2022年11月3日

食べられるおかずがとても少ない娘が完食する、カレー弁当のすごさ【柏木智帆さんちの食卓・4/我が家のごはん日記】

 忙しいママにとって、日々の家事の中で悩ましいのがごはんのこと。適度に手を抜きたいけれど、家族には栄養のあるものをバランスよく食べてもらいたい。では、食にかかわるお仕事をしているママたちは、家族のごはんをどうしているの? 

お米ライターの柏木智帆さんの最終回。米農家のご主人、3歳の娘さんと3人暮らしで、福島・会津地方で「米文化の再興」と「米消費アップ」をテーマに活動しています。

柏木智帆さんちの食卓 #week4

〈日曜日・昼〉

夫は稲刈り中。せっかくの休日なので、娘と一緒に猪苗代湖畔で開かれていたフェスへ行きました。

娘は子ども向けのワークショップに参加。真っ白なティピにさまざまな色の筆を走らせ、髪や服がペイントだらけに。カラフルな“毛糸の森”では、ピンク色の毛糸を蜘蛛のように垂らしながら縦横無尽に歩いていました。

 

帰宅後「塩むすび」と「ベビー帆立の照り焼き」でランチ。娘が「デッキでたべたい」と言うので、暖かい格好をしてウッドデッキで磐梯山を眺めながら食べました。

 

娘のリクエストに応えて梨とぶどうも用意。すると、まずは梨をひとくち。その後はおむすびとフルーツを交互に食べていました。 「フルーツはごはんの後だよ」と言っても聞きません。「デザート」という概念を伝えるにはどうしたら良いのだろう。

ちなみにこの日もベビー帆立はひとくちも食べてくれませんでしたが、想定内!

 

ちなみに、ワークショップ後、娘が「もっとやりたい」と言うので毛糸玉を買いに行きました。娘が選んだのは、紺色地にピンク色・黄色・水色が混じった毛糸玉。わが家の柱や階段がかわいくなりました。

 〈月曜日・おやつ〉

 この日のおやつは「鬼まんじゅう」。

材料は、さつまいも、米粉、甘酒の3つだけ。本来は小麦粉を使いますが、娘が小麦アレルギーのため米粉で代用し、砂糖と水は甘酒に変えました。

 

「一緒に作ろう」と誘いましたが、「やらない」とつれない娘。ところが、あと1個作ったら終わりというときになって急に「やる!」。すべて作り終えていたら泣かれるところでした。あぶない、あぶない。蒸し上げると、むっちりとした生地で団子風になりましたが、これはこれでおいしい。

娘も気に入ってくれたようで、鬼の真似(?)をして「鬼まんじゅうだぞ〜」と言いながら食べていました。

 〈月曜日・夜〉

 この夏は大好きなウリ科の「冬瓜」や「夕顔」を一度も食べる機会がありませんでした。このあたりでは8〜9月頃になると近所のスーパーに娘の身長(95cm)ほどありそうな「夕顔」が並びます。種を取り除いて皮を剥くと、食べられる部分はずいぶん減りますが、それでも夫と2人ではとても食べ切れないサイズです(娘は確実に食べない)。

 以前はお父ちゃん(義父)が栽培した夕顔を切っておすそ分けしてもらっていましたが、今年は作らなかったそうです。とうとう食べられなかったなとあきらめていましたが、スーパーで「ミニ冬瓜」を発見! これなら数日で食べきれるはず。

さっそく「冬瓜と油揚げの煮物」を作りました。料理家・庄司いずみさんのレシピで、あんかけのとろり感と火を通した冬瓜のとろり感がマッチして油揚げに味がしみていて、しみじみおいしいおかずです。

 

他に作ったのは「きんぴらごぼう」と「玉子巾着」。玉子巾着の半量は黄身の半熟感を残し、残りの半量は娘のために完全に火を通しました。以前に娘が半熟卵の白身をほんのちょっと舐めただけで蕁麻疹が出てしまったので、娘が食べる卵料理はガチガチに火を通しています。

 

ところが、またしても食べない娘。前回書いた「ふりかけのかぜ」のごはんを食べ、お弁当用の残りの「うずらの味玉」と「かぼちゃ塩煮」を食べて「ごちそうさま」。昼のお弁当でまったく同じメニューを食べたのによく飽きないな(笑)。

