2013年2月6日

2月のテーマは「おふとんの絵本」【広松由希子の今月の絵本・16】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

2月のテーマは「おふとんの絵本」

だまって、大きく包み込んでくれる愛。
ああ、こんなに好きでたまらないのに……!

冬の朝、ふとんから抜け出すのは、恋人と引き裂かれる気分。
毎朝が悲劇のヒロインです。
(でも、また夜にはきっと会える……)

子どものころから相思相愛♪
いとしのおふとん絵本を集めてみました。
16_shugo.jpg
『あたらしいおふとん』のふとんは、アメリカンキルト。
パパとママが女の子の小さい頃の「おふる」を使って作ってくれた、
特製ぬくもりパッチワークです。

赤ちゃんのときのシーツ、パジャマ、
ふたつの誕生日に着たワンピース、大好きだったズボン。
「あのきれも、このきれも、
 おぼえてる、おぼえてる。」

ベッドの上で腹ばいになって、
眺めているうちに、だんだんふわふわ、
キルトの模様が立ち上がっていきます。
キルトの世界に迷い込んだ女の子は、
ぬいぐるみのサリーの姿をさがしますが……?

夢うつつ、夜のおふとん散歩。
やみつきになりそうな、暮らしの幻想。
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『あたらしいおふとん』
アン・ジョナス/作 角野栄子/訳
あかね書房 定価1325円 1992

 

鉛筆のタッチが、ふんわりあったか、
『やまねのネンネ』は、
ほしたてのふとんにうずまるような、くつろぎの絵本。

木のうろで丸まって冬眠していた、やまねのネンネ。
ねぼけたまんま転げ落ちますが、
山芋のかごに入って運ばれても、
木の枝にひっかかっても、カラスにつままれても、
ネンネにとっては、みんな夢の中のできごと。

目のわるいおばあさんに、お手玉と間違えられ、
うっかり遊ばれてしまいますが、
やさしい女の子に救われて、
「そのばん そのこは ネンネと ねたよ
 ふんわか あったか おふとんの なか」

左右のページに描かれる、夢と現実の対比が楽しい。
驚いて逃げ出す、自然な関係もいいな。
読み終わってもあと5分、とろとろしていたい気持ち。
yamane.jpg
『やまねのネンネ』
どいかや/作 BL出版
定価1365円 2002

 

 

しきぶとん派? ベッド派? それとも……?
いろんな寝床があるけれど、
『ねてるの だあれ』に出てくるのは、
ちょっと特別な、植物の赤ちゃんたちの寝床。

「あかい テントで 
       ねてるの だあれ」
「まんまる おかおの
        ほおずきあかちゃん」

「ふっくら ねぶくろで
         ねてるの だあれ」
「おくちむすんだ
      そらまめあかちゃん」

動物でも、子どもでも、時に大人でも、
ねがおは無邪気で、かわいいものですが、
この植物の赤ちゃんたちの、うっかり見過ごすくらい
控えめな「ねがお」は、とびきりですよ。

おふとんの中をのぞくように、
そっとページをめくってください。
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『ねてるのだあれ』
神沢利子/作 山内ふじ江/絵
福音館書店 定価840円 2011

 

 

ペーパーバックの初版(1981)から、読み継がれて30年。
『とんとんとめてくださいな』は、
子どものころ大好きだったという
お父さん・お母さんもいるのでは?

ハイキングの帰り、3びきのねずみが、道に迷ってしまいます。
日はとっぷりと暮れ、霧も出てくるなか、
一件の家の灯りに気づきます。
「とんとん、とめてくださいな」

家主は留守。
つかれた3びきが大きなベッドにもぐりこむと、
まただれかが
「とんとん、とめてくださいな」

3びき、2ひき、また3びき。
ひとつのベッド、身を寄せ合う動物たち。
いったいここは、だれの家なのかな?

裏表紙、みんないっしょの
平和なおふとんシーンが、好き。
ほっとして眠りにつける、定番絵本なのです。
tonton.jpg
『とんとんとめてくださいな』
こいでたん/文 こいでやすこ/絵
福音館書店 定価945円 1992

ページをめくることで、動物たちにおふとんをかけてあげる、
しかけ絵本『おふとんかけて!』
(D・ハコエン & S・シャーシュミット/作 いしづちひろ/訳
BL出版 定価1365円 2011)とか、

赤ちゃんの心の友『もうふ』
(ジョン・バーニンガム/作 谷川俊太郎/訳
冨山房 定価630円 1976)など、

いとしのおふとん絵本は、まだまだいっぱい。目移りしちゃう。

そうそう、最後に、子どもをあたたかく包み込んでくれる
「冬のふとん絵本」の新名作
『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』
(高野文子/作・絵 福音館書店 こどものとも年少版2010年2月号)も挙げておかなくちゃ。

バックナンバー品切れの月刊絵本(2013年2月現在)ですが、
図書館などで見てみてくださいねー。

ふかふか、ほっこり、いい夢を。

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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