『おほしさまのちいさなおうち』【今日の絵本だより 第81回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おほしさまのちいさなおうち』
渡辺鉄太/文 加藤チャコ/絵 瑞雲舎 本体1300円+税
10月も、早くも後半。
お店には真っ赤なりんごがたくさん並ぶ時期ですね。
発売中のkodomoe10月号「季節の絵本ノート」でもりんごの絵本を5冊紹介していますが、今回はその中から、この1冊をピックアップ。
『おほしさまのちいさなおうち』です。
お話は、こんな一文で始まります。
「あるところに、おもちゃで あそぶのにも えほんを よむのにも、
すっかり あきてしまった おとこのこがいました。」
テーブルに片ひじをついた男の子の、見事なへの字口。
あきあきっぷりが、とってもよく伝わってきます。
何か楽しい遊びを教えて、と言う男の子に、おかあさんはこう答えます。
「それなら、たんけんに いくのはどう?
おほしさまのおうちを さがしてみるのよ。」
おかあさんの言うことには、おほしさまは夜空だけではなくて、扉も窓もない、小さな赤いおうちにも住んでいるのだそう。
うちの前の道を丘の上まで行けばきっと見つかるはずと聞き、男の子は早速出かけます。
道々出会う人たちにおほしさまのおうちのありかを尋ねながら、丘のてっぺんまでやってくると、風がりんごの木の間を吹き抜け、りんごをひとつ、ぽとんと木から落としました。
それを手にした男の子は……。
まるで昔からある絵本のような安心する空気感ですが、昨年の10月に出たばかりのこの絵本。
英語圏の国ではりんごの季節になるとよく語られる物語を、渡辺鉄太さん・加藤チャコさん夫妻が1冊にまとめました。
読んだ後は、とても素敵な秘密を知ってしまったようなワクワクが、胸に広がります。
この秋は『おほしさまのちいさなおうち』を読みながら、親子でおほしさまをたくさん見つけてみるのはいかがですか。
外に探検に行かなくても、おうちの中のすぐそばで見つけられるかもしれませんよ。
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。