2025年9月25日

「あのときはほんと、死ねとか言ってごめんね」と言ってくれた長女。記念にスクショを撮りました(笑)。激しかった思春期を振り返って思うこと【「タベコト」連載中・日登美さんインタビュー・後編】

一番激しかった思春期を越えた長女とは、いまではいい親子関係が築けているという日登美さん。「いらない」と言われても作り続けたご飯が、子どもの心を繋いでいくと言います。表面の言葉を聞いてついやってしまいがちなことを含め、思春期のときの家族関係の作り方をお伺いしました。インタビュー、後編です。

日登美/ひとみ

3男3女6児の母。10代よりファッションモデルとして雑誌、広告等で活躍。その後自身の子育てから学んだ、シュタイナー教育、マクロビオティック、ヨガなどを取り入れた自然な暮らしと子育てを提案した書籍、レシピ本など多数出版。現在はモデルとして活躍する傍ら、オーガニック、ナチュラル、ヘルシーをモットーに、食、暮らしと子育てのワークショップ、オンライン講座などを行う。
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「ほっといて」は「見捨てないで」の裏返し

――思春期の子どもに反発されると、親も疲れて、つい距離を置いてしまいがちですが、どう向き合えばいいのでしょうか?

放っておきたくなる気持ち、よくわかります。でも一番怖いのは「無視」なんです。 子どもは「ほっといて」と言うけれど、あれは本当は「見捨てないで」の裏返し。

私も、妊娠中に長女の運動会があって、「行こうか?」と聞いたら、「別に、来なくていいし」とハッキリ言われたことがありました。じゃあ行かなくていいのかなと思って行かなかったら……今でも言われます。「あのとき、ママ来なかったよね」って。「普通は来るよね」って。たぶん、一生言われる(笑)。

子どもが弁当を残そうが、こんなのいらないって言われようが、どんなに冷たい態度をとられても、親は与え続ける側でいることが大事なんです。子どもは、言葉では拒否しても、心の中では申し訳ないなって思っています。でも絶対言えないのね。それを言えるほど思春期って素直じゃない。だから、こっそり恩を着せておくくらいでちょうどいいんです。 それを積み重ねることが大事。

言われたことにカチンときて、無視をして、こっちもへそを曲げてしまうと、子どもは本当はすごく傷ついていて、すごく寂しいんですよね。必要としてるのに、突き放したい、でも見守っててほしいという、本当に困った感じになってしまうの。だから、絶対に見放さないっていうのがすごい大事なことなんです。

ごはんは「見ているよ」のメッセージ

そうやって見守っていても、子どもが部屋に閉じこもっちゃうということはあります。思春期の子って理由もなく、親とはかかわりたくもないとアピールしてくるでしょう。そのときに私は、食卓がすごく役に立ったんです。だって食卓ならしゃべらなくていい。

部屋に閉じこもっていても、ご飯だけは置いておくんです。なにかしら好きなものを。 お腹は空くから、いつか必ず食べに来ます。そうすると、「あ、自分のこと忘れてないんだ」って、ちゃんと伝わるんです。そこで、食べないから、部屋から出てこないからといってご飯すら作らなかったら、何かが切れちゃうのね。もう喋れないし、関われなくなってしまう。

お母さんから何も用意されなくなって、本当に突き放されちゃうと、子どもは違うところに拠り所を求めちゃう。危ない世界に入って行っちゃう子もいるんです。食事といってもおむすびとか、リンゴでいいんです。「リンゴあるよ」と声をかけて「そんなのいらない」とか言われながらも、置いておいたらなくなっている。胃袋から親子関係をつなげておくってことは重要なんです。

反発の中にある「自分探し」──親と違うことを選びたくなる時期

――食べ物を通して、気持ちを伝えているんですね。日登美さんは、オーガニックで健康的な食事にも気を遣っていましたよね。

うちは私が食にこだわっていたからこそ、親から言われたことをやるのが嫌になる時期は反発されました。思春期は「俺は母親とは違う」ということを確かめたいんですね。本心では母の言うことに賛同していたとしても、それを認めることができない。したくない。だって、自分を探している時に、これは親が言っていたことだと感じたら気に入らなくなるわけですよね。

だからこそ、小学校までの学童期ってすごく大事なんですね。話を聞いてくれるその時期にやっておかなきゃいけないことがたくさんあります。思春期に入ると、「あれがいいんじゃない?」と言っても拒否されてしまうことがあります。本当はいいと思ってても全部拒否。

一時期、わが家には体に悪そうな炭酸飲料のペットボトルが、山のように置かれていたことがありました。オーガニックを推奨する母への反発心の現れなんでしょうね。母でなく「俺」がいいと思うことを示したいという。「俺は体に悪いと思ってないから。好きなだけだし。反抗じゃないし」みたいな態度を取るんです。でも、もう自分で選ぶことだから、「ただ、体は壊さないでね」とだけ言って、放っておきました。そのまま放っておいたら、いつの間にかなくなりましたけど(笑)。男の子は時間がかかりますね。

思春期には家に寄り付かなかった2人もまた鮭の産卵のように故郷の川に戻ってくる!?(「タベコト103回より)

シャットアウトされても、親から歩み寄るのが信頼の第一歩

――思春期の子に、親の助言がまったく響かないように見えるとき、どう対応すればいいですか?

