2021年3月7日

『そしておめでとう』【今日の絵本だより 第194回】

kodomoe本誌連載の「季節の絵本ノート」では、毎回2か月分のおすすめ絵本を15冊、ぎゅぎゅっとコンパクトにご紹介しています。
こちらのweb版では毎週、ちょうど今読むのにいいタイミングの絵本をおすすめしていきます。おやすみ前や週末に、親子で一緒にこんな絵本はいかがですか。

『そしておめでとう』【今日の絵本だより 第194回】の画像1『そしておめでとう』
瀬戸口清文/詩 えがしらみちこ/絵 ニジノ絵本屋 本体1700円+税

今年も3月、いよいよ卒業シーズンですね。
今回は今年の1月に発売になったばかりの卒園絵本、『そしておめでとう』をご紹介します。

表紙をめくった扉には、
「おめでとうの あのあさ
 おかあさんの うしろに かくれて ないていた」
と、入園式の看板の前で、おかあさんから離れられずに涙をこぼす女の子。
ここでもうすでに泣けてくる、ママやパパも多いのではないでしょうか。
ページをめくると、
「あのこ いまは
 つよいこ やさしいこ
 こんなに おおきく なりました」
小さかったあの子が、たった数年の間に、卒園式の看板の前で、にっこり笑えるお姉さんになりました。
友だちみんなと過ごした毎日、小さなけんかも、すぐ仲直り。
運動会で玉入れをして、おゆうぎ会でみんなで歌って。
えがしらみちこさんが描く園での毎日は、子どもたちのみずみずしい笑顔でいっぱいの、まるで素敵なアルバムのようです。

『そしておめでとう』は、NHK「おかあさんといっしょ」第8代体操のお兄さん・瀬戸口清文さんが書いた卒園の歌を、絵本化した作品。
1997年に手話ソングとして発表されたこの歌は、一番初めは瀬戸口さんの長女・あゆみさんの卒園にあたって、お父さんが書きおろしてくれたものでした。
版元「ニジノ絵本屋」の特設サイトでは、手話と歌の動画が見られます。
動画で手話を披露しているのは、娘のあゆみさん(歌は堀江美都子さん)。
現在はパントマイムと絵本のパフォーマンスユニット「おむすびひろば」の”絵本のおはなしお姉さん”、みみちゃんとして活躍中のあゆみさんが、2018年に亡くなられたお父さんの歌を絵本の形にしたいと、家族や仲間と力を合わせ、2年半をかけて1冊になったのがこの絵本です。

「げんき ゆうき えがお
 ありがとう
 そして
 おめでとう」
のフレーズがいつまでも胸に残る手話動画、ぜひ特設サイトでご覧ください。
歌と絵本、それぞれに素敵なのですが、歌×絵本を合わせて受け取ると、やっぱり何倍にも増幅して心に響くことを実感。
卒園を迎えるご家族へのプレゼントにも、ぴったりの1冊です。

 

選書・文 原陽子さん
はらようこ/フリー編集者、JPIC読書アドバイザー。kodomoeでは連載「季節の絵本ノート」をはじめ主に絵本関連の記事を、MOEでは絵本作家インタビューなどを担当。3児の母。

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