2013年6月13日

6月のテーマは「本の絵本」【広松由希子の今月の絵本・20】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

6月のテーマは「本の絵本」

雨で部屋に閉じ込められる梅雨は、
親子で絵本とじっくり親しむには、うれしい季節。
本の力をあらためて見直す
「本の絵本」を集めてみましたよ。

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ぼくのもらったプレゼントは、
「ぺったんこで しかく」。
包みを開けてみると……
「あ、ほんくん!」

「ひらいている きみが すき」
自分でページをめくるよろこびや、

「とじている きみが すき」
自分の棚にしまうよろこび。

ネコに読んでやったり、
ぼうしにしてかぶったり、
それから、それから……

「ほんくん」と呼びかけたくなる
自分の本との出会い。一冊の本がもたらす
たくさんの原初のよろこびが
体にふっくらよみがえります。

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『だいすきなほんくん』
クリスティン・オコンネル・ジョージ/文 マギー・スミス絵
山口文生/訳 評論社 定価1365円 2006

 

雨の日のおでかけは、
親子で図書館に行くのもいいですね。
本に囲まれた空間にいると、
現実を離れて、心がむくむくしてきます。

カリーナも、図書館大好きな女の子。
土曜の朝には、必ず行って、読みたい本を選びます。
動物の本を読んでいたカリーナは、本を閉じて、考えごとにふけります。
(そう、この本を閉じてぼんやりする時間も好き)

「わたしが としょかんの ひとだったら、
どうぶつだけが としょかんに はいれる とくべつな ひを つくるのに……」

カウンターに座って待っていると、
一番乗りは、カナリアで、次にはライオン、クマ、ゾウ……
カリーナはすてきな図書館のお姉さんになりきって、
空想はどんどんふくらんでいきます。

ねずみたちが象の鼻で追いかけっこを始めたところから、
「がおーっ! ぐるるる! もおー! ぎゃおぎゃお!」
大騒ぎに!

『くまのコールテンくん』でおなじみの作者の
もうひとつの世界と軽々行き来できる本。
現実に戻っても、カリーナの本好きがよくわかる、ラストシーン。
いっしょに、本を片手にスキップしたくなります。

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『しずかに! ここは どうぶつの としょかんです』
ドン・フリーマン/作 なかがわちひろ/訳
BL出版 定価1470円 2008

 

絵本に囲まれて暮らすのも悪くないけれど、
絵本の中の暮らしって、どんな感じ?
小さなくまのオットーは、絵本の中に住んでいます。

自分のお話を子どもたちに読んでもらっているときが幸せ。

ところが、ある日、家の人たちがみんな、
引っ越してしまったのです。
置いてけぼりになったオットーは、絵本から出て、自分の居場所を求め、
外の世界へ飛び出していきます。

小さな絵本のくまにとって、
大きな街は、居心地のいい場所じゃありません。
絵本のおうちが恋しくなりながら、
とぼとぼと行き着いた先は……?

あたたかな光と、たくさんの物語にあふれ、
小さな仲間と、子どもたちがいっぱいいる、幸せの館。

イギリスの若手作家が描く、
絵本の住人たちの愛らしい表情に釘付けです。

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『くまのオットーとえほんのおうち』
ケイティ・クレミンソン/作 横山和江/訳
岩崎書店 定価1365円 2011


紙を束ねて綴じた
原始的な「本」のかたちに潜む
尽きない魅力。

親子でページを繰りながら、
ひっつきあって、ことばを交わし、
いろんなお話をふくらませて。

 

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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