『すいかのプール』【今日の絵本だより 第145回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『すいかのプール』
アンニョン・タル/作 斎藤真理子/訳 岩波書店 本体1700円+税
本日7月27日は、すいかの日。
すいかの縦縞模様を綱に見立て、「7・2・7」を「夏の綱」と読む語呂合わせから決められたのだとか。
『すいかのプール』はお隣の国、韓国の絵本ですが、そのことをまったく忘れてしまうくらい、私たちの心にある「すいか感」がそのままに満ち満ちています。
真夏のお日さまの下で、すっかり熟して、「ちゃっ」と音を立てふたつに割れたすいか。
そこへ、はしごを抱えた麦わら帽子のおじいさんがやってきて、
「ふーむ、まだ だれも きてないな。」
まあ、こーんな大きなすいかだったんですね!
おじいさんがはしごをすいかに立てかけて上まで登ると、そこは一面、見事なすいかの断面。
「すいかのプールの プールびらきです。」
おじいさんはすいかに足を踏み入れ、「さっく さっく さっく」と歩いて、種を「すぽっ」と手に取り、種の跡の穴に肩までつかって、
「うーむ、きもちいい」。
さあ、浮き輪を抱えた子どもたちも、たくさんやってきましたよ。
「わあー!!」と歓声を上げ、「さっく さっく さっく」、葉っぱの飛び込み台から飛び込んで「しゃぽん!」。
みんなではしゃいで、一緒に足をぴちゃぴちゃさせれば、赤いすいかジュースがどんどんたまります。
突然現れた大きなすいかに、老いも若きもみんなが普通に集まって、すいかの中でプール遊び。
(しかも、毎年恒例のようなんです。)
現実からいつの間にか、ちょっと不思議な世界へ。
このふわっと自然な飛び越え方が、とても絵本らしくて素敵です。
文章とも映像とも違う、絵本ならではの納得感。
声高に語られているわけではないのに、甘くさわやかなすいかの香りや感触が胸に残るのは、ページを開いている間、読む側もすいかのプールに身も心もすっかりひたったからなのでしょうか。
ラストの少しさみしいような、それでいてうれしい期待を残す余韻も、格別の味わいです。
発売中のkodomoe8月号連載「季節の絵本ノート」では、『すいかのプール』『そうめんソータロー』も含めて、夏のおいしいものの絵本を5冊ご紹介しています。
今年は長梅雨でしたが、全国的にはもうすぐ待望の梅雨明け、夏本番。
食卓でも絵本でも、親子で存分に夏の味をお楽しみください。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。