2015年12月1日

11月のテーマは「くまくま絵本」【広松由希子の今月の絵本・48】

絵本作家で評論家の広松由希子さんの連載。毎月、テーマに沿った、おすすめ絵本をセレクトしていただきます!

11月のテーマは「くまくま絵本」

ぶるるっ。冷え込んできましたね。
こんなときは、手軽にもふもふ…くまくま…

くまはくまでも、
くまのぬいぐるみ=テディベア絵本を集めましたよ。

愛し、愛されるための存在に、
身も心もあたためてもらいましょう。

 

hiromatsu48

まずは、てのひらサイズの1冊、
『くまのテディちゃん』。
きいろいふち、青い毛布、ピンクの足裏。
あどけなく、愛らしい表紙に、ひとめぼれ。

テディちゃんは、ちゃいろの くまさん。
きいろいつりズボンをもっています。

「ほらね テディちゃんが
つりズボンを はいています。」

テディちゃんは、赤いゾウのついた
白いエプロンももっています。

「ほらね テディちゃんが
きいろい ズボンを はいて
あかい ゾウの ついた
しろい エプロンを しています。」

小さな持ち物がひとつずつ、色とあわせて紹介されて、
「ほらね」と、読者に目配せします。
そのなぞるような、ていねいな繰り返しが、
幼い子どもを満足させながら、ゆっくり眠りに誘います。

『ごきげんなライオン』で知られるデュボアザンの絵。
シンプルな線と色が、こんなにもいとしい。

teddy

『くまのテディちゃん』
グレタ・ヤヌス/作 ロジャー・デュボアザン/絵
湯沢朱実/訳 こぐま社
本体800円+税 1998

 

 

『ふわふわくんとアルフレッド』は、
赤と黒の濃淡で描かれた、つましい造りの古典絵本。

ふわふわくんは、アルフレッドが赤ん坊のときからの友達です。
ごはんを食べるときも、テレビを見るときも、
寝るときももちろん、ずっといっしょでした。

ところがある日、新しいぬいぐるみの贈り物が届きます。
アルフレッドの隣の特等席は、トラのしまくんのものになり、
ふわふわくんは、おもちゃ箱行きに……!

「ぼくだって いっしょに あそびたいよ。」

ふわふわくんのとった、大胆な行動とは?
小さなぬいぐるみが、受け身じゃなくなる瞬間。
一見地味な本だけれど、ぬいぐるみの気持ちに
ぐっと感情移入させられます。

こぐまの「くんちゃん」シリーズで知られるドロシー・マリノ。
クマ好き×ぬいぐるみ好き作者の本領が、遺憾なく発揮された一冊です。

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『ふわふわくんとアルフレッド』
ドロシー・マリノ/文・絵 石井桃子/訳
岩波書店 本体800円+税 1977

 

 

行動派のくまといえば、
やっぱり『くまのコールテンくん』ですよね。
思い出の一冊という大人も、たくさんいるようです。

緑のコールテン(コーデュロイ)のつりズボンをはいた、コールテンくん。
デパートのおもちゃ売場で、だれかに買われる日を待っていました。
ある朝、女の子に見初められますが、お母さんに止められます。
「これ、しんぴんじゃないみたい。
つりひもの ボタンが、ひとつ とれてるわ。」

「ぼく、ボタンが とれてるの しらなかった。
こんや さがしに いこう。」

そうっと棚から下りて、寝静まったデパートを
歩き回るコールテンくん。
エスカレーターも知らない、無垢なコールテンくんの
無謀な夜の探検に、読者もハラハラさせられます。

小さな大冒険の結末は……この上ないハッピーエンド。
読み終わると、ぎゅっとだきしめられた気分になります。

kumano

『くまのコールテンくん』
ドン・フリーマン/作 松岡享子/訳
偕成社 本体1200円+税 1975

 

 

さて、上の3冊は、1960年代生まれの西洋くまたちのお話ですが、
2010年代の日本にも、こんな頑固なくま好きの女の子がいました。

『くまの木をさがしに』のきのこちゃんは、
誕生日のプレゼントに、くまのぬいぐるみがほしくて、
誕生日の神様に手紙を書きます。

ほしいのは、自分が
「せかいいち かわいいと おもえる くま」
なのです。

神様からの返事は、
「くまの木へいって、じぶんでえらびなさい」
ということで、くまの木への地図が送られてきました。

勇ましく出かけたきのこちゃんですが……
自分だけのくまを見つけられるのかな?

たわわのくまの木が圧巻!

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『くまの木をさがしに』
佐々木マキ/作 本体1100円+税
教育画劇 2012

 


 

愛したら愛した分だけ、愛される。

くまと絵本で、
この冬も、ほかほかに。

 

 

広松由希子 ひろまつゆきこ/絵本の文、評論、展示、講座や絵本コンペ審査員などで活躍中。
2017年ブラティスラヴァ世界絵本原画展(BIB)国際審査員長。著作に絵本『おかえりたまご』(アリス館)、「いまむかしえほん」シリーズ(全11冊 岩崎書店)や 2001~2012年の絵本案内『きょうの絵本 あしたの絵本』、訳書に『ヒキガエルがいく』(岩波書店)『うるさく、しずかに、ひそひそと』(河出書房新社)など。2020年8月、絵本の読めるおそうざい屋「83gocco」をオープン。https://83gocco.tokyo

web連載「広松由希子の今月の絵本」

Twitter https://twitter.com/yukisse
facebook https://www.facebook.com/yukiko.hiromatsu

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