 〈水曜日・昼〉

「子どもの食事は和食が基本」という私のポリシーによってお子様ランチ的なものは一切登場しないわが家の食卓。それでも、たまにはお楽しみも必要です。

 最近の娘のお弁当は毎日のように「白飯」「うずらの味玉」「かぼちゃの塩煮」なので、この日は久しぶりのカレー弁当に。カレーは娘が食べてくれる数少ないお弁当おかずのひとつです。

作ったのは「ぶりとじゃがいものカレー」。材料は、たまねぎ、トマト、ぶり、じゃがいも、生姜の5つ。調味料は、ターメリック、クミンパウダー、コリアンダーパウダー、塩、みりん、米油の6つだけ。スパイス料理研究家・印度カリー子さんのレシピをもとにアレンジしました。

娘の味覚形成や健康のことを考えて、油はごくわずかに抑え、砂糖は不使用。スパイスは使っていても唐辛子を使わないので辛くなく、このレシピならば小麦や乳製品のアレルギーがある娘でも食べられます。

まずは、少量の油でくし切りにした玉ねぎとおろし生姜を炒め、茶色くなってきたらざく切りにしたトマトを加えて炒め、さらにスパイスと塩を入れて炒めます。ここまでを前日の夜にやっておけば、朝のお弁当作りが楽です。翌朝、仕込んでいたものに一口大のじゃがいもとぶりと水と少量のみりんを入れてふたをして汁気が少なくなるまで煮たら完成。ぶりの皮や血合い部分は娘が嫌がるので取り除いてからお弁当に詰めます。

ぶりとじゃがいものカレー・娘用

ぶりとじゃがいものカレー・母用

かつて私はカレーが苦手だった時代があり、「カレーが嫌いなんて信じられない!」と言われたことも。今では人並みにカレーが好きですが、食べられないものよりも食べられるものを数えるほうが早い娘がカレー弁当を残さず食べてくれると、「嫌いなんて信じられない」と言わしめるカレーのすごさをしみじみ感じます。

ちなみに、食べ物の好き嫌いはあって当たり前だと思うので、娘に「何でも食べなきゃダメ!」とは言いません。

この日の私のランチは娘のお弁当の残り。娘が食べている様子を想像しながら同じメニューを食べることもお弁当作りの楽しみのひとつです。帰宅した娘のお弁当箱が空っぽになっていると嬉しいものですね。

〈土曜日・おやつ〉

薪ストーブの火が熾火(おきび)になったので、こども園とご近所さんの畑で穫れたさつまいもを投入。30分ほど経ってから取り出してみると、熱々の焼き芋ができていました。

焼きたてを寒空の下で食べたら最高においしいに違いない。そう思って娘をウッドデッキに誘いました。熱々でねっとり甘く、寒さがおいしさを引き立てます。

 

ところが、「あついからひやして」と娘。こども園のおやつ用に冷蔵庫に入れておいた冷え冷えの焼き芋を部屋の中で食べることにしました。「コタツでアイス」みたいなものでしょうか。

 〈土曜日・昼〉

 この日は夫が所属している農家グループの稲刈りイベントへ。


イベント前に会津若松市の食堂でランチ。漆器屋をリノベーションした趣あるお店で、座敷席がメインなので小さな子ども連れにもぴったりです。

私は七分搗きごはん、味噌汁、ベジ水餃子、豆腐と梅なめたけ、三五八漬けの「ベジ水餃子定食」。もちろんごはんは大盛り。夫は車麩のソースカツ丼定食の大盛り。お米は夫と義兄が栽培している「ひとめぼれ」を使ってもらっています。

 

皮がもっちりとしたベジ水餃子のタネは、会津伝統野菜の「会津丸茄子」、れんこん、しいたけ、たまねぎ、有機オートミール。スパイスが効いた水餃子をポン酢とラー油で食べるとごはんが進みます。

黄色い三五八漬けの正体は「そうめんかぼちゃ」で、サクサク噛むほどに口の中でほどけていく新食感。前々回のごはん日記でそうめんかぼちゃの使い方に迷っていましたが、これは真似したい!

