2022年7月25日

アナウンサー・赤江珠緒さんロングインタビュー。「たまむすび」の仕事は受けなきゃいけないという直感がありました【前編】

2012年からTBSラジオ「たまむすび」でパーソナリティを務める赤江珠緒さん。kodomoe webでは本誌の貴重なインタビューを前後編にわけて全編公開します。
前編では、ラジオの生放送と家庭を両立してきた10年間の歩み、更にやんちゃだった幼少期など、赤江さんワールド全開のお話を伺いました。

あかえたまお/1975年兵庫県生まれ、高知県で育つ。大学卒業後、朝日放送に入社し、「スーパーモーニング」「モーニングバード!」(ともにテレビ朝日)の司会などを担当し、のちにフリーランスに。2012年から「たまむすび」(TBSラジオ)の月曜~木曜パーソナリティを務め、同番組は第51回ギャラクシー賞ラジオ部門優秀賞を受賞。2017年の出産に際して産休・育休を取得し、番組に復帰している。

アナウンサー・赤江珠緒さんロングインタビュー。産前のように仕事も完璧にと気負っていたら、「言うほど できてなかったよ?」って(笑)【最新号からちょっと見せ】の画像1

好奇心いっぱいの
子ども時代

TBSラジオの平日午後のトーク&バラエティ番組「たまむすび」。月曜から木曜までパーソナリティを務めるのは、赤江珠緒さん。カンニング竹山さんや山里亮太さんら各曜日のパートナーと、身近な話題で笑いにあふれたトークを交わす。明るく飾らない天衣無縫な人柄は、時に愛情を込めて「ポンコツ」と称され、全国のリスナーの心をしっかりつかみ、番組は今春で10周年を迎えた。

――小さい頃はどんなお子さんでしたか。3人姉弟の真ん中だそうですね。

はい、姉と私と弟でそれぞれ3歳差、私が早生まれなので2学年、4学年違いでした。毎日遊び相手に困らない、楽しい子ども時代でしたね。生まれは関西ですが、2歳から8歳頃まで高知に住んでました。ちょっと行くと山や海があって、家族みんなで山に行ってつくしを採ったりたけのこを掘ったり、海で大量にあさりを採ったり。
銀行員だったうちの父親が高知の支店にいたときに、支店長宅が単身者が住むには広すぎると、支店長も他の方も住まずに、若手社員だった父と我々家族が住むことになったんです。すごく大きくて庭も広い家で、私は塀に登ってはセミを捕まえてパンツに入れて、裸足で芝を走り回っているような野生児でしたね。虫が大好きで、女郎グモやトカゲやバッタ、全部庭で手づかみで捕って。姉と弟は特に虫好きでもなかったのに、なぜか私だけ狩猟本能があって、今でも虫はすぐ触りたくなります。

小学生のときは、本当に「いらんことしい」(余計なことをする人)で。飼育委員になってうさぎを廊下に放してレースをしたり、理科準備室で隠れておばけ屋敷ごっことか。だからいまだに「これはやらないだろう」ってことをやる、「柵があるから大丈夫」でなく、柵があっても越えるのが、子どもという生き物だと思ってます。自分がそうだったから。

そう、体育館倉庫で遊びたくて体育係になって(笑)。放課後にその体育館倉庫から「この大玉でサッカーやろうよ」みたいに全部出してきて、みんなでワ~ッて遊んで。体育館の舞台に上がったら、幕の後ろに黒電話があって。「なんだろうね?」「かけてみよう!」とか言って受話器を上げたら、なぜかすぐにつながって、「つながるねー!」「おばけ電話~」なんて言ってたら、それ単に職員室につながってるだけで。怖~い先生が来て、1か月ぐらい倉庫の掃除をさせられました。

――すごい、ワイルドな(笑)。

本当に。そうそう、あと、印刷室。印刷室に入りたくて新聞係みたいなのになって。あるとき職員室に行ったら、当時まだ目新しかったコピー機があったんですよ。「うわっ、コピー機だ!」って、先生がちょっと席を外したときに、友達と魚拓みたいに手や顔をコピーしてたら、なんか詰まっちゃって。「え~っ!?」「なんだ、これが詰まってるなあ」とか言って引っ張ったら、油っぽい布のロールがずーっと出てきちゃって、戻らない。「どうする~?」「切る?」って、証拠隠滅を図るみたいな(笑)。当然、すぐバレて怒られましたけど。そういうことばかり、たくさんやってる子でした。はい。

