2019年9月4日

産後ドゥーラよろしく、料理をしてきました【我が家のごはん日記/良原リエさんちの食卓・5】

忙しいママにとって、日々の家事の中で悩ましいのがごはんのこと。適度に手を抜きたいけれど、家族には栄養のあるものをバランスよく食べてもらいたい。では、食にかかわるお仕事をしているママたちは、家族のごはんをどうしているの? 

リアルな食卓を写真でレポートする連載、良原リエさんの最終回です。夏休みの終わりとともに、学童のお弁当づくりも終わります。今週は赤ちゃんのいるお家を訪問、産後ドゥーラのようにたくさんの料理もしたのだそう。

良原リエさんちの食卓 #week5

<月曜日・朝>

トマトとナス乗せトースト(オリーブオイル、塩)。玉ねぎとエノキのスープ(塩、醤油)。

岐阜から戻ってきました。息子が収穫したトマトとナスをフライパンでソテーして、千空農園近くのパン屋さん、天然酵母パン工房 Beansで買った食パンをトーストして合わせました。

朝、起きて息子が一言「ぼくは東京がきらい。岐阜に住めばよかった。夜は涼しいし、川で遊べるし」。

岐阜では日中に気温が高くなっても、山や木々、土のおかげで夜は冷んやりとしていました。比べて東京の夜は、なかなか気温が下がりませんね。息子は自然の豊かさはもちろん、ヒートアイランド現象についても身を持って気づいたようです。

すっかり意気消沈しているので、千空農園さんのお野菜を並べることに。楽しかった思い出を言葉にしながら、岐阜の味を美味しくいただきました。

<月曜日・昼>

夏野菜カレー(トマト、ナス、玉ねぎ、じゃがいも、鶏肉、しめじ、塩、醤油、米油、ココナッツミルク)。レタスと海苔のサラダ(塩、酢、オリーブオイル)。

「千空さんで食べたカレーが食べたい」。岐阜を思い出しては悲しみにくれる息子に、岐阜で作ったカレーと同じ作り方で用意しました。野菜の水分だけで作るカレーはなんとも贅沢。コクや旨味がたっぷりなのに、爽やかで胃持たれしない。最高です。

<月曜日・夜>

餃子(鶏ひき肉、エノキ、小ねぎ、醤油、米油)。

夫からのリクエストで餃子に。

我が家の餃子は、いろいろな具で試してきた結果、鶏ひき肉とエノキのみじん切りを半量ずつ合わせる、というレシピに落ち着きました。さらに小ねぎやニラなど、そのときにある香味野菜を加えています。

合びきや豚ひき肉では重すぎるので、鶏ひき肉でさっぱりと仕上げるのが好みです。またエノキを大量に加えることで、旨味が増し、水分のおかげでジューシーに仕上がります。エノキのみじん切りは、根元を掴み、先端からはさみで切ると簡単です。

今日は餃子だよ!となれば、餃子だけをひたすらに食べたいので、重くない具が一番なんです。夫も息子も私も、うまいねー、さいこーだねとわあわあ言いながら、50個近くを平らげました。美味しかった!

<火曜日・お弁当>

餃子。長芋のソテー(醤油、米油)。生ニンジン。ミニトマト。たくあん(買ったもの)。醤油海苔弁(白米)。葡萄。

昨晩、大好評だった餃子と、ごはんを冷ます間にさっと焼いた長芋のソテー。岐阜から持って帰ってきた自然栽培の葡萄などを詰めて、あっという間に完成。

息子は、今日から学童へ。年上のお友達とも遊べる学童が大好きなのだそうで、楽しみいっぱいの顔で出かけて行きました。 帰宅するなり「お弁当うますぎた~!」との報告。何よりです。

<火曜日・夜>

鶏肉とレタスの煮込みうどん(しめじ、醤油)。たくあん。

夫がまた仕事でしばらくいないので、二人だけの夜ごはん。息子からのリクエストでうどんを。相変わらず息苦しい暑さだけれど、あたたかいものを食べてかく汗なら気持ちがいいですね。 

<水曜日・お弁当>

鶏肉とレタスのクタクタ煮。長芋のソテー。切り干し大根のトマト炒め(玉ねぎ、醤油、米油)。ミニトマト。生ニンジン。赤紫蘇混ぜごはん(白すり胡麻)。

鶏肉とレタスのクタクタ煮は、昨日の煮込みうどんから具だけを取り分けておいたもの。こうした水分の多いおかずは、上の写真左側に見える湯のみに水分を切りつつ取り分け、ラップや蓋をしないで冷蔵庫で保存します。ドライな冷蔵庫内のおかげで、ほどよく水分が飛びます。ミニトマトやブロッコリーなども、洗ったり茹でたりした後に、冷蔵庫にそのまま置いて水分を飛ばしています。お弁当を準備する頃にはキンキンに冷えているので、温め直しをせずにそのまま詰めています。