娘は単品の七分搗きごはんと味噌汁。ごはんは完食して、味噌汁は大根と汁だけ食べてくれました。自宅ではほとんど味噌汁を飲んでくれないので複雑な気分です(笑)。

お腹を満たした後はイベントで「こがねもち」という品種の糯米を刈りました。娘も手伝ってくれたものの、すぐに飽きてしまったようで途中からは花を摘んだりかくれんぼをしたり。帰りにグループの農家さんから大量にさつまいもをいただきました。これでまた焼き芋ができる!

この日は夕方から雨予報。前回作った「農民藝術」はお兄ちゃん(義兄)たちが脱穀してくれたおかげでなんとか雨を免れました。

 骨格は春までこのまま。毎年冬には田んぼにも骨格にも真っ白な雪が降り積もり、それもまたなかなか奇怪な風景です。

 〈土曜日・夜〉

先日娘がふろふき大根の味噌だれを気に入っていたので、同じ味噌だれで「田楽みそおでん」を作りました。

 

具は大根、里芋、こんにゃく。娘が「だいこんたべる」と言うので、味噌だれを塗ってあげると、大根は食べずに味噌だれをべろべろ。「二度づけ禁止」と伝えたものの、なめ終わった大根にまた味噌だれを塗っていました。

厚揚げの梅醤油つけ焼き

この日は他に、「大根の皮きんぴら」と「厚揚げの梅醤油つけ焼き」、味噌汁、そして、いただきものの乾燥シシタケを米油で炒めてごはんに混ぜ塩で調味した「シシタケごはん」を作りました。シシタケは別名「香茸」と言われる香り高いきのこ。会津地方の山でも採れるそうです。

乾燥シシタケ

シシタケごはん

食べてみると、驚くほど味も香りも濃厚。夫は「前に食べたイボテングダケに似てるな」と言っていました。イボテングダケはいわゆる「毒きのこ」。田んぼの近くに大量に生えていたそうです。「イボテン酸の致死量を調べて食べたから何ともなかった」そうですが、本当に変な人です(絶対に真似しないでください)。

今回も「混ぜごはんに合わせるおかず問題」は白ごはんの同時炊きで解決。数年前にこの策を思いついてからは混ぜごはんや炊き込みごはんを楽しむ機会が増えました。この秋は他に「栗ごはん」「さつまいもごはん」「里芋ごはん」「舞茸ごはん」を作りましたが、秋が終わる前に「落花生ごはん」「むかごごはん」「銀杏ごはん」も食べたいな。混ぜごはんや炊き込みごはんは、なんと豊かでおいしい風物詩なんだろう!と季節ごとに感じます。

 4週にわたってお付き合いいただいたごはん日記もこれが最終回。最後までお読みいただきありがとうございました。娘は「小麦」「乳製品」「胡麻」がダメで、夫は「肉」「魚介」がダメで、私は「肉」「乳製品」がダメ。人からは「大変なファミリーだね」と言われますが、「お米好き」という共通点があるせいか、それほど大変さは感じずに日々の食事を楽しんでいます。

 ちなみに、現在の家族3人の1か月のお米消費量は約28kg。娘が大きくなったらもう少し増えるのかな。このごはん日記を読んで「ごはんが食べたくなってきたな」とか「今日はごはんを炊こうかな」とか、ほんの少しでもそんなふうに思っていただけたら嬉しいです!

柏木智帆
かしわぎちほ/お米ライター。神奈川新聞の記者などを経て福島県の米農家に嫁ぎ、夫と娘と共に田んぼに触れる生活を送っている。年間200種以上の米を試食しながらその可能性を追究し続け、「お米を中心とした日本の食文化の再興」と「お米の消費アップ」をライフワークに、お米の魅力を伝える活動を精力的に行っている。娘のお弁当生活が始まり「茶色いお弁当」のおいしさを伝えるべく奮闘中。今後は米食を通した食育にも目を向けている。

Instagram: @chiho_kashiwagi
Blog「柏木智帆のお米ときどきなんちゃら」: https://chihogohan.hatenablog.com/

連載中
「お米ライターが探る世界と日本のコメ事情」(Forbes Japan)
「お米偏愛主義論」(朝日新聞 DIGITAL 論座)

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