2020年9月21日

自転車にやさしい街ドイツの子ども乗せ自転車をご紹介【教えて!世界の子育て~ドイツ~】

海外ではどんな子育てをしているの? 日本から離れて子育てをするママたちに、海外でのようすを教えてもらう「教えて! 世界の子育て」。
場所や文化が違うと、子育ては違うのでしょうか。日本での子育てや生活と同じことや違うこと、各国からリアルな声を伝えてもらいます。

ドイツ在住の中原さんの娘さんたち、5歳のリンゼちゃんと3歳のおいもちゃんが、すいすいと自転車を乗りこなすまでを伝えてくれた前回に続いて、今回はパパとママの自転車事情を教えてくれます。
日本とは道路事情が違うドイツでは、日本ではあまり目にしないようなさまざまなタイプの子ども乗せ自転車が走っているようですよ!

パパとママの自転車
子どもの送り迎えスタイル

柔らかくなった日差しの中、ペダルに足を掛けグッと踏み込むと、涼しい空気が腕や頬の上をさーっと走り抜ける。その後の風に舞う色づいた落ち葉も軽やかで良い。ああ、これぞ秋……。すべての自転車乗りにとってのお楽しみの季節がやって参りました!
と、ひとしきり秋にうっとりしたところで、今回はパパとママの自転車についてご紹介していきたいと思います。

前回はドイツの子どもたちがケリケリと自転車で保育園に通っている様子をお伝えしましたが、そうして通う以外にも、親がせっせとこぐ自転車で登園する子たちもいます。
そのスタイルがさまざまでおもしろいんですよ。

まず我が家はこのタイプ。
Fahrradanhänger(ファーラッドアンヘンガー)、自転車で牽引するトレーラーです! これが便利で便利で……私はこれにほんとうに助けてもらいました。

自転車にやさしい街ドイツの子ども乗せ自転車をご紹介【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像1

子どもが赤ちゃんのうちは、体に合わせたベビーシートを中に取り付けて安全に走れる上、最大50kg程度までは積載できるので、子どもが成長中も長く乗せることができます。また、背面には荷物もたくさん載るので、買い物や遊び道具、バランスバイクも載せることができ大助かりです。

さらに、トレーラー部分は自転車から外せばベビーカーやバギーとして使うことができ、畳めば車に載せることができます。友人一家はこのトレーラーをベビーカーとしてニュージーランド旅行に持っていき、あちらで自転車をレンタルして旅行をしていました。コロナ禍の今となっては夢のような話ですが……。

トレーラーは普通のベビーカーと比べても車輪がかなり大きいので、走行中の衝撃や悪路に強いのも特徴。夕暮れどきにはトレーラーを押しながらジョギングしている人もよく見かけます。マラソン大会ではこのトレーラーに子どもを乗せて一緒に参加している人も。途中雨が降ってきてもスクリーンを下ろせば子どもは濡れません!
中をのぞかせてもらうと子どもは中でスヤスヤと寝ていたりして、親はエクササイズ、子どもはお昼寝で、一石二鳥だなぁと思ったものです。

牽引トレーラーにはさまざまなタイプがあり、犬専用(子ども用よりもフラットなスペースが広く天井が高い、リードを繋ぐ金具やドリンクホルダーがついている)や、お買い物用、ガーデン用具などの多目的なクラッシックタイプ(汚れても簡単に洗えるようになっている)、子どもの自転車やトライク(三輪車)を子どもを乗せたまま直に連結できるもの、などがあります。

あこがれの前箱チャリ

そしてこちら。「なにこれ前に箱が……箱がついとる! 前箱チャリや!」というのが、私が初めて見た時の衝撃! ここ5年ほどでポピュラーになってきたLastenfahrrad(ラステンファーラッド)です。

自転車にやさしい街ドイツの子ども乗せ自転車をご紹介【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像2

