2018年3月12日

絵本作家・江頭路子 絵本作家になったのは、思いがけないご縁がつながった「偶然」なんです

「こういう絵本がほしい」と探したけれどなかったので
じゃあ自分で作ろうと思いました。

ーーご自身で作・絵ともに担当されるようになったのは……

 きっかけはそのあとに娘が生まれたことですね。結婚・出産して静岡県の三島市に住むようになり、娘が1歳くらいのときに『あめふりさんぽ』(講談社)を出しました。これが、最初に文と絵、両方を担当した絵本で、次が『なきごえバス』かな。

文・絵を両方を手がけた最初の絵本『あめふりさんぽ』。

――娘さんとの生活の中で、「こんな絵本はどうかな?」とアイディアが湧き出てきたんですね。

 そうですね。「こういう絵本がほしいな」って思って探したらなかったので、じゃあ自分で作ろうと思いました。「小さな子どもと遊ぶ」っていうのは、最初は「おさんぽ」に行く時間なんですよね。歩きながら季節のことを教えてあげたり、私はオノマトペが好きなんですけど、一緒におさんぽしながら、それが言えたりするような絵本ができたらいいなと思って。

ーー実際のおさんぽと、親子で読んだ絵本がリンクするような?

 そうそう。そのアイディアを『はこちゃん』を担当してくれた編集さんに見せたら、いいじゃないって言っていただいて。そのあと、娘とのやりとりの中から『なきごえバス』のアイディアが浮かんだので、こちらは以前からやりとりしていた コドモエの絵本の編集さんにお見せしました。

なきごえシリーズは姉妹編で2冊の絵本に。

ーー『なきごえバス』は、最初のラフでは、今の絵本とだいぶ違った内容でしたね。

 娘が言葉を覚え始めるくらいの頃、図鑑とか辞書を見るのが好きな時期があったんですよね。でも図鑑ってどうやって一緒に読んだらいいんだろうって悩んでいて。特に娘が好きだった「なきごえ」を覚えられる、なきごえ図鑑みたいな絵本があったらなと。それで自分で作ってみようと思ったのが最初でした。でもいろいろイメージしていくうちに、ストーリーがあったほうが、お母さんも読んでいて飽きないし楽しいから、なきごえがいっぱい出てきて、親子で一緒に楽しめるストーリー絵本がいいなと。

読み聞かせの活動をしている方と出会って、
『なきごえバス』をモチーフにした
親子あそびも誕生しました

――「ストーリーのある図鑑絵本」の形で、なかなかうまくまとまりませんでした。今日はその頃試行錯誤されたラフをいくつかお持ちくださいました。

 (ラフを見ながら)ほんとうに試行錯誤でしたねえ……。なかなかうまくいかなくて、絞り出した感じで、燃え尽きましたね。『あめふりさんぽ』も『なきごえバス』も「このあともシリーズでぜひ」って言われたんですけど、そのときは「無理!」って思ってました(笑)。
 『なきごえバス』の初期のラフではお菓子の国に行ったり、みんなでお弁当を食べたり、迷走してしまって、途中で私何が言いたいんだろうってなりました。

上は最初のテキストだけの段階。下はボツになった実寸ラフで、実際の本ではなくなったシーン。

小さいものから実物大のものまで、たくさんのラフが描かれました。

ーー何をいちばん残したいかを話し合いましたね。『なきごえバス』というタイトルがまずすごくよくて、編集部もそこがポイントじゃないかと感じました。

 ページ数が短い中で、どうお話を整理するかを考えているうちに、ここさえあれば他はいらないなってどんどん削って行って。勉強になりましたね、最初の2冊でそれができたから、他の絵本を作るときにも、コンセプトがぶれていないかをすごく注意するようになりました。

ーーいつか、なきごえの図鑑もまた作りたいですね(笑)。はじめての文・絵両方を手がける、まるごと1冊の絵本づくりは、どこが大変でしたか?

 お話の流れや構成を考えるラフづくりが、いちばん時間がかかりました。毎回なんですけど、試行錯誤してやっとラフが固まって「出版しましょう!」となった瞬間は、自分の中から、なにか特別なものがすごく出ている感じがするんですよね。満たされ感というか、達成感というか、すごく気持ちいい……誰かと一緒に喜び合わなくても、ひとりだけで満ち足りちゃうような感動というか。

ーー今まで感じたことのない、強い喜びがあったんですね。

 そうですね。そのあとは、ただひたすら絵を描く作業なので。ラフが決まったときが、いちばん嬉しいです。
 でも、最初の2冊では、とにかく燃え尽きましたね……(しみじみと)。ほんとに出し切った感じになって、「もうだめだ~」ってなって。「おさんぽ」シリーズはそのあと、編集さんが季節のテーマを洗い出してくれて、どうにか続刊につながりました。最初は見当違いのテーマを考えたりもしてたんですけど、『さんさんさんぽ』のアイディアが出て、ひとつ抜けた感じがしました。
 『なきごえバス』の続刊も同じように、編集さんと話し合って決めました。『なきごえバス』は、kodomoeの付録のときに読んでくださった、読み聞かせの活動をされている方からの、もっとこうしたら……というご意見を参考に、単行本化の際、テキストを変更したのですが、それも勉強になりました。読み聞かせの方とのやりとりはそのあとも続いて、『なきごえバス』をモチーフにした新しい親子あそびを考えてくださったりと、楽しい展開があって嬉しかったです。

JPIC読書アドバイザーの井出ひかるさんが作ってくださった読み聞かせプログラムに組み込める、親子あそびのアイディア。

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