2020年8月12日

娘が握ってくれたまんまるおにぎりを田んぼで【我が家のごはん日記/津留崎徹花さんちの食卓・3】

 忙しいママにとって、日々の家事の中で悩ましいのがごはんのこと。適度に手を抜きたいけれど、家族には栄養のあるものをバランスよく食べてもらいたい。では、食にかかわるお仕事をしているママたちは、家族のごはんをどうしているの? 

今月の担当は、小学3年生の女の子のママで、東京と伊豆下田を拠点に料理や人物を撮影するフォトグラファーの津留崎徹花さんです。豊かな食環境のなかで暮らす津留崎さんに、日々のごはんと食への思いを綴っていただきます。

津留崎徹花さんちの食卓 #week3

<月曜日・夜>

3度の食事を作り続けるというのは、やはり大変なことですよね。もちろん食卓を囲んで「おいしいね」とみんなで過ごす時間は幸せなのですが、仕事や家事に追われていると「夜ごはんの支度しなきゃ……」と面倒に感じることもあります。

そんなときのためにいつも多めに料理を作って冷凍保存したりしているのですが、最近わが家で定着しているのが料理研究家ワタナベマキさんの発酵野菜レシピ。キャベツや玉ねぎやトマトなどをカットしてほんの少しの塩水に漬けておき、いろんな料理に展開していくというものです。雑誌の仕事でマキさんの発酵野菜レシピを撮影させていただき、試食させてもらったらあんまりおいしくてすぐに本を購入。さらに、実際に作ってみたらこれがとにかくラクでおいしくハマってしまいました。

本のなかでとくにお気に入りのレシピは「卵と発酵トマトのスープ」とか「豚肩ロース肉と発酵キャベツのサワー煮」。ただ切っただけの野菜からは感じられないような、独特の旨味があるんです。

『発酵野菜があればおいしいごはん』(ワタナベマキ/著 グラフィック社)

さらに普段の料理にも取り入れやすいのがまた便利なところ。わが家が常備しているのはキャベツと玉ねぎ。これが冷蔵庫にあるだけで料理のひと手間、いやふた手間くらい省けます。

たとえば今宵のメニューの鹿肉カレー。(夫が解体を手伝った害獣です。前回の連載に詳しくは書いています)。通常、カレーを作るとなると、まな板を出して包丁で玉ねぎを切って時間をかけて炒めます。ですが、発酵玉ねぎはすでにしんなりしているので長時間炒める必要がない。鹿肉を炒めた後に発酵玉ねぎやトマトを加え、その後カレールーを入れたら完成。通常より時間もかからない、まな板も包丁も洗う必要がないのです。さらに甘味と酸味がありコクを足してくれるという優れものなんです。

この日はカレーに発酵玉ねぎを、さらに発酵キャベツにピーマンをちょこっとのせてそのまま付け合わせのサラダに。しんなりしているので生のキャベツの千切りより食べやすく、ザワークラウトのようでおいしい。

夫と娘が「このカレーおいしい〜!」と大絶賛したのは発酵のせい? 鹿肉のせいか? とにかくすごくおいしくて家族全員感動でした。

<水曜日・昼>

以前ご紹介させていただいた味噌汁雑炊に続き、今日のひとり昼ごはんはスクランブルエッグ丼と味噌汁。

自宅にいてひとりでごはんを食べる時はかなり簡素にすませてしまいます。さっと食べて仕事に戻りたいというのと、つい飽食になりがちなのでシンプルなごはんがお腹にも脳にも心地よく感じられるのです。そして卵が大好きなので、目玉焼きや今回のような冷蔵庫にあった具材でスクランブルエッグを作り、丼にするだけで大満足。

調理時間3分。胡椒をたっぷりとかけて、うんおいしい。

<金曜日・夜>

東京にいたときにはあまり食べることのなかった干物。どうもパサパサしている印象で、あまり好きではなかったのです。けれども、下田で干物を買ってみたら「こんなにおいしいんだ〜」とすっかり好きになってしまいました。娘の希望でお弁当にみりん干しをいれることもあるし、この日は夫に「夕飯何食べたい?」と聞くと、炊きたてのごはんと干物というリクエスト。

ならばと買い物に出かけたのは外浦海岸にある「万宝(まんぽう)」という干物やさんです。このお店はわが家の大のお気に入りなのですが、なにしろ厳選された魚と素材や季節によって加減する塩梅が抜群においしいのです。

せっかくなので七輪で炭をおこし(夫が)、この日は金目鯛と娘の大好物サバのみりん干しを焼きました。身がふっくらとしていておいしい〜。炊き立てごはんが止まらなくて困る。

下田に住み始めてからは、冷凍庫に必ず干物がストックしてあります。そのおいしさもさることながら、これがとても便利な食べものであると知りました。買い物が面倒なときでも、ご飯さえ炊けば立派な食事がすぐに整ってしまうし。翌日の娘のお弁当を忘れてた……、なんてときにもあわてません。ラクなうえにおいしい、ありがたい常備食です。

取り寄せもできるので、ご興味あるかたは「ひもの万宝」で検索してみてください。

<土曜日・朝>

夫が勤めている養蜂場では、蜜源としてブルーベリーやレモンなどの果樹も育てています。そのブルーベリーの木々が可愛らしい実をつけ始めたということで、私と娘も一緒にブルーベリー摘みをさせてもらいました。

摘んできたブルーベリーをヨーグルトにたくさんのせて朝食を。すっぱくて甘い〜、おいしい。

さらに、最近『シェフ』という映画をみて無性に作りたくなったボリューミーなサンドウィッチを作りました。発酵玉ねぎもはさんでいるのですが、生の玉ねぎに比べて辛みが少ないのでとても食べやすいです。

あぁ楽しいなサンドウィッチ作り、ということで、「いつか3人でフードトラックでサンドウィッチ屋やろうか〜。やりながら全国を旅したら楽しいね〜」なんて私の妄想をニコニコしながら聞く夫と娘。ハッピーな週末の始まりです。

中に挟んだのはパプリカとキュウリ、目玉焼きとベーコン、発酵玉ねぎです。娘には食べやすいように、食パン1枚のオープンサンドを。

<土曜日・昼>

移住してやりたかったことのひとつが、自分たちの食べるお米を作ることでした。下田に移住してからよい縁に恵まれ、田んぼをお借りして米作りをしています。その米作りも今年で3年目となり、6月に植えた苗もすくすくと元気に育っています。

この日は家族3人で草取りをしようと(普段は夫がひとりでやってくれているのですが)、お弁当を持って出かけました。

最初は私ひとりで黙々とお弁当の準備をしていたのですが、ほかにも家事がたまっていて気忙しくて楽しめない。そこで娘を「おにぎり一緒に握ろうよ〜」と誘いました。「あつい、あつい」と言いながらも頑張って母の手伝いをしようとする娘。上手にできたね、と褒められて嬉しそうな娘。ちょっと面倒だと感じたお弁当作りが、とてもとても楽しい時間となりました。

娘が握ってくれたまんまるおにぎりを田んぼで、あぁおいしいね。

わが家の定番、おにぎりと鶏手羽元の唐揚げ

津留崎徹花

つるさきてつか/フォトグラファー
出版社マガジンハウスに勤務したのち独立し、料理や人物の撮影を中心に活動中。2017年東京から伊豆下田に生活の拠点を移す。移住や下田での暮らしについてwebマガジン「colocal」にて連載「暮らしを考える旅」を執筆中。https://colocal.jp/category/topics/lifestyle/relocate

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