2023年1月13日

アナウンサー・赤江珠緒さんロングインタビュー。ラジオの生放送と家庭の両立、子育てへの思いを語る【後編】

TBSラジオ「たまむすび」の終了を報告された赤江珠緒さん。kodomoe本誌2022年8月号のロングインタビューでは、ラジオの生放送と家庭の両立や子育てについてお話されていました。今回、本誌のロングインタビューをkodomoe webでも全編公開。前編「『たまむすび』の仕事は受けなきゃいけないという直感がありました」に続く後編をお届けします。

あかえたまお/1975年兵庫県生まれ、高知県で育つ。大学卒業後、朝日放送に入社し、「スーパーモーニング」「モーニングバード!」(ともにテレビ朝日)の司会などを担当し、のちにフリーランスに。2012年から「たまむすび」(TBSラジオ)の月曜~木曜パーソナリティを務め、同番組は第51回ギャラクシー賞ラジオ部門優秀賞を受賞。2017年の出産に際して産休・育休を取得し、番組に復帰している。

アナウンサー・赤江珠緒さんロングインタビュー。ラジオの生放送と家庭の両立、子育てへの思いを語る【後編】の画像1

――復職して4年、いかがですか、これまでを振り返って。

もう、毎日があっという間で。ラジオで毎日帯番組をやると、4コマ漫画家さんの気持ちがわかるような、「明日のネタが何もない」という日もあるんですね。毎日ほぼ同じルーティンで子どもの世話をしてると、他人様に話すようなことなんて何ひとつない。「明日何を話すかなあ」と思ってるうちにもう明日が来るっていう。自転車操業の、追われるような毎日で。

なので、子どもにじっくり向き合ってるお母さんがうらやましいっていうか。とても面白いこの時期の子どもを、もうちょっと味わってたいなあ、みたいな。逆の立場のお母さんから「社会に触れたい、仕事をしたい」という話を聞くと、お互いにないものねだりかなとも思うんですけど。

――今の子育てを楽しまれているんですね。

もう、最っ高ですね。本当に子育ては面白いです。うん。

悩んだり落ち込んだり、「お手上げだーっ!」って叫ばないとやってられない、みたいなこともあったり。夫との家事の分担や家族関係とかも突き詰められたり、いろいろありますけど、なにより娘が、できなかったことも1か月後にはできるようになっていて。だから1か月前に悩んでたことが、1か月後にはなんでもなくなってたり。次々新しい課題が出てきて面白いですし。自分もものすごく変わっていってるんですよ。

生まれたときは「元気であればいい」とか思ってたのに、だんだんと「これができるようになってほしい」とか、「もうちょっとこうなってくれたら」とか、思っちゃうじゃないですか。でもそれって、「今のこの子に不満がある」というのと同義かもしれない。「まだ足りない」って言ってるような。だから、育てることによってゴールを、100を目指すという話じゃなくて、目の前の娘もどこの子どもも、生まれたときから、「存在としては100%なんだ」って常に思っておかないと。これから足していくんじゃなくて、「もうこの子100じゃん」って。そんなふうに、子どもがいなかったときとは違うものの見方になるのも含めて、すごく面白いですね。

それから、子どもがいることで、自分が住んでいる場所に知り合いが増えてきて。公園や園で知り合って、スーパーでも、「あ~、◯◯ちゃんのお母さん」って声をかけられて、子どものおかげでこの土地に根を張ってきているような感覚が。この歳でママのお友達ができるのも、すごく新鮮で楽しいですね。今一緒に同じく子育てをしている同志って感じで。「お風呂上がりって何を塗るの?」とか、「耳掃除って何歳くらいから?」とか聞いてみたり、LINEの便利技を教えてもらったり。すごく新鮮で「た~のしぃ~!」みたいな(笑)。子育ての大変さは当然あるんですけど、「楽しい」っていうのも正直な気持ちですね。

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写真は赤江さん提供。本誌より一部を抜粋しています。

「容赦のない大人」
でありたい

――現在の1日のスケジュールは、どのような流れですか?

