『おおぐいタローいっちょくせん』【今日の絵本だより 第316回】
kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。
『おおぐいタローいっちょくせん』
マスダカルシ/作 白泉社 1320円
9月14日は、「く(9)い(1)し(4)んぼう」で、食いしん坊の日。
ということで、まさにこの日にぴったりの一冊、『おおぐいタローいっちょくせん』をご紹介します。
「だれかが こっちに むかって
はしってくる。
だれだ!」
道の真ん中を勢いよく走ってくる、ぼっちゃんカットの男の子、その名はタロー。
手を大きく振って、しっかりと目を見開いて、走る走る。
その行く手に突然現れたのは、なんと大きな食パンの壁。
「とまらない とまらない。
このまま どーする。」
すると、
「つっこんだー!!」
ジャンプして、食パンにそのままダイブしたタロー。
中身をちぎって食べて食べて、トンネルをつくり、どんどん進み続けます。
「ぬけたー!!」
食パンの壁をぬけても、タローの走りはまだまだ止まりません。
すると今度は、空からいくつも連なったソーセージが現れます。
「いきおいよく ジャンプした!
つかんだ!」
そしてタローは……、
「たべているぞ!!」
ただひたすらに「走る」、そして現れたものを迷いなく「食べる」、タロー。
理由も目的もわからないけれど、わき目もふらない「いっちょくせん」ぶり。
その勢いが、なんとも気持ちいいのです。
思いきり、好きなだけ、食べる食べる。
生きることそのものにも似た、すがすがしさ。
保護者側になると、ついつい子どもには「食べすぎ注意」モードになってしまいますが、タローの食いしん坊ぶりは、もはやあっぱれ。
諸手を挙げて、感服です。
理屈抜きの、疾風怒濤のナンセンス絵本。
食いしん坊なお子さんとも、食の細いお子さんとも、ぜひ一緒にお楽しみください。
タローの走りの実況中継のような文章、声に出して読んでいくうちに、大人もテンションがあがりますよ!
選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。