2021年1月22日

中野信子さんロングインタビュー。柔軟に対応できる脳を作ってあげることが、一番の教育なのかなと思います【後編】

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人間社会の動きや、人の行動・心理をわかりやすく読み解き、学者の域を超え活躍する中野信子さん。中野さん自身、生きやすさを求めて選んだという脳科学者への道。
kodomoe2018年10月号のロングインタビューでは、子育てママやパパが気になるお話に
ついてたくさん語ってくれました。前編に続き後編では、読み聞かせについてなど、中野さんが考える育児についてお伺いします。

※kodomoe2018年10月号に掲載のロングインタビューを全文公開。記事の内容は取材当時2018年のものです

Profile
なかののぶこ/1975年東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業、同大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。2008年にフランス国立研究所にて博士研究員として勤務、2010年帰国。現在東日本国際大学教授。

20歳でもまだ脳は
成熟していない

――親御さんが、特にお母さんの場合は、いつも「子どもに何をしてあげられるだろう」と考えて、時に空回りしてしまうことも。そういうお母さんたちに、何が一番大事かというアドバイスはありますか?

うわあ(笑)。

――何が一番というのは難しいかもしれませんが、「黙って見守ることが大事」とよく言われるものの、それが簡単ではなくて。見守りと放任の違いというか、その線引きの部分で悩む方も多いのかと。

そうですね。これはちょっと、私が言うなんてとってもおこがましいことだな、という前提でお話をしますけれど……。
普通の人間関係、大人同士の人間関係であれば、返報し合うという形式が成り立つんですね。何かしてあげたらその分のお返しがある、という前提のもとでのやりとりがあるわけですけれど、子どもはそれがないですよね、さすがに。小さい子どもなら、もちろんそれはお母さん方も理解済みだと思いますけれど、結構大きくなっても、あまり変わらない(笑)。

お母さんも人間、一個の人間だということを、子どもはなかなか認知できない。相対している相手も人間だと思うことも、もちろん脳がやっています。で、人間の形をしていれば人間と思うかといったらそうではないんですね。相手を感情のある人間だと思える能力というのは、実は30歳ぐらいにならないと成熟しない(笑)。成人と言われても、まだ20歳そこそこでは、脳は全然成人じゃない。

だから子どもは親に対して、お祖父ちゃん、お祖母ちゃんにかもしれないですけれど、「この人も感情があって、ひどいことを言われれば傷つくし、心ないことをされれば悲しいと思う」ということをなかなか認知できなかったりします。
親御さんたちはほんのささいなことで傷ついたり、さみしいなと感じることもあると思うんですけれども……、もう、仕方がないとしか言いようがない。まだそういう機能が育ってないんですね(笑)。それは自分が20歳のときでも、そうであったはずなんです。

普通の大人の人間関係のように、一対一ですぐ返ってくるものではなくて、時を経て、子どもの脳が成熟してから返ってくるものかもしれない、そういう構造をどう受け止めるか。「母、試される」という場面かもしれないですね。日々、遠い、遠い時間の先を見て……でも、誰にもできない仕事をしている、と自分を納得させるしかないですが(笑)。
遠い遠い仕事ですけれども、すごいことをしてるんだという自信を持っていただきたいな、と思います。決して直接的に返ってくるとは限らないですけれども、ひとつとして無駄になることはないんです。

中野信子さんロングインタビュー。柔軟に対応できる脳を作ってあげることが、一番の教育なのかなと思います【後編】の画像1

絵本は世界を共有する
触媒になる

――kodomoe読者には絵本が好きなママ、ご家庭で読み聞かせをしているママも多いです。

あ、読み聞かせは母にすごくしてもらった思い出があります。

――読み聞かせは親子のコミュニケーションにもいいと言われますが、中野さんはどう思われますか。

子どもとの対話って、大人との言語コミュニケーションとはやっぱり違って、大人の常識がまったく通じないじゃないですか。お母さんも戸惑いながら子どもさんと接することが多いと思うんですけど。
「こうだ」っていうことを押しつけるように教えるのではなくて、絵本というクッションがあると、自然に親子で世界を共有し合えるかなと思いますね。共感の触媒として。文字と、やっぱり文字以外の情報が多いというのは、すごくいい点だと思います。

あと、アニメーションなどと違うところで、自分でペースを調整しながら伝えることができるのがいいですよね。1ページという単位で。マンガだとどうしても、絵本よりはちょっと速いので。

――中野さんは小さい頃は図鑑をよく読まれていたようですが、科学絵本も読まれたりしました?

ああ、そういうのは母が嫌いだから、ひとりで読んでました(笑)。そういうのが共有できたらもっと楽しいだろうなぁという、ほんのりした淡い期待は少しだけ持ってましたね。
なんかもっと虫の話とかできたらうれしかったな、と思うんですけど、やっぱり「気持ち悪い」って言う人でしたし(笑)。でも、多くのお母さんもそうだと思うんですよね。

――そうですね。虫は好き嫌いがはっきり分かれますね。

やっぱり虫は危険なことも多いので当然の反応だとは思うんですが。刺したりする虫もいっぱいいるし。でもなんかこう、もうちょっと共有したかったな、という気持ちはありました。

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