それでも心配な場合は、自分のためにもお弁当を作ることをおすすめします。時間が経ったときのおかずの状態がよくわかります。わざと15時頃など時間をずらして食べれば、傷む可能性もチェックもできます。

<水曜日・おやつ>

苺アイス(バナナ、甘酒、豆乳、苺)。

仕事で来客。何か冷たいおやつをと思い、アイスを作りました。 冷凍してあった苺を使って、全ての材料をミキサーまたはブレンダーで撹拌すればできあがり。甘さ控えめで、見た目よりもずっと爽やかな後味です。

<水曜日・夜>

かき揚げ(桜海老、玉ねぎ、青しそ)。天ぷら(ナス、長芋、青じそ)。素麺(出汁、醤油)。ミディトマト。

この組み合わせは、岐阜で数日前にも食べたばかり。でもまた、すぐ食べたくなってしまいました。仕込みをしている私に「何の天ぷら? ナス? え~」という息子に「千空さんのナスだよ」と返すと、「やった~! 千空さんのナスなら大好きなんだよ」と息子。

これこそ私が求めていたこと。お世話になっている農園をわざわざ訪ねるのは、野菜を作る大変さを知り、作っている方々に敬意を払ってほしい、そして野菜を大好きになってほしいから。単純な息子は、千空さんのお野菜ならなんでも美味しい、なんでも大好きなんだそう。これからも頻繁にお願いしなければいけませんね。

桜海老はヤドカリのエサとして買ったもの。余ったので、人間の料理にまわしました。

<木曜日・お弁当>

天丼(かき揚げ、茄子、出汁醤油、白米)。切り干し大根のトマト炒め。長芋のソテー。ミディトマト。たくあん。西瓜。

切り干し大根のトマト炒めは、思いつきで作ってみたのですが、トマトの旨味を切り干しが吸い込んで、出色の出来。 お弁当を詰める私の背後から「おかあさん、切り干し入れた?」と聞くので、もしや入れて欲しくないのかなと一瞬よぎったところに「絶対入れてよね。うますぎた」の言葉が。言葉使いは少年らしくなってしまったけれど、まだまだ素直でかわいいですね。 ミディトマトは、千空農園で息子が収穫したもの。これも息子のリクエストにより入れました。

<木曜日・おやつ>

ラーメン。

仕事の帰りに前を通り、思わず吸い寄せられました。シンプルな味付けの出汁がたまりません。店内もシックでとてもきれい。丼の中の世界と内装がぴったり合致していて、気持ちのいいお店でした。

<金曜日・お弁当>

長芋とシメジの炒め物(玉ねぎ、醤油、米油)。隠しソーセージ。焼きかぼちゃ。オクラの出汁醤油漬け。ミディトマト。生ニンジン。たくあん。オリーブオイル醤油海苔巻き(五分づきごはん)。メロン。

学童弁当はこれにておしまい。最後のお弁当には面白い仕掛けがあったらいいなと思い、隠しソーセージを。長芋の炒め物と焼きかぼちゃの下に、ソーセージを隠しました。隠しソーセージは、夫がたまにお弁当を持っていくときに仕込む、私の密かな楽しみ。夫の場合は、ただおかずの下に隠すだけではなく、ミディトマトの中をくりぬいて入れたり、枝豆のさやの中に豆に見立てて切ったソーセージを入れたりと、毎回、工夫を凝らすことを趣味にしています。息子もそろそろ、このアホらしさがわかる年齢になったかなと思い、初めてトライしてみました。

ところで、学童のお友達から「お弁当が地味だねー」と言われるのだそうです。それも何人もから言われたとのこと。さらには「木のお弁当箱なのも、僕だけなんだよー」とも。「でもさ、おかあさんのお弁当、意外と美味しいよね!」と付け加えました。

なるほど確かに地味だよね、と一瞬暗い気持ちになったものの、息子はこの話を実にあっけらかんと話していて、全く気にしてはいない様子。

きっとお子様ランチのような華やかなおかずが詰まっているお弁当と、隣合わせで食べているだろうと思うのですが、「餃子と切干と長芋とオクラとかぼちゃとソーセージが美味しかった! 天丼と海苔巻きもー!」と今週のおかずを思い出して、楽しそうに話しているところを見ると、私の地味弁で満足している様子。ほっとしました。

息子の舌には、野菜それぞれの味や旨味、出汁の美味しさを知ってもらいたくて、肉や油、甘さでごまかさないようにと料理を作ってきました。ひとまずは、伝わっているようで嬉しいです。

<金曜日・昼>

煮物(大根、ジャガイモ、玉ねぎ、ニンジン、しめじ、こんにゃく、油揚げ、塩、醤油)。ナスの酢味噌炒め。かぼちゃの塩煮(オリーブオイル)。はりはり漬け(切り干し大根、昆布、酢、醤油)。シシトウのおかかナンプラー炒め。焼き芋。ブロッコリーとエノキのオイル蒸し。カブの葉と油揚げのさっと炒め。オクラの昆布醤油漬け。カブとキュウリの酢醤油漬け。さやえんどうの黒ごま醤油和え。いりこふりかけ(黒すりごま、金ごま、塩)。