勝手に前箱チャリと呼んでいます……正しい日本語の名称はあるのでしょうか……

これめっちゃオシャレじゃないですか! 太めのメタルフレーム、そこに色んな素材の箱が選べて、色や形も自分仕様にカスタムできます。
積載量が大きいのも魅力です。大型のものは100~150kg載せられますから、子どもが相当大きくなっても乗ることができ、荷物もたっぷり載るので活動の幅が広がります。

そしてこの重量をこいでいくには、もちろん電動アシストがついています。坂道も楽々です。オシャレ、かっこいい、便利、人も物もたっぷり入る!
まあしかし、何にでも一長一短はあるもので、前箱チャリはかなり大型。原付よりもはるかに大きいです。家に格納するには大きなガレージがないと無理なんですよね……。これに乗るお父さん方に聞いたところ、子どもを送りとどけたあとに職場に行こうにも、駐輪場に前箱チャリを停めるスペースを確保するのに苦労するのだとか。

そして私の個人的な問題点は、なにこれめっちゃええやんと思ってまたがろうとしたら、足が届きませんでした。ショック! 牽引トレーラーや前箱チャリは、自転車先進国であるオランダから来ており、その機能や規格も大柄なオランダの人たちに合っているのでしょう。

トレーラーも前箱チャリも、乗っている子どもたちが快適に乗れているのが目に見えてわかり、子どもたち自身これに乗るのが大好きなのです。悪天候や虫などから体を守ることができるという点も良いなと思っています。
母ちゃんがヒーヒー言いながら立ちこぎで坂道を登っている後ろで、のんびり鼻唄をうたいながら絵本を読んでいたり、キュウリをぼりぼりかじっていたりと、まったく私が乗りたい! うらやましい!

話は少し変わりますが、以前は冬だとソリで園に通って来る子ばかりで、駐輪場にはさまざまな形と色のソリがずらりと置かれている光景が見られました。道が凍結すると自転車で走ることはできませんから、子どもたちはソリを引っ張って雪道の中を楽しく通園・通学していたのです。
温暖化が進み、雪がほとんど積もらなくなってソリが姿を消した今は、代わりに自転車が冬の駐輪場を賑わせています。

暮らしに欠かせない自転車

私がドイツに住み始めて、買い物という買い物の中でも一番最初に買った(というか買わされた)のが自転車でした。
自転車屋さんのものはどれもサドルの位置が高すぎて乗れず(一番低くても胸まであるんですよ!)探して探して、結局、子ども用の自転車を買ったのです。

「よかった、自転車買えて。これがないとみんなでピクニックにいけないだろう?」と夫に言われ、なんだそりゃピクニックって(笑)と当時はおもしろく思ったものでした。しかし、それは決して誇張でも冗談でもなく、多くの人が自転車に乗って頻繁にお出かけをするのです。

それは、街はずれにお弁当を持っていくものから、自転車を走らせて都市から都市を走るツアーだったり、果ては自転車で近隣国まで行ったりと規模はさまざま。

自動車生産国としても有名なドイツですが二酸化炭素の削減、そして大都市の大気汚染対策に、移動手段を自転車に切り替える人が増えました。そして自転車が安全に走るための街づくりが、ここ15年ほどでぐっと進んでいます。
走りやすくて、環境に優しく、維持費も安い。そして健康維持のためにも良い。そんな自転車に乗らない手はありません!

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街中ではさまざまなシーンで自転車が活躍しています。
たとえば、街中の郵便屋さんは自転車です! 黄色い自転車に黄色い大きな鞄のようなものをくくりつけて、雪でも日照りでも街中を走っています。ほかには街のブティックの通販デリバリー、ピザ屋さん、ケバブ屋さんの配達員も自転車で私たちに届けてくれます。日本でもウーバーイーツの配達員さんたちは自転車ですね!

