2019年7月2日

子どもの成長のチャンスを奪う、ママの「御用聞き」的な行動って?【ノンちゃん先生の「おうちでモンテッソーリ」・3】

モンテッソーリ教育を日米の保育現場で実践してきた小原希美さん(ノンちゃん先生)が、子育てに役立つモンテッソーリ的考え方をわかりやすくご紹介。子どもとの向き合い方がぐっとラクになります♪

「ママがいい!」ばっかり。どうしたらいい?

お着替え、お風呂、寝かしつけ、なんでもかんでも「ママがいい!」と言い切るわが子。可愛いけれど、ママだって辛いときもある! ママ指名が始まっちゃうとパパも困って、一緒に子育てしようにもなかなか上手くいかず……結局いつも全部ひとりでやることになって寝不足のママはいませんか? まずはリラックス〜!

ちょっと振り返ってみて。いつも子どもの行動を“肩代わり”していませんか?

子どもの成長のチャンスを奪う、「御用聞き」的な行動って?【ノンちゃん先生の「おうちでモンテッソーリ」・3】の画像1

そんな私も、新人の頃は何でも肩代わりしてあげちゃう先生でした。子どもたちが可愛くて可愛くて、無意識でそうしていたんです。お洋服のボタンを留めてあげたり、こぼれた水を拭いてあげたり。そうやって肩代わりする私の周りはいつも子どもたちでいっぱいでした。もしかして、私って子どもたちから人気がある……? でも、子どもがたくさん集まる先生=子どもを成長させられる先生ではないことを後に痛感させられるのです。

横浜にあるモンテッソーリ園で働いていた頃、「子どもの発達の支援者になっても、御用聞きとなるな」という教えがあって、なんでも肩代わりをしてしまう先生は子どもが成長するチャンスを奪い、自立から遠ざけてしまう存在とされていました。つまり、子どもが列をなして私のところに来ていたのは、私が何でもやってくれるので“御用を聞いてもらうために”来ていただけだったのです! そのうえ、私自身がそうやって子どもから成長のチャンスを奪っていたなんて……。それに気づいたときにはショックでした。

そこからは、完全に自分の忍耐力との闘いです。今まで無意識に出ていた手を意識して抑えるのは、想像以上に難しく辛かったのを覚えています。そこで私は「あ〜忙しい、忙しい」と言って自分の仕事(たとえば教具の棚の整理整頓をしたり、活動の準備をするなど)で忙しいふりをして、子どもたちがなるべく自分で解決しなくてはいけないような状況を作り、実はこっそりと子どもたちのようすを観察することにしました。

肩代わりすることが「先生の所へ行けばやってもらえる」というマイナスの習慣に

すると、あんなに長蛇の列になっていた子どもたちがいなくなり、子ども自身で工夫したり、周りの友達に助けてもらいながらやり始めたのです。それまではすぐに手を出しすぎていて気づけなかったのですが、実は子ども自身で考えて何とか解決できることは意外とたくさんありました。つまり、子どもが自分で考えて、解決するためのアイディアが内側から湧き上がってくる前に、「先生の所へ行けばやってもらえる」というマイナスの習慣を作ってしまっていたのです。

これに気づいてからは、まずは子どものようすをじっくり観察することを意識するようになりました。そして、すぐに全てを肩代わりしてあげるのではなく、子ども自身で考えられる環境を作って見守り、「これ以上やらせたら嫌になってしまうかも」というときに、できない部分だけをそっと手伝うというスタイルに変更しました。大人(私)の行動を変えたことで、子どものできることがどんどん増え、心も自立に向かうことを実感した忘れられない経験です。

もちろん、ママを求めてくる状況にはいろいろな要因が考えられますから、ここに挙げた例はひとつの方法に過ぎません。でも、気づけばいつも子どもが求めてくるなぁ〜と感じたそこのママ。試してみる価値はあると思いますよ! 御用聞きになっていないか意識しながら、子どものできない部分だけをちょっと手伝ってあげてみてくださいね。

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撮影/花田梢

小原希美(おばら・のぞみ)
幼稚園教諭としてモンテッソーリ教育と出会い、専門知識を深めるために単身渡米。創設者マリア・モンテッソーリの流れを汲む本場の専門教育を受け、教師資格を取得。その後も米国内にて3年間乳幼児施設に勤務し、経験を積む。15年間の教諭・保育士経験で延べ2,000名以上の子どもたちと関わる。 恵比寿にある『はじめの親子教室』ではモンテッソーリ教育をご家庭でも手軽に取り入れられるよう工夫した独自メソッドにて日々指導にあたっている。
はじめの親子教室 https://hajimenooyako.com/
Instagram @hajimenooyako 

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