ラジオではかなり
素の自分が出ている

――アナウンサーのお仕事を目指そうと思ったきっかけが、小学生の頃だったとか。

そうですね。とにかく腕白で落ち着きのない子だったんですけど、本だけはすごく好きで。うちの親も、おもちゃはダメでも本だけは「ほしい」って言ったら全部買ってくれるっていう。だから結構、朗読が得意だったんですね。多分小学3、4年生のときに、先生から「道徳の教材を作るので、その朗読をしてほしい」って言われて、その収録のお礼にお菓子をもらって。それが初めての労働に対する報酬みたいな感じで、「あ、こういう仕事、いいなあ」と思って。学校でも司会をしたりしていたので、まわりから「アナウンサーに向いてるんじゃない?」とか言われたのを、割と真に受けて。で、卒業文集には「声優かアナウンサーになりたい」って書いた覚えはあります。でも中学校になると「旅館の女将になりたい」とか、夢はころころ変わって、初志貫徹といった感じではないんですけど。

1997年、大阪の朝日放送(ABC)に入社。2007年にフリーアナウンサーとなり、テレビ朝日の朝の帯番組「スーパーモーニング」「モーニングバード!」を2015年9月まで担当。2012年からはTBSラジオで「たまむすび」がスタート。25年のアナウンサー生活でテレビとラジオ、それぞれの帯番組の顔を務めている。

――ラジオという媒体の魅力は、どんなところにありますか。

学生時代にアナウンサー教室に通っていた頃、先生が「アナウンサーになるなら、ラテ兼営局(ラジオ、テレビ両放送を行う局)が一番」とおっしゃっていたんです。新卒で入社したABCでは、ありがたいことにいろんな仕事をさせていただいたんですが、卒業するときに「せっかくラテ兼営局に入ったのに、ラジオの仕事があまりできなかったな」というのがやや心残りで。というのも、アナウンス部でラジオ番組担当の先輩たちが、すごく楽しそうに仕事をされていたのが、とても印象的だったんですね。

2007年にフリーになってから、テレビ朝日さんの朝の帯番組を担当していて、10年ちょっと前にTBSさんから「たまむすび」のオファーをいただいたときに「あ、そうそう、私、ラジオやりたかったんだ」って。朝はテレビ、午後はラジオの帯番組となると、1日4時間半の生放送。体力的にも厳しいですが、「どうしてもこの仕事だけは受けなきゃいけない。断ってはいけない気がする」っていう直感的なものがあって。

――「楽しそう」の一言に集約されている気がしますね。

そう、ラジオはテレビに比べるとやっぱり少人数なんです、制作陣も。東京の局の帯のテレビ番組の場合、1つの番組でスタッフは100人以上の規模とかなり分業で。ラジオは多くても10人、ときに5、6人なので、自分自身の分担がすごく多いんですね。料理屋さんで言うと、自分で食材を採ってきて、調理も盛りつけもして、お店も自分で整えて、みたいな。そういう自由度はありますね。テレビとまた違う魅力というか。

――テレビよりもラジオの方が、番組パーソナリティとリスナーとの距離が近い感はありますよね。

そうですね。町でたまに声をかけていただくときに、「テレビ見てました!」っていう人と「ラジオ聴いてます!」っていう人の距離の詰め方が全然違うのは面白いです。ラジオ聴いてる人は、きゅって寄ってきてくださって、「珠緒さん、カバンのチャック開いてますよ」「ああ~、すいません~」みたいな(笑)。こっちも番組で自分のことを日々赤裸々に話しているので、取り繕ってもバレバレなので。テレビはプロの手で顔も服もしっかり整えていただく、トータルでの表現なんですけど、ラジオはそういうのはない状態なので、かなり素の自分が出ているんじゃないかと思います。

アナウンサー・赤江珠緒さんロングインタビュー。産前のように仕事も完璧にと気負っていたら、「言うほど できてなかったよ?」って(笑)【最新号からちょっと見せ】の画像2

出産に際して
降板も考えたが……

2017年、赤江さんは第一子の妊娠を機に産休へ。42歳で出産、翌年に番組復帰。現在は4歳の娘さんを育てながら、月曜から木曜までの生番組を続けている。

――子育てをしながら週に4日の生放送、大変ではないですか?