反発は結局は全部親に責任が来ますから、コントロールしたくなる気持ちはわかります。でも、それは逆効果。「一緒に考えよう」と関係を保つ方が早道に思いました。信頼関係が壊れる前に、子どもとどうやって肩を並べて、どうやったら子どもが親を受け入れてくれるかというのを、親は考えなきゃいけないとも思います。

やらせたいことではなく、子ども自身が好きなことを、親も一緒にやってみるといいですよ。K-POPの誰々がこういうダイエットしてるとか、ドラマで食べていたクレープがはやっているとか、日常の中で話してくれることがあるでしょう。そうしたら体にいいとか悪いとか関係なく、そのクレープを積極的に食べに行くんです。それだったら、お金を出すという名目ができて、親とも並んで歩いてくれるわけですよ。「知らなかったな、こんなのあるんだ」と言って、ちょっと連れていってもらう感じになれば、思春期女子もすごく機嫌よく、暴言吐かずに「行こう」と言ってくれます。そういうことを一緒にやることで、信頼されていきます。

成長したら変わっていく、そのときまでの辛抱

うちの長女も、思春期は本当に激しかったです。「まじ死ね」「クソババア」とか、日常茶飯事。夫にまで厳しい言葉を投げていたんです。だけど、その思春期が終わって、あるときLINEが送られてきました。

「あのときはほんと、死ねとか言ってごめんね」

ああやっと、ごめんが出た……と思って、記念にLINEのスクショを撮りましたよね(笑)。

これを見るまでは、みんな心配だと思うんです。「これは成功例であって、うちのケースとは違うんじゃないか」と言う方もときどきいらっしゃいます。でも、大丈夫。大体3、4年で抜けていきます。あんまり止めない方が早く抜けていく傾向があります。

女の子は、身体を含めた成長がだいたい7年の周期で変わっていきます。7、14、21歳っていう年齢のタームで、すごい変わります。21歳になったらもう立派なもんですよ。変なことを言わなくなる。男の子は、8年の周期で変わっていきます。男の子はちょっと遅いんですよね。普通に思春期を超えてくれば、男の子は16歳、次は24歳が転換期ですね。だから男は20歳過ぎればまともになると思ったら大間違い。24歳ぐらいまで、大目に見てあげてください。長いですけどね。

元気であれば自分はなんとかなる、という気持ちが一番大事

――日登美さんの連載では、台所での家族の風景が印象的でした。忙しい家庭でも、どんなふうに関われるでしょうか?

連載では、長男が彼女と台所で料理している写真もあげていますが、もう食がボロボロだった時期もあるんです。いつも円満に台所に立ち続けたわけではないんですよ。

でも私がずっと意識していたのは、「料理を一緒に楽しむこと」。ちょっと料理をさせたら、褒めて育てることかな。もし、料理男子にしたいと思っているなら、幼児期・学童期に、親が一緒に台所に立つことです。なるべく出来合いを買わないで作るということはしていました。手をかけることが大事というわけではなくて、ケーキのスポンジを買ってきてもいいんです。でも生クリームを買ってきて、合体は一緒にやるとか、それぐらいでもいいんですよね。お母さんに怒られず、楽しかった、美味しかったという経験と、簡単にできたっていう実感があれば、できるようになります。あとは、作ってくれたときは、とにかくベタなぐらい喜びました。

気づけば台所に集まってくる子どもたち(「タベコト」98回より)

それと、簡単に食べられるものを家に置かないようにもしてました。帰ったらなんでもあるとか、コンビニですぐお菓子を買ってくれるとか、そういう環境になると、なんで料理して待たなきゃいけないのってなるでしょう。だから、子どもが「作らなきゃ食べられない」環境にしていました。台所でこんなに美味しいものができるんだったら頑張ろうって思えるのがいいですよね。

栄養的に言うと、思春期ってミネラル不足が問題になりやすくて、実際、栄養不足から来るウツとかすぐ切れる問題も結構関係してくるんですよ。だから私は調味料にちゃんとしたものを使おうとか、食に真剣に取り組んでいました。でもそこに思春期の子を巻き込もうっていうのは難しい話で、それに賛同するかは、彼らに決める権利があるから、無理強いはできないんです。20歳過ぎてから、もったいなかったよねと気づく、それぐらいでいいんですよ。

最終的には「元気な体を持っていれば、どうなっても生きていける」っていうことを、捨て台詞みたいに言っていました。ポジティブな言葉の方が子どもの心に刺さります。「学校行ってないけどさ、あんまり心配してないから。元気なのが一番大事だよね、人間は」とさらっと言いながら、ぱっといなくなったりしていました。そういうことをやっていると、「俺は元気だから、いつかなんとかなる」と思えてくるんだと思いますよ。

>>【前編】「クソババア」と言われたら、「よし、うちの子は元気に育ってる」と思うくらいがちょうどいい。思春期の子どもとの向き合い方

取材・文/日下淳子 撮影/花田梢

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