2021年4月16日

コロナ禍での妊娠、出産。ドイツの妊婦さんはどうやって過ごした?【教えて!世界の子育て~ドイツ~】

海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。
場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じこと、違うこと。各国からリアルな声を伝えてもらいます。

ドイツでも引き続き猛威をふるう新型コロナウイルス。しかし、ロックダウンが続く状況の中でも、毎日新しい生命が誕生しています! 今回はドイツで子育てをする中原さんが、無事に出産を終えたお友達に、コロナ禍での妊娠・出産について話を聞いてくれました。

妊娠発覚時とコロナ

中原「まずはアントン、誕生おめでとう! 名字はリザの名字にしたんだね」

リザ「そう。わたしたちは結婚していないからどちらの名字をつけてもいいの」

リザは29歳。ドイツの一般企業で営業職をしています。
3年前からパートナーのカイと一緒に暮らしており、2021年3月に無事出産しアントンが家族に加わりました(ドイツでは子どもが生まれた家庭でも両親が婚姻関係にない場合が多々あります)。

リザ「こんなに狂った状況で、私たちもよくしのいだわよ。でも無事生まれて来てくれたから……ほんとに良かった」

と、小さな“アントン”を抱いて、ホッとしたようにリザは語ります。
私は前回、自分の妊娠出産を振り返る記事で当時のことをなつかしく思い返していましたが、今と比較すると生活を取り巻くあらゆる状況が大きく変わっています。
※中原さんのドイツでの妊娠出産記事はこちら

リザが妊娠していた2020年5月から2021年の3月までというと、ドイツはコロナ禍真っ只中。
あらゆることが厳しく制限される中、どのように過ごしていたのか。妊婦期や産院のようすはどのようなものなのか、ずっと気にかかっていました。

コロナ禍での妊娠、出産。ドイツの妊婦さんはどうやって過ごした?【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像1

ドイツのコロナ、略してドイコロ

ここでドイコロの状況と、ロックダウンのようすを紹介したいと思います。
2020年の3月から始まったドイツの第一次ロックダウン(最初のロックダウン記事参照)は2020年の夏に緩和するも、秋口からの感染者数増加によって政府は再びより厳しい第二次ロックダウンへと舵を切りました。
この、より厳しいロックダウンは、私たちにストレスとの戦いを強いるものでした。

なにしろスーパーマーケット、持ち帰りの飲食店、薬局、医療機関、行政機関以外は全て閉まり、同居の家族以外とは基本的に会ってはいけないのです。必要最低限の買い物などには医療用マスクの着用が求められます。学校も保育園も全て閉まり、当然のことながら習い事やクラブ活動もオンラインのみ。

子どもたちは家から出られません。これが延長に延長を重ねて4か月、日照時間の短い鬱々(うつうつ)とした時期にかぶさりました。
そればかりか、暗く長いドイツの冬を生き延びる大切な行事である「ハロウィン」や「ラターネンウムツーク(※1)」「クリスマスマーケット」などの心躍る行事や「ファッシング(※2)」なども全て、自粛。
そうして過ごしてきたのにもかかわらず、これを書いている現在3月末までの数週間でまたドイコロ感染者数が爆発的に増え、再び厳しい状況が来ようとしています。

そんな中で生まれて来たアントン。ママになったリザと、パパになったカイ。
さてさて、どんな様子だったのでしょうか。

※1ラターネンウムツーク……ドイツに古くからある祝日。聖マルティンの日。ローマの兵士“マルティン”がその行いを讃えられて聖人になったことを祝う日
※2ファッシング……キリスト教の断食期間前に行われるお祭り
どちらの行事も出てくる中原さんの記事はこちら

出産までに制限されたこと

中原「アントンがお腹にいるのが分かった時にはもうロックダウンしてたよね。婦人科の検診はどうだったの?」

リザ「人数制限が始まって予約が取りづらくなったかな。消毒、待合室のソーシャルディスタンス、マスク着用は当然必須で。検診にパートナーが付き添うのも1回だけOKになっていて、カイは1度だけお腹の中のアントンに会ったの。エコーで見られる姿って毎回違うから、検診の付き添いが1回だけになったのは残念だったよね」

カイ「それでも、エコーを1回一緒に見られただけでもラッキーだった。ロックダウンが本格的に始まったら、同伴者は一切立ち入り禁止になったし」

うわー、じゃあカイは滑り込みセーフだったのか。
妊娠も安定期を迎えたら、妊婦ヨガ、ダンス、スイミング、そしてゲボーツフォーバライトングスコース(妊娠準備コース)で妊娠期間を楽しみ、最初のママ友ができたりするものですが、「そういった活動はどうだったの?」と聞くと、

リザ「もーちろん全部中止か、良くてオンラインよ……」

言いながら、残念そうにリザの口がへの字になります。

リザ「妊婦ヨガに申し込んであったの。これに70ユーロ(約1万円)払ってあったのが全部オンライン参加になってしまったのよ。ヨガの先生も予期してなかった事態だし、仕方ない事なんだけど、ゲボーツフォーバライトングスコースもずっとZoomで、何をするにも画面ばかりで目が疲れたわ」

カイ「コース系は全部キャンセルやオンラインへの切り替えになったもんね」

オンラインのヨガならYouTubeに無料のものがいくらでもある……。お金を払うのが悲しくなるのも分かる。

コロナ禍での妊娠、出産。ドイツの妊婦さんはどうやって過ごした?【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像2

妊婦アクティビティができないなら、森の中へ。リザはキノコ取りの名人です!

そんな中、救いだったのは会社でホームオフィスが始まったことだとリザは言います。

ドイツでは感染拡大防止のため、第一次ロックダウンの際に各企業一斉にリモートワークに切り替えを進めました。
カイもリザも、リモートワークによって労働時間がより自由になり、通勤や出社準備に費やしていた時間を自分たちのために使う事ができるようになりました。
そうして増えた時間で、お互いのことをいたわるようにしたり、少しでも不安に思うことを話すようにしたそうです。 そして何より、同僚と会うわずらわしさがなくなったという点が、リザのストレスを幾分か和らげてくれたのだそうです。

リザ「インターネット万歳。インターネットが無かったらコロナ禍で生き延びられない。ネトフリもアマプラ(ネットフリックス、アマゾンプライム:いずれも動画配信サービス)も“様様”よ」

カイ「週末にピザを焼いて食べたり、自炊のレベル上げをしてみたり、そういう小さな幸せで生き繋いだ感じ」

リザとカイは、買い物と通院以外、他人との接触を完全に絶っていました。友達とも、家族とも会わない、異常な状況。
これが、ワーキングスタイルを大きく変え、図らずもふたりには快適さをもたらしていたのでした。(後編へと続く)

コロナ禍での妊娠、出産。ドイツの妊婦さんはどうやって過ごした?【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像3

冬も森へ。外へ出るのが億劫な日こそ、意識して外に出るようにしていたのですって

後編では、ドイツの育休事情や妊娠・出産に対するお金のはなしをご紹介します。お楽しみに!

コロナ禍での妊娠、出産。ドイツの妊婦さんはどうやって過ごした?【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像4今回の海外ママは
中原さん
結婚を機に夫の故郷ドイツに来て10年目。趣味はレストラン巡り、庭いじり、手芸などなど。掃除と片付けも趣味になったらいいのになあ……といつも思っています。6歳と4歳の娘たちがいます。#中原ドイツ子育て Instagram @s_vn
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