そうですね。うちの番組はラジオの中でも気楽な方ですが、毎日帯で放送となると、それなりに世の中にアンテナを広げて、ニュースや旬の芸人さんもわかってないとダメじゃないですか。出産以前は本当に仕事人間だったので、それがまかなえていたんですけど、子どもが生まれるとどうしても時間が足りない。仕事は続けようと思ってましたが、ずっと帯で回して、しかもみんなの座長役となるとなかなか厳しいなと思って。高齢出産なので無事に戻ってこられるかも心配で、番組は降ろさせていただいて……とも考えました。

ただ、「そんなに早く決めず、生まれてから改めて決めたらどうですか?」とTBSさんから言っていただいて。で、生まれてみたら、まあものすごく頑丈な、元気な子で(笑)。よく食べるせいか熱もほとんど出さなくて、幸いにして子どもが頑張ってくれたというか。

でも実際、夫婦ふたりの生活に育児が入ると、家のことがとてつもなく回らなくなって。夫もテレビの仕事なので、それまでは家でもずーっとテレビをつけっぱなしだったのが、子どもにはあまりよくないかと消すようにしたら、途端に世の中のことに疎くなっちゃったり。「こんな生活の中で、私はどうやって番組を回していったらいいんだろう」と悩んだり。

あと高齢出産だからか、免疫力がガクンッと落ちて、産後2年ぐらいはずっと風邪を引いてるような感じで。体力はないし、熱が続いたり、やや追い込まれてる時期というのが正直ありましたね。

――しかも本当にご夫婦ともに、お忙しいお仕事で。

はい、ありとあらゆる方法を駆使しているんですけど、私も夫も祝日に仕事があると、保育園や幼稚園はお休みなので、「その日は誰に見てもらったら?」とか。信頼の置けるシッターさんを探すまでも大変でしたし。コロナ禍で両親も頼れないし、人に甘えることも上手じゃなかったので、そういう匙加減もどうしていいものかと。

よくね、「子育ても仕事も完璧を目指さずに、手を抜いてやればいいんだよ」って言われますけど、「そうだよなあ」と思いながらも、傲慢にも、「でも、全部完璧にやりたいんだよ」みたいな欲求が自分の中にあって。ずっと仕事ばっかりしてきたから、そうできないことのストレスも感じちゃって。

そんな思いをちょっとずつスタッフや出演者にお話ししてみたら、「そんな言うほど、完璧に仕事してました?」とか言われて。「いや、言うほどできてなかったよ?」みたいな(笑)。「そうか~、自分ではやってるつもりだったけど、そうだよね」って。だからいろんな意味で、自分ではわかっていなかったこととか、すごい発見がありますね、子育てって。「母親ならこれくらいしなきゃいけないんじゃない?」と自分で自分を勝手に責めていたところとか。

そういう価値観の揺らぎみたいなのは、すごく与えてもらってますね。それによって、世界の見え方も自分自身もすごく変わってきて。ありきたりですけど、親が成長させてもらうっていうのはこういうことかと、実感しています。

後編へ続く(近日公開予定)

INFORMATION

アナウンサー・赤江珠緒さんロングインタビュー。産前のように仕事も完璧にと気負っていたら、「言うほど できてなかったよ?」って(笑)【最新号からちょっと見せ】の画像3『たまむすび』
毎週月曜~金曜13:00~15:30 TBSラジオ
月曜~木曜は赤江さんが日替わりパートナーと出演中。インタビュー中にもあるセミのエピソードなど、赤裸々トークを繰り広げます。

インタビュー/原 陽子 撮影/キッチンミノル ヘアメイク/上田友子(kodomoe2022年8月号掲載)

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