『ぎょうれつのできるすうぷやさん』【今日の絵本だより 第93回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『ぎょうれつのできるすうぷやさん』
ふくざわゆみこ/作 教育画劇 本体1300円+税
朝晩しっかり冷えるようになり、ほかほか湯気のたつメニューが恋しいこの頃。
先月はおでんの絵本をご紹介しましたが、今月はあったかスープのお話はいかがですか?
それがこちら、『ぎょうれつのできるすうぷやさん』です。
ぐうぐうやまの動物は、みんなそろってくいしんぼう。
そこへ、どこからかただよってきたおいしそうなにおい。
ウサギさん、キツネさん、クマさん、他にも大勢でたどっていくと、着いたのは見知らぬいばらの垣根の家。
門の札には
「はいるべからず
おそろしい
まじょのいえ」
ですって。
いばらのとげなんて怖くないハリネズミくんが垣根の中へ進んでいくと、小さな家の中で小さなトカゲのおばあさんが、かぼちゃのすうぷを煮ていました。
「まじょのいえ」の札は、くいしんぼうの動物たちへの予防線だったのです。
確かにトカゲの小さなお鍋では、大勢にごちそうするだけの量はできません。
次の日は、ハリネズミくんを追いかけて他のみんなも垣根の中へ忍び込みます。
「しかたない、わけてあげるよ」
とトカゲのおばあさん。
ありがたくごちそうになりますが、全員スプーンひとさじずつ。
みんなまだまだおなかはぺこぺこ、どうしよう?
動物らしいのに人間味(?)あふれるひとりひとりが、なんともいきいきしていて素敵。
「おかわりが ほしければ つくってあげるけど
みんな わたしのてつだいが できるかい?」
と言うおばあさんに、みんなもちろん喜んでお手伝い。
クマさんが持ってきた大きな鍋に、泉からくみたての水、畑からとれたてのじゃがいもととまとでつくった、2品目のすうぷ。
「いただきまーす」の笑顔の輪に、こちらもごちそうをいただいたような、ほんわかあった
かい気持ちになります。
「ぎょうれつのできるおいしいえほん」シリーズは、『パンやさん』『すうぷやさん』『はちみつやさん』『ケーキやさん』『レストラン』『チョコレートやさん』の6冊が発売中。
おいしいものと動物に目がない人は、きっととりこになってしまうシリーズですよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。