第1回 井上和香さん×現役保育士さん 「どうして保育園では野菜が食べられるのに、うちではダメなの?」
まっすぐで、素直で、飾らない笑顔が印象的な井上和香さん。
働きながら、子どもにしてあげなきゃいけないことって何だろうと思いをめぐらす姿は、すべてのママたちに重なります。
現役の保育士で、音楽と遊びをつなぐ活動をしている田中良昌さんに、和香さんの悩みに即して、苦手なものの食べさせ方や、子どもがはっとするほめ方など、実践のコツを教えていただきました。
■田中良昌さん:
キッズスマイルカンパニー所属の現役保育士。歌遊び、バルーンパフォーマンス、絵本の読み聞かせなど、幅広い分野で親子コンサートや子育て支援活動を行っている。
うちでは好きなものしか食べませんが…?
井上和香さん(以下、和香):
うちの子は、1歳半ぐらいからイヤイヤ期がスタートしました。
2歳になって、ちょっと落ち着いてきた感じはするんですが、反抗や自己主張が強くなってきましたね。
そこで保育士さんに聞きたいことがたくさんあるんですよ!
保育園ではいい子でよく頑張っているらしいんです。
たとえば、ご飯。
ある日、保育士さんに、「今日は完食でしたよ! お野菜を残してましたが、バナナがあるからがんばって食べようね!って言ったら、残さず食べてくれました」と、言われました
すごくうれしくて、そうか、その手があるんだ! と思ったわけです。
その夜、夕飯に野菜のおかずをさっそく出してみました。
そして、バナナを見せながら、「ほら、バナナがあるから頑張って食べて♪」って言ったら、「バナナァーーーーー!!」ってすごい勢いで泣き出して、もう一切、野菜は食べないわけですよ。
それで、野菜を食べる前にバナナを渡すしかなくなって、なんで保育園と同じことをしてるのにって。
田中良昌さん(以下、田中):
保育園で野菜が食べられただけでも、娘さんはすごいですよ!
もっと幼い乳児さんだったら、ほしいものがあれば、必ずほしいものにいきます。
バナナがあれば絶対バナナだし、苦手なものには手をつけません。
でも娘さんの場合、そこから自分なりに成長して、野菜を食べたらバナナがもらえるんだ、という見通しと我慢が身についたのです。
それはすごいことなんですよ。
和香:
本当ですか?
保育園でできているだけでも、本人的にそういう力がついてきてるんですね。
でも、家でできないっていうのが、納得いかないんですよねーー。
田中:
お気持ちはわかります(笑)。
でも2歳どころじゃなく、5歳になっても、食べない子は食べないので、娘さんはすごいですよ。
保育園では、まずは視覚的に苦手なものの量を減らします。
苦手なものがいっぱいあるって大人でも嫌なことだから、ちょっと減らして、「じゃあこれだけ食べてみようか?」と。
「一番おいしいところを選んだからね」と言ったりして、ちょっとスプーンにのせてあげて、「食べられるかなあ?」と声をかけます。
それでもやっぱりダメだったら、「そっか。じゃあ、先に食べてるね」といったん置いて「ああ、これ本当においしいなあ」と一緒に食べて促したりします。
かける言葉の中で「いかに食べる気にさせるか」が肝ですね。
和香:
もし、ひと口食べられたら、そのときは、そのひと口で終わりにするんですか?
田中:
そうです。
食べられたら「よく食べられたね! すごいね! おいしかったでしょ?」と、言いながら、そのひと口で終わりにします。
もし、そこから子どものほうが意欲的になって食べたがれば見守りますが、こちらから、その後の追撃はしないですね。
このひと口を食べられれば大丈夫、「オッケー!」って。
和香:
えー! うちでは、「これだけ食べなさい」って言って食べたら、「もうひとつ食べてみよう♪」ってやってたんですけど、それはよくないんですね。
そこで子どもが達成感を感じれば、また次の機会に、もうちょっと食べてくれるかもしれないということですか?
田中:
そう、まず一回食べたところで、そこを褒めたおす!って感じですね。
次は、その量をさりげなく、ちょっとずつ増やしていったり、苦手なものを小さく隠して盛ったりとかね。
和香:
長期スパンで考える感じなんですね。
田中:
そうですね。子どもはひと口食べて褒められたのが記憶に残っていて、その後はすんなり食べられる、というふうに変わってきます。
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