2013年5月14日

5月のテーマは「おべんとうの絵本」【広松由希子の今月の絵本・19】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

5月のテーマは「おべんとうの絵本」

風薫る季節になりました。
天気のいい日は、仕事をしていても、
お尻がむずむずそわそわしてきます。

遠くには出かけられないけど、
家の前の公園に出て、
ぽかんと空を見上げながら、おべんとうを広げていたら、
ふくふく幸せがこみ上げてきました。

5月の風って、どうしてこんなに気持ちいいのかな?
おべんとうって、なんでこんなにうれしいのかな?

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『きょうのおべんとうなんだろな』には、
そんなふくふく感がつまっています。

野原でいっぱい遊んだみんなのお昼。
「あー おなか すいた」
「さあ おべんとう おべんとう」

「きょうの おべんとう なんだろな」
期待をふくらませておべんとうを広げるみたいに、
ページをめくっていくと、

こぶたのおべんとうは、
「バタつきポテト」
ふたごのうさぎは、
「だいすきな にんじん」
「キャベツと りんごの サラダつき」

小さな虫から大きなゾウまで、
それぞれにぴったりのおべんとう。
中身も、大きさも、包みの柄にも納得です。

「あっ くるみにピーナッツ!
きょうは ひまわりの たねもある」

「おや はちみつパンに ぶどうパン
なんと いちばん すきなもの」

うきうきリズムにのった台詞、
だれのおべんとうかわかるかな?

おいしい気持ちをくすぐる
岸田衿子さんのユーモラスなことばと、
山脇百合子さんの親しみあふれる絵のベストマッチ。

野原で、おべんとうを広げる気持ちで
何度でも開きたくなる絵本なのです。

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『きょうのおべんとうなんだろな』
岸田衿子/作 山脇百合子/絵
福音館書店 定価840円 1994

 

おべんとうのバリエーションを楽しみたければ、
『あいうえおべんとう』がうってつけ。

たとえば「あっこちゃん」のおべんとうは
・・・
アスパラガス
いちご
うずらたまご
えびフライ
おにぎり
・・・
なんと「あいうえお」のおべんとう!

名前の頭文字にあわせて、
「あ行」から「ら行」までの食材を揃えたおべんとうが現れます。
しかも、おかずのバランスや彩りも工夫され、
どれもとってもおいしそう。

山岡ひかるさんが貼り絵で描く食べものは、
質感にこだわりがあって、思わず手がのびます。
マンネリ化しがちな毎日のおべんとうメニューの
ヒントにもなりそうです♪

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『あいうえおべんとう』
山岡ひかる/作 くもん出版
定価1365円 2009

 

「いただきま~す!」シリーズ3冊の主役は、
食べる側ではなく、食べられる側。
人間の絵は、出てきません。

主役をはるにふさわしい三役、
みんなの大好物
『おにぎりくん』
『たまごやきくん』
『からあげくん』
が、つぶらな瞳で登場します。

それぞれどうやってできているのか、
お米のひと粒、卵1個、そして鶏1羽まで遡って伝えます。
ことば数は最小限。
ごくシンプルに目で見て納得する展開。

最後はどの本も、できあがった
おにぎりくん、たまごやきくん、からあげくんが
連れ立って、
「ピクニックに レッツゴー!!」
自ら出かけちゃうんですね。

野で、海で、山で、
おいしい空気のなかで、
おいしいいのちをいただく。

「絵本も作る釣り師」を自称する
自然派の作者ならではの
無上のよろこびを伝えるおべんとう絵本です。

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『おにぎりくん』『たまごやきくん』『からあげくん』
村上康成/作 小学館
各定価1050円 2002

 

こちらは、一転リアルな
『おにぎり』。

おかずはなく、
おにぎり3個だけの究極のおべんとう。
中身も梅干しのみという潔さ。

登場するのは、炊きたてごはんと
水と塩と梅干しとのり、
そして、ふたつの「手」です。

「てのひらに、みずを つけて」
「しおを つけて」
「ごはんを のせて
あつ、あつ。ふっ、ふっ。」
「ぎゅっ」

作る過程を目で追うだけで、
ああ、もう、よだれが。
のりの香り、たまらん。
できたておにぎり、最高。
やっぱり、おべんとうの王様ですね!

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『おにぎり』
平山英三/文 平山和子/絵
福音館書店 定価840円 1992

 


さて、おなかがくちくなったところで、
午後もがんばりますか。

それとも、もう少しだけ風に吹かれて、
お昼ねしましょうか。

 

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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