2019年9月3日

コップの水を何度もひっくり返す子ども。モンテッソーリ的対処は?【ノンちゃん先生の「おうちでモンテッソーリ」・7】

モンテッソーリ教育を日米の保育現場で実践してきた小原希美さん(ノンちゃん先生)が、子育てに役立つモンテッソーリ的考え方をわかりやすくご紹介。子どもとの向き合い方がぐっとラクになります♪

一日に10回以上コップの水をひっくり返します。

コップの水を何度もひっくり返す子ども。モンテッソーリ的対処は?【ノンちゃん先生の「おうちでモンテッソーリ」・7】の画像1

「お水ちょうだい!」と言われてコップに注いだ次の瞬間……ジャーっと全部ひっくり返される。これって、子育てあるあるですよね。皆さんはこのような子どもの行動を見たときに、どう考えて、どんな反応をしますか? 「いたずらばっかりして!」と思いますか? それともお掃除が大変でうんざり? は〜い、では深呼吸。リラックスしてみて。

まずは、どうしてそのような行動に至ったのか、よく観察してみましょう。日常にありふれたひとつひとつの出来事も、頭を柔らかくして観察してみればいろいろな要因が考えられます。例えば、お水をひっくり返す様子を観察すると、次のような仮説が立てられませんか?

1. コップを自分で持って水を注ぎたい
2. 水がひっくり返って、べちゃべちゃになるその感覚を味わっている(楽しんでいる)
3. 本当にふざけている
4. それ以外

さて、お子さんは上記のうちどれに当てはまるでしょうか? 理由が何となく見えてきたら、次はその対処方法を考えてみましょう。

<対処方法>

理由1「子どもがコップを自分で持って水を注ぎたい」の場合

これは、子どもが生まれながらにして持っている自己教育力(成長に必要な活動をみずから選んで行う力)によって、その子にとって今その行為が「必要」と感じている可能性があります。特にコップをひっくり返す動きは、手首を返す動きなので、手首をたくさん動かしたい=注ぎたい のではないかと予想できます。

とはいえ、まだ上手く身体が使えない時期のお子さんは、結果としてお水をこぼしてしまうことに。本来は思う存分注がせてあげたいところですが、一日に何度も床にこぼれた水を拭くのは大変ですよね。 そういうときは、普段の遊びの中に注げる活動を取り入れてみてください。

ポイントは子どもに合ったサイズを用意してあげること。まずは、タンブラーのような取手のついていないカップから、徐々にハンドルのついたミルクポットや計量カップなどを用意してあげるとよいでしょう。中に入れるものは、最初は水ではなく固形物から始めます。固形物は大きいものから始めて、徐々に小さいものへと移行していきます。

私が指導している「はじめの親子教室」では、最初は小さなポンポンからスタートして、その子の反応を見ながら固さや大きさを調整し、後半では小さなレンズ豆を使って注ぐ活動をしています。これらの固形物を上手に移し替えられるようになったら、最終形として液体(お水)もこぼさずに注げるようになっていきます。

理由2「水がひっくり返って、べちゃべちゃになるその感覚を味わっている(楽しんでいる)」の場合

0〜3歳の間は、五感を通して様々な感覚刺激の情報を吸収している時期でもあります。そして、その集めた情報を、「これは熱い、冷たい」「甘い、酸っぱい」というように概念として整理するのが3歳以降です。理由2の場合、手の触覚を通して「水」というものを触って確かめ、情報を集めていることが考えられます。

だとすれば、お風呂のような濡れてもよい場所で思いきり水の感覚を楽しませてあげたり、お外で水遊びして水に触れる機会を作ってあげると、子どもの欲求が満たされ、次の欲求へと移行していくかと思います。

理由3「本当にふざけている」の場合

子どもの様子をよく観察していると、「あ、悪い顔してる〜」と思う場面に出くわすことがあるのではないでしょうか。 やっちゃいけないと分かっていることを敢えてやってみて、大人の反応を確かめていることがあると思います。子どもはこのような行動を通して、どこまでがやっていいことで、どこからがダメなことかを親の反応を見ながら学習していきます。ですから、社会のルールから見て明らかにいけないと思われることは、きちんと教えてあげることが必要です。

その場合も、大きな声を出したり、感情的になったりする必要は一つもありませんが、一貫性が必要です。あるときはOKで、あるときはダメ。はたまた、お父さんはOKで、お母さんはダメでは、子どもが混乱する原因となります。夫婦間でしっかりと話し合って、家族のルールを決めておくことが大切です。

それ以外の理由の場合

最後に、理由4のようにそれ以外の理由でお水をひっくり返している場合があると思います。むしろそれ以外の理由の方が多いかもしれません。そのときはまずは再び、子どもをじっくり観察してみてください。そして、ご自身が思う「こうしてみたら上手くいくかも」という方法を試してみましょう。

結果、上手く解決できないかもしれませんが、それでいいんです。今日この方法がダメなら明日はまた別の方法、というふうにいろいろやってみましょう。繰り返しトライしてお子さんの反応を観察しているうちに、だんだんと上手くいくパターンを見つけられるようになります。

今や子育ての情報は溢れていますが、子どもの反応は百人百様。教科書通りじゃなかったり、他の子と違っていて当たり前ですから、比較も心配もせず目の前のお子さんとじっくり向き合ってくださいね。

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撮影/花田梢

小原希美(おばら・のぞみ)
幼稚園教諭としてモンテッソーリ教育と出会い、専門知識を深めるために単身渡米。創設者マリア・モンテッソーリの流れを汲む本場の専門教育を受け、教師資格を取得。その後も米国内にて3年間乳幼児施設に勤務し、経験を積む。15年間の教諭・保育士経験で延べ2,000名以上の子どもたちと関わる。 恵比寿にある『はじめの親子教室』ではモンテッソーリ教育をご家庭でも手軽に取り入れられるよう工夫した独自メソッドにて日々指導にあたっている。
はじめの親子教室 https://hajimenooyako.com/
Instagram @hajimenooyako 

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