2020年11月5日

妊婦に起きやすい尿もれ対策【妊娠中のトラブルシューティング・8】


妊娠するとカラダのあちこちが痛かったり、お腹が張ったり……。マイナートラブルが絶えないものの、その対処法がわからない人も多いはず。そこで、産前産後のママの身体を整える助産師の是枝貴子さんが、妊婦の痛みや辛い症状のメカニズムとその対処法をレクチャーします。Vol.8はお腹が大きくなると特に起きやすい尿もれについて解説します。
モデル/福本マオ 撮影/志田三穂子 取材・文/野々山幸(TAPE) イラスト/原田晃 スタジオ/マミースタジオ

なぜ妊婦は尿もれしやすいの?

最近、テレビなどで尿もれパッドのCMを目にする機会が多いと思いませんか? 実はそれだけ多くの人が「尿もれ」を実感しているのです。特に、妊娠中は多くの妊婦さんが悩まされることになります。
尿もれは尿失禁ともいって、自分の意思とは関係なく尿がもれてしまうこと。尿失禁にはいくつかの種類がありますが、産前産後の女性に特に多いのが、お腹に力がかかったときに尿がもれてしまう「腹圧性尿失禁」です。
骨盤底筋という言葉を聞いたことがありますか? 骨盤底筋は骨盤の底にあり、臓器を支えているハンモック状の筋肉群のことを言います。膀胱や子宮、腸を下支えしてくれていて、尿道の出口が勝手に開かないように無意識のうちに調整もしているのが骨盤底筋です。赤ちゃんが入っている子宮は膀胱に乗っかるような位置関係になるため、子宮の重みで膀胱に圧がかかります。その圧力が尿道の出口を締めている力に勝ってしまうため、尿もれがおこりやすいというわけです。重い荷物を持ち上げた時、咳やくしゃみ、笑ったときなどの一時的に腹圧がかかったときなども反射的に尿もれしてしまう場合もあります。

尿もれピンチ度をチェックしてみよう!

骨盤底筋群がゆるみがちかどうかのチェックをしてみましょう。

☐座っている時間が長い
☐お腹の位置が低いタイプ(Vol5参照)
☐経産婦である
☐便秘がちでトイレでいきむことが多い
☐いきむように排尿してしまう
☐呼吸が浅いタイプだ
☐座っているときに膝が開いてしまう
上記項目は、骨盤底筋の筋力低下を招く要因をまとめたもの。チェックがついた人ほど、尿もれ要注意ですので、早めの対策を!

マミーサロンを訪ねる妊婦さんたちの声
「重いものを持つと思いがけず尿が出る」
「2人目の妊娠で、上の子を抱っこしたときの尿もれが気になる」
「トイレでおしっこをしている最中に、止めにくくなる」
「くしゃみ、咳をすると、お腹に力を入れてもれないように気をつけても出てしまう」
「力を入れたり、意図しなくても漏れてしまうことがあり、外出時に尿もれパッドがないと心配」

尿もれの対策その①:いきむおしっこはNG

妊婦さんは頻尿でトイレの回数が増えてしまいがちです。急いでいたり、次のトイレまでの時間をあけたいと思ったりすると、しぼり出すように尿を出し切ろうとしてしまうことがあります。このように、いきむようなおしっこは避けましょう。あくまでも自然に尿意を感じて、力まずに出る範囲で終えてください。

尿もれの対策その②:骨盤底筋のトレーニング

 

尿もれを予防改善するには、尿道を締める筋肉を含む骨盤底筋群を意識的に収縮させるようなトレーニングが有効といわれています。仰向けになって肩幅ぐらいに足を開いて、膝は軽く曲げて立てます。骨盤高位(Vol.2参照)の体勢だとさらに効果的です。この姿勢のまま、骨盤底筋に意識を集中させます。

