2012年1月1日

1月のテーマは「日の出の絵本」【広松由希子の今月の絵本・3】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

1月のテーマは「日の出の絵本」

さあ、新年。最初のテーマは「日の出」です。
実はわたし、初日の出を見た経験は、人生でまだ二度くらい。
でも元旦でなくても、日の出を見ると、新しく清々しいきもちになりませんか?

絵本の日の出にも、いろんなタイプがあります。
1月のテーマは「日の出の絵本」【広松由希子の今月の絵本・3】の画像1
まずは、最高にめでたい日の出。
『おめでとうおひさま』を。

なにも見えない、真っ暗な水平線が明るんで、
「うみから とうじょう」
「おひさま ぽん!」
黒々した峰からも、
「やまから とうじょう」
「おひさま ぽん!」

海のみんな、山のみんなと
「おめでとう」を交わしたおひさまが
新年の抱負をたずねます。
「ことし みんなは どう したい?」

四角い教育とは一線を引いた、やさしい問答。
おひさまの懐の広さ、頭の丸さに感じ入ります。

生きとし生けるものたちの
やわらかな笑いに満ちた水彩画。
きばらず、ゆるやかに迎える新年。
小さい子どもも親もほっとする、めでたさです。

1月のテーマは「日の出の絵本」【広松由希子の今月の絵本・3】の画像2

『おめでとうおひさま』
中川ひろたか/作 片山健/絵
小学館 定価1,365円 2011

 

 

『ととけっこう よがあけた』は、
赤ちゃんからいっしょに楽しめて、
暮らしにとけ込むわらべうたの絵本です。

にわとりが歌いながら
みんなをつんつんつついて、起こしていきます。
「ととけっこー よがあけたー
 まめでっぽー おきてきなー」
「ぴよ ぴよ ぴよ おはよう」

二拍子の単純なリズムにのせて、
「ソソラーソー*ソソララソー*
 ソソラーソー*ソソララソー*」(*は四分休符)
初心ママ/パパでも即歌える、入門わらべうた。
「まめでっぽー」の部分を
「○○ちゃん」や「△△くん」に替えて歌ってみて。

「おきなさーい」より、やわらかく「おきてきな」。
大好きな人の声なら、なおさら
楽しい気持ちで目覚められそう。

おっとりと懐かしくあたたかい絵も、
親子の笑顔を引き出してくれます。

 

1月のテーマは「日の出の絵本」【広松由希子の今月の絵本・3】の画像3
『ととけっこうよがあけた』(わらべうたえほん)
ましませつこ/絵 こばやしえみこ/案
こぐま社 定価945円 2005

 

 

ぐっと厳かな日の出もあります。
『よあけ』は、大人の男性にも静かな人気のある名作ですが、
小さな人たちも引き込む力のある、絵本中の絵本です。

音もなく、動くものもない、湖畔の夜のしじまに始まって、
だんだんと、だんだんと、クレッシェンド。
画面の色や大きさも、ことばも、景色のなかの気配も、
少しずつ目覚めていきます。

「さざなみ」がたち、「もや」がこもり、
生きものが一羽、一匹、また一羽、二羽、
動く音や鳴く声が聞こえてきます。
そして、人も……

本のたたずまいにふさわしく、格調高い訳文。
自然を描く美しい日本語は、
ところどころむずかしく感じられるかもしれませんが、
読んであげれば声に乗り、子どもの耳にも心地よく響くでしょう。

ゆっくりページをめくってください。
最高の日の出の瞬間に、息をのみます。

1月のテーマは「日の出の絵本」【広松由希子の今月の絵本・3】の画像4
『よあけ』
ユリー・シュルヴィッツ/作 瀬田貞二/訳
福音館書店 定価1,260円 1977

初日の出を見逃した人、早起き苦手な人、
残念な昨日をリセットしたい人……

絵本の日の出が、新しい空気をはこんでくれます。

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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