7時前後に娘が起きた時間に一緒に起きて、朝ごはん作って。お弁当はパパが作って。9時前には幼稚園に送り出して、自分の朝ごはんを食べながらニュースとかを見て、掃除や家事を1時間ぐらい。ラジオの前番組でどんな流れの話をしてるかを聞いて、12時にはスタジオに入ります。

1時から3時半まで生放送で、4時くらいまでは残り仕事。そこから急いで帰って、4時半か5時にはお迎えに行って。その間はシッターさんに買い物とかをお願いしているので、私はそこから小1時間、公園に子どもを連れて行って遊んで。夏だと明るいので6時半か7時ぐらいまで友達と公園にいたり。それから帰ってごはんを食べて、8時過ぎにお風呂に入って、9時前に寝かしつけて。

――すごいですね、お仕事も園ママライフもしっかり並行して。

そうですね、そこはできるだけ味わいたいなって。私自身が変な外遊びをしてるような子だったので、子どもの友達も結構懐いてくれて。「たまごちゃん、いっしょにあそぼ」って、「たまごちゃん」って呼ばれてるんですけど(笑)、こっちも外遊びが好きなのでいい気晴らしになって、ワ~ッて遊んでます。

自分自身が子どもの頃どんな遊びをしていたか、今も鮮明に思い出せるんです。ママ友には「え、そんな遊び、してた?」みたいに不思議がられるんですけど、「してたじゃーん、これにこうやって、泥を塗ったりして」ってやってみせると、「え~っ」とか言われて(笑)。「雨だから公園で遊べないねえ」って言われても、「えー、雨だったら、この水たまりにこうやって葉っぱを入れて、天ぷらだよとか、やってたじゃん」って。やっぱり「え~っ」って言われるんですけどね(笑)。

――お子さんにとって、どんな親でありたいと思われますか。

 「容赦のない親」でありたいんですよね。なんか怖く聞こえますけど、私自身は容赦ない大人、子どもを子ども扱いしない大人が好きで。うちの親もそうだったんですよ。ごはん中もニュースについて「どう思う?」「こう思う」「ああ思う」と延々しゃべってたり。

高知にいたときも、親の希望で週末ごとに八十八箇所巡りをして。歩いてじゃないですよ、車で、今日は一番寺、二番寺と行って、近くで海水浴して帰ってくるとか。親が行きたいから行くんだ、みたいな。そのかわり、親自身がものすごく楽しんでたので、こっちもすごい楽しいものなんだと思って、お寺や歴史が好きになりましたし。

今でも親といい年して大ゲンカみたいなことがあるんですけど、昔から私のことを一人の人間として意見を聞いて、「でも俺はこう思う」とか「お母さんはこう思う」と、得心がいくまでお互いに言葉を尽くす。親としゃべりたくない時期にも、なんか容赦なくしゃべってくる、そういうところはありましたねえ。その影響は大きいですね。

――娘さんは、ママのお仕事をご存知ですか。

あまりちゃんと話したことはないんですけど、「ラジオ」っていう言葉は覚えていて、時々「たまむすび」とか言ってるときもあるんですよね。

先日、友達家族と初めてキッザニアに行ったら、ラジオのブースもあって。「ディレクターと音効さんとパーソナリティと、4人に分かれます。しゃべりたい人ふたり、手挙げてください」って言われても、全然挙げないんですよ。挙げないんかいって(笑)。「お母さんそういう仕事してる、そういう仕事」って言っても、「やらない」みたいな感じで。音効さん希望だったんですけど、じゃんけんに負けてディレクターになって、ぶーたれて。「この仕事何?」みたいな感じで、「いや、ディレクターがラジオのリーダーで、この人がキュー出したらみんなしゃべるから」みたいなことを言っても、全然刺さってなかったです。ピザのお店とかの方が、断然喜んでました(笑)。

そう、私はすごく食が細い子どもだったんですが、娘は違って、食にすごい興味がある子なんです。とにかく食いしん坊で、ストップって言うまで食べますし。2歳くらいのときに「大きくなったらどんなことしたい?」と聞いたら、「はしでうどんをたべたい」って。はしも練習用をすっ飛ばして、すぐ使えるようになりましたし。