友達に赤ちゃんが生まれたので、赤ちゃんの顔を見るついでに、産後ドゥーラよろしく料理をしてきました。まだまだ目が離せない赤ちゃんを抱えて、料理もままならない時期だからこそ、作り置きおかずがあったら助かるだろうと自分の経験から思います。だからお友達に赤ちゃんが生まれると、顔を見に行くついでに台所をお借りするのです。

一緒に行った友達が、アシスタントとして手伝ってくれたので、サクサクと進み、2時間ほどで12品完成。みんなで味見がてら、つまんで楽しみました。

完全母乳なのだそうで、美味しいミルクができるようにと根菜中心に、お肉は使わず、野菜のおかずばかりをシンプルな味付けで作りました。夏場なので保存がきくように、味付けは濃いめにしたり、酢を多用して。

写真の左下に写り込んでいるのは、ジッパー袋に入っているいりこふりかけです。産後のお母さんには、いつも必ずお土産に手渡しているものです。にぼし粉にごまと塩を加え、ジッパー袋の中で混ぜるだけでできあがります。見た目もなんとも地味なのですが、ごはんにふりかけるととても美味しい。カルシウム補給として妊娠中に作り始め、産後はもちろん、今も我が家の食卓に上がる、大切な味です。これまで本当にたくさんのお友達にプレゼントしてきたなあ。気に入ってくれると嬉しいです。

<土曜日・朝>

スコーン(地粉、塩、オリーブオイル)。苺とプルーンのジャム。ミディトマト。ミニトマト。豆乳。コーヒー。

起き抜けに息子が「今すぐバドミントンをやりたい!」と言うので、さっとスコーンの生地を仕込んでオーブンに任せ、焼いている間に少しプレー。 ジャムはモルドバの無農薬のもので、甜菜糖を使って作られているお気に入り。

<土曜日・昼その1>

ナスとトマトのパスタ(ソーセージ、ナンプラー、醤油、生姜、オリーブオイル)。トマト。

久しぶりに夫が帰宅したと思ったら、数時間滞在で次の仕事へ。出かけるタイミングに合わせてパスタを。 ナンプラー+生姜の味付けは大人向きですが、変化球としておすすめ。

<土曜日・昼その2>

トマトパエリア(鶏ひき肉、玉ねぎ、ニンジン、エノキ、塩、醤油、オリーブオイル)。キュウリの酢味噌和え。茹でとうもろこし。ミニトマト。ナスと長芋、かぼちゃの天ぷら(地粉、米油)。ひじきとトマトの酢醤油マリネ。

お友達親子に声をかけて、親子ごはん会。普段は持ち寄りで集まることが多いのですが、夏場なので持って来なくていいですよ~と声をかけ、ありものでささっと用意しました。

家に人を招くときは、誰かが来るからと言って、料理を頑張りすぎないようにしています。リラックスして欲しいから、我が家で食べている料理の延長ぐらいが一番です。

<日曜日・朝>

なめたけ(エノキ、醤油、酒)。ミニトマト。たくあん。わかめの味噌汁。ごはん(五分づき)。

夏休み最終日です。明日からまた学校が始まります。朝ごはんはいつものごはんと味噌汁を用意して、明日からの日常に備えます。朝晩だけ少し涼くなってきたので、夏場以外は常備しているなめたけを作りました。これさえあれば、ごはんがどんどんすすみます。なめたけのおかげでさっとごはんが食べられるので、寝起きの悪い我が家にはとても助かる一品です。

さてこのごはん日記もこれにて終了です。ちょうど夏休みのはじまりから終わりまで、我が家のごはんを記録することになりました。振り返ってみると、せっかく多くの方が見てくれる機会だというのに派手さからはほど遠く、地味な料理ばかりですね。野菜もトマト、ナス、キュウリばかり。同じものばかりを食べているなあと思いました。

でも、家庭の料理ってそんなものだと思っています。旬のお野菜をちょっと飽きながらも食べ、季節を感じ、そして同じような料理が続いても、それがその家庭の味になっていくのではと思います。

地味さしかありませんが、体を作る時期である息子にも、中年太りが気になる夫や私にもちょうどいいなと感じています。これからも当たり前に、普通の料理を楽しく美味しく、作って食べていけたらなと思います。みなさんもどうぞ、楽しく美味しい毎日をお過ごしくださいね。 

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久しぶりのお弁当。とても嬉しい【我が家のごはん日記/良原リエさんちの食卓・1】の画像14良原リエ
よしはらりえ/音楽家。アコーディオニスト、トイピアニスト、トイ楽器奏者として、映画をはじめ、TV、アニメ、CM、ミュージカルなどの演奏、制作に関わる。トイ楽器を用いた子ども向けコンサート、ワークショップなども行っている。著書に『まいにちの子そだてべんとう』『たのしい手づくり子そだて』(アノニマ・スタジオ)『トイ楽器の本』(DU BOOKS)など。

instagram @rieaccordion

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