたるひ、たばたせいいち/作 童心社)、『ビロードうさぎ』(マージェリィ・ウィリアムズ/作 ウィリアム・ニコルソン/絵 石井 桃子/訳 童話館出版)、『しょうぼうねこ』(エスター・アベリル/作・絵 藤田圭雄/訳 文化出版局)。

何度も読んでいるのに、 なんだかいつも同じところで泣けちゃいます。泣いて読めなくなることもありますが、息子たちは「また?」 みたいな顔をしています(笑)。

絵本作家・植垣歩子さん。我慢していた長男が大泣きした、思い出の絵本【うちの読み聞かせ・12】の画像6植垣歩子
うえがきあゆこ/1978年、神奈川生まれ。絵本作家。『すみれおばあちゃんのひみつ』(偕成社)、『にんじん だいこん ごぼう』(福音館書店)、『わらしべちょうじゃ』(あすなろ書房)、『うたこさん』『とうもろこしつぶこさんのへんしんサロン』(共に佼成出版社)、『すっぽんぽんのはだかんぼう』(白泉社)など。3月発行の新刊に『ロサリンドの庭』(エルサ・ベスコフ作、菱木晃子訳)。

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