第2回 井上和香さん×現役保育士さん(続) 「子どもに対して感情的になってしまうとき、どうしたらいい?」
田中:
優しくしてられない精神状態になることも、もちろんありますよ。
そこはしょうがないと思います。
「もう、やめて! ママは嫌なの!」と言ってしまうこともあって当たり前。
反省が、「後」になってもいいんです。
ちょっと時間をおいて、冷静に我に返る瞬間というのがありますよね。
自分が多少クールダウンしてから、子どもに「こんなこと言っちゃってごめんね。でもさっきのは本当に嫌だったんだよ。だからあんなふうにお話したんだよ」という「フォロー」が大事になります。
叩く行動には必ず理由があると思うので、何が嫌だったのかを聞いて、「そういうことが嫌だったんだね」という部分は共感してあげます。
和香:
やっぱり一回、認めてあげるんですね。
とっさに出る場合じゃなく、わかってて、ふざけて叩いているというときも、同じように伝えればいいんですか?
田中:
お尻を叩いて、笑いながら行っちゃうとか、シチュエーションにもよると思うんです。楽しいふざけあいっこの中でなら、そこまで強くは言わないです。
「それはやりすぎだよー。ちょっと嫌だったよー」
「どうしたの?遊びたかったの?」
「何がしたかったの?」というふうに声をかけますね。
こういうとき、ぼくのお尻を叩くことが目的じゃないと思うんです。
子どもたちの本当に求めているものは、リアクションを求めたり、この人はどういう反応をするのかをさぐったりしていることもあります。
行動自体はやってはいけないとわからせながらも、どういうふうに遊ぼうかかな? 関わっていこうかな?って考えます。
和香:
そうなんですね〜。いやあ、心が広い!(笑)
子どもは世界一かわいいと思ってるんですけど、世界一小憎たらしいんじゃないかと思うぐらい、一瞬にして変わっちゃうこともあるんですよね。
それぐらい、近い存在だからなんですけど、もうちょっと私もおおらかにいかないと……。
田中:
子どものことを世界一かわいいと思ってるお母さんなら、全然大丈夫ですよ。
イラッとしたり、カッとしたりするときなんて、みんながみんな仏なわけじゃないんだし、「あります!あります!」って、相談にきたお母さんたちにも言ってます。
和香:
先生、そんなこと言われたら、泣きます〜!!
本当にうれしい言葉なんで。
田中:
それを我慢しなさいって言われるとお母さんだって負担だし、お母さんの負担は全部子どもに行っちゃうんですよね。
感情的になって怒ってはいけない、という決まりがあるわけではありません。
なるべくだったら、怒らないほうがいいですよね、という話の中で、
もし子どもに怒っても、フォローしてあげたらそれで大丈夫です!
和香:
はい、頑張ります……。
田中:
いやいや、頑張りすぎないっていうところが大事ですよ!
娘さんは人によっては叩かないなど、態度を変えてるなという感じはします?
和香:
します!
とりあえず、私のところにくれば、叩いてもいい、だだこねてもいいっていうのが見えますよね。
お迎えに行ったら、途端にだだをこねて、泣き出して、「帰らな〜い!」って言うんです。
帰ろうとしても、まあ、自転車に乗りません。
どんなに抱っこしても、曲芸か!っていうぐらい足をあげて座ろうとしなかったり、もうご近所に迷惑だからっていうぐらい泣き叫んだりします。
それが保育園では「すごいいい子でしたよ」とか言われても、信じられないですよね。
一人で絵本を読んで、自分でなにかしゃべってお話を読んでいていい子らしいんです。
でも、たった数分後にそんな事態になっているので、私がいけないのかなって悩んできちゃったんですよ。
田中:
いやいや逆です。安心感ですよね。お母さんに安心して甘えたいからそうなっちゃう。
和香:
保育園では頑張っていて、私に会えて甘えてるってことですか? そうかな……?
田中:
子どもは、集団生活の中で、ある程度は負担を感じているものです。
一番安心できるお母さんの元にいないという精神的な不安とか、あとは園の生活に対応していかなければいけない体の負担もあります。
お母さんがお迎えにきたときに、それがうわーっと発散されて、「よかったー!!」となっちゃうんです。
和香:
それが一番困るんですけどね〜!
仕事終わって迎えに行って、ぎゃん泣きされたときほど、どっと疲れるものはないですよ。
田中:
ある意味、それが保育士とご家庭との一番のギャップかもしれないですね。
保育士としては「ちゃんと甘えられる環境なんだな、よしよし」と思ってるんですけど。
お母さんからしてみれば「こっちは大変なんだよ」って思ってるんだろうな……と。
そう言わなければならない自分の立場も心苦しく思っています(笑)。