自転車にやさしい街ドイツの子ども乗せ自転車をご紹介【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像4

通勤で自転車を使っている人も増えています。私の夫もホームオフィスになる前は、時折、通勤で35キロの道のりを自転車で通っていました。
ちょっと、危険じゃない? そんな長距離乗ってたら事故に遭う確率も上がるでしょうに! と心配したものですが、夫曰く、むしろ車よりも安全で快適なのだそう。そうやって毎日を安心して走れるのは、自転車のためだけの道路や交通ルールがあるからです。

自転車ルールが
みんなの快適を守る

まず、街には一方通行の自転車用レーンがあります。
歩行者はここを歩いていてはいけません。車は右左折などで一瞬横切ることはできますが、レーン上を走行したり停車することもできません。歩道と自転車用レーンをふさぐ形で駐車してある車には、すぐに駐車禁止のペナルティが。なぜならば自転車のスムーズな走行と安全を妨げるから!
一方通行なので対向車に肝を冷やすことなく走ることができる自転車用レーンは、とにかく自転車にとてもやさしいレーンなのです。

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自転車用レーンは色分けされている!

 

自転車優先道路もあります。
車の走行は可能ですが、文字通りここでは自転車が車よりも優先です。車は自転車を追い越すことができません。あおるのももちろん禁止です。
速く走りたい車は他の道を通れば良い、という考えなのがユニーク! どうしてもここを走行したい車は自転車のスピードでゆったりと、にこやかに、自転車の後ろを走るのです。

この自転車用レーンと自転車優先道路を初めて走った時は感動しました。無駄にブレーキをかけることもなく快適な走行スピードが保てるのですから! 自転車に乗り始めたばかりの子どもは歩道を走り、ある程度しっかりこげ、交通ルールが守れるようになってから自転車用レーンにデビューしていきます。

右左折する際には腕を横に大きくのばし、後続車にハンドサインを出します。車がウインカーを出してから曲がるのと同じですね。
また、自転車の義務としては夜間点灯があります。無灯火で走っているところを警察に見つかると整備不良として罰金ですし、何より危険です! 無灯火の自転車は、車の右左折で巻き込み事故にあう大きな原因となります。
子どもの自転車にももちろんライトは必須ですし、ヘルメットもライトがピカピカつくものが多いです。

自転車にやさしい街ドイツの子ども乗せ自転車をご紹介【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像6

自転車優先道路。ここでは車は自転車を追い越してはならないのです!

電車や路面電車に自転車を乗せて通勤したり、旅をしたりすることができるのも便利な点です。都市にもよりますが、普通電車には、まず必ずといって良いほど自転車を載せられるバリアフリー車両があり(大型ベビーカー、双子用ベビーカー、牽引トレーラーなどもここに載せることができる)、隣町への通勤も、電車や路面電車に自転車を乗せて、移動手段を組み合わせることができます。

ちょっとしたトラブルには自分で対応できるように店先に工具をぶら下げてくれている自転車屋さんもあります。新型コロナウイルスで街がロックダウンした時も自転車屋さんは閉まらなかったほど、ドイツでは自転車が暮らしの中で欠かせないものになっているのです。

新型コロナウイルスの流行で、ドイツでは電車移動の際マスクが義務付けられている今、電車で遠出する家族は減っています。その反面、近場でレジャーやピクニックをするなど、自転車で出かける家族は増えています。
これから過ごしやすい秋がやって来て子どもたちも厚着になり、ころんでも痛くない時期。自転車の練習もよりしやすくなることでしょう。ソーシャルディスタンスを保てる活動として、そして地球に優しい乗り物として、自転車はますますドイツの暮らしに欠かせないものになっていくのではないでしょうか。

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自転車にやさしい街ドイツの子ども乗せ自転車をご紹介【教えて!世界の子育て~ドイツ~】の画像8今回の海外ママは
中原さん
結婚を機に夫の故郷ドイツに来て9年目。趣味はレストラン巡り、庭いじり、手芸などなど。掃除と片付けも趣味になったらいいのになあ……といつも思っています。5歳と3歳の娘たちがいます。#中原ドイツ子育て Instagram @s_vn
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