ままごととか台所のお手伝いが好きで、包丁で切ったり、卵割ったり、自分のお弁当箱のカトラリーとか、洗い物もしてますね。で、お弁当も1回も残してきたことないです。大したもの入れてないんですけど。

――子どもが連れてくる新しい世界って、ありますよね。

ありますねえ。私も台所にはあまり興味なかったんですけど、娘が「おやつ作りたい」とか言うと、「しょうがない、作るか」って感じで(笑)、ちょっと調べて、簡単にできそうなものをやってみたりとか。今まで全然やってこなかったことを、娘のおかげでちょっとやるようになりました。

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子どもを育てるって
とんでもない偉業

――最近、お子さんと楽しんでいる絵本はありますか。

やっぱり絵本でも食べものが好きですね、『となりのおやつ』(DJみそしるとMCごはん/作 神宮館)や『あれこれ たまご』(とりやまみゆき/文 中の滋/絵 福音館書店)、『いつつごうさぎのきっさてん』(まつおりかこ/作 岩崎書店)とか。

娘の好きなものと私の選んだものと、いろんな絵本を毎日ちょっとずつ読み聞かせてます。「バムとケロ」シリーズ(島田ゆか/作 文溪堂)、『からすのパンやさん』(かこさとし/作・絵 偕成社)、「ノラネコぐんだん」シリーズ(工藤ノリコ/作 白泉社)もよく読みますし、『つまんない つまんない』(ヨシタケシンスケ/作 白泉社)とか。『ヘアーサロンチョッキン』(tupera tupera/作 小学館)もいいですよね。子どもと一緒に紙を切って遊べるので、楽しいです。

――今回kodomoe(2022年8月号)の巻頭特集は「絵本を旅する」ですが、ファンタジーや冒険物語でお好きな作品はありますか。

児童書ですけど、「クレヨン王国」シリーズ(福永令三/作 講談社)がすごく好きです。中でも『クレヨン王国のパトロール隊長』が、すっごく上質なファンタジーなんですよ。もっと読み継がれてほしいし、スタジオジブリで映画にしてくれないかな、と勝手に思ってるくらい。『クレヨン王国の白いなぎさ』も、せつない部分もありつつ、とても考えつかないような世界に連れてってくれますし、今読んでもやっぱり面白いです。『クレヨン王国月のたまご』も壮大なお話で、お薦めですねえ。児童書では他に、『あたまをつかった小さなおばあさん』(ホープ・ニューウェル/作 松岡享子/訳 山脇百合子/画 福音館書店)もすごく好きでした。

――最後に、同じ子育て中のママパパたちに、ぜひメッセージを。

子どもを育てる、一人の人間を世に送り出すって、とんでもない偉業ですよね。それでいてあっという間に過ぎてしまうところもあって、今、一瞬一瞬がかけがえのない時間を過ごしてるんだろうなあって思います。なので存分に、味わえるところは味わおうではありませんか(笑)。

私は出産が遅かったから余計に、本当にかけがえがないっていうか。育児日記も1年目は毎日書いて、今は毎日は無理ですが、その時々の面白いエピソードをちょこちょこっとメモするのを続けてます。2歳何か月頃に「テレビ」のことを「てべり」と言っている、とか。いろいろな思い出をなるべく書き留めておきたいなって。

やっぱり遅かっただけに、味わい深くなってるんでしょうね。うん。それは高齢出産のメリットかもしれないですね。本当にもっと若いときに産んでおけば、一緒に走るにしてもこんなに疲れないのに、とかもあるんですけど。デメリットだけじゃなく、メリットもあったのかもしれないですね。

INFORMATION

アナウンサー・赤江珠緒さんロングインタビュー。ラジオの生放送と家庭の両立、子育てへの思いを語る【後編】の画像4『たまむすび』
毎週月曜~金曜13:00~15:30 TBSラジオ
月曜~木曜は赤江さんが日替わりパートナーと出演中。インタビュー中にもあるセミのエピソードなど、赤裸々トークを繰り広げます。

インタビュー/原 陽子 撮影/キッチンミノル ヘアメイク/上田友子(kodomoe2022年8月号掲載)

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