意識の向け方が難しいと思いますが、尿道、膣、肛門の3つをぎゅーっとの胃の方に引き上げるように力をいれてみましょう。最初は「5秒かけて力を入れて、10秒くらい脱力する」を繰り返して。慣れてきたら「10〜15秒かけて力を入れて。30秒くらい脱力する」と少し時間をかけられるとより効果的。力を入れて抜くまでが1セットで、10回ほど繰り返しましょう。
さらに慣れてきたら、同じ動作でリズミカルなテンポで「締める(キュッ)」「脱力(パッ)」を10回から20回繰り返してみましょう。

また、同じ動きを立った状態でもトライしてみましょう。
足を肩幅ぐらいに開いて、腰の高さぐらいの机や台に手をついて立ちます。上半身の重みを両手にかけて立つと、バランスが取りやすいはず。あとは仰向けで寝た状態と同じように、骨盤底筋に意識を集中させ「力を入れて、ふーっと抜く」を繰り返します。
寝た状態だと前の方の尿道、膣に意識を向けやすく、立った状態だとお尻の穴が締めやすいことが多いようです。寝た状態と立った状態で、どこに意識を集中させやすいかは人によってそれぞれ。自分がどの状態でどこに意識が向きやすいか、また、力のかけ方に違いがあると感じたら、どちらもやってみると、まんべんなくトレーニングができるのでおすすめです。
また、この骨盤底筋トレーニングは、いすに座った状態、三角座りで足を少し広げた体勢、壁にもたれて分娩スタイルなど、さまざまな姿勢でできます。ぜひいろいろなバリエーションで試してみましょう。

尿もれの対策その③:お腹の位置を整える

お腹の位置が低く前に出ているタイプの妊婦さん(Vol5参照)は、大きくなった子宮が膀胱に乗り上げてしまっているので、膀胱を圧迫して尿もれが起きやすくなります。お腹の位置をぐっと引き上げる(お腹の位置が高い妊婦 Vol5参照)と、膀胱への重みを緩和できて尿もれ対策に。お腹の位置を整えるだけで、尿もれを感じなくなる妊婦さんも多くいます。位置の補正には、さらしをおすすめしていますが、難しい場合は妊婦帯でもOK。
また、猫背になりがちな方も膀胱に圧を加えてしまうので、できるだけ骨盤を立てて姿勢よくしていることも大切です。

尿もれの対策その④:骨盤を支える

骨盤がゆるみすぎてしまうと、骨盤底筋が引き伸ばされやすくなります。骨盤底筋が伸びきらないようにするには、骨盤を広げすぎないこと。トコちゃんベルトなどのアイテムで、骨盤が広がりすぎないようにサポートしましょう。

ちなみに、破水と尿もれは感覚が似ていて、見分けにくいと言われています。以下の表のような違いがあるので、ぜひ参考にしてみて。

妊娠中であればある程度は仕方ないものの、ふとした瞬間に尿もれをすると、とても不快に感じるもの。少しでも気持ちよく、快適な妊娠生活を送るためにも、骨盤底筋のトレーニングなどで尿もれ対策をしておくと安心です。テレビを見ながら、本を読みながらなど、どんな体勢で行ってもいいトレーニングなので、ぜひすぐに毎日の生活に取り入れてみましょう。

是枝貴子
これえだたかこ/産前産後のママとベビーのためのヘルスケアサロン「マミーサロン」主宰。助産師、鍼灸師、フットケアトレーナーなど数多くの資格を持つ。産科勤務時代、ママのカラダを助けたいと一念発起し骨盤ケアを学ぶ。25000人以上の妊婦、産後ママをケア。現在月200名以上の施術に従事。
5歳の男の子、1歳の女の子のママ。仕事と子育てに追われる日々を綴るブログやインスタも人気。
マミーサロン http://www.mommy-salon.com
ブログ https://ameblo.jp/diary-mommysalon
Instagram https://www.instagram.com/mommy_salon_kore/?hl=ja

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