頭から生えてくる、いろいろな「木」について妄想【ぼくとフジオ・12】
『ねたあとゆうえんち』や『よなかかいじゅうイビキラス』(ともに白泉社)などでおなじみの絵本作家でイラストレーターの大串ゆうじさんが、子育ての中で日々湧いてくる「妄想」を描きます!
今回は「木」(樹木)をテーマにしてみたいと思います。
昨年の11月から12月前半頃にかけ、そこまで寒くない秋晴れの日が多かったです。コロナのことも気になるので、我が家の休日のお出かけは公園に行くことが多くなりました。幸い息子のフジオも自然が大好きなので、公園では虫を探したり、土で遊んだり、いつも楽しそうで嬉しいです。
このあいだ、家族でちょっと遠くの公園に行った時、とても大きな立派なイチョウの木があり、僕は「でかいな……」と見たまんまの感想を小声で呟きながら、しばらく一人でボ〜っとその木を見上げていました。その時、頭の中がス〜ッとリセットされるような気持ち良さを感じました。
その日から、公園ではフジオと一緒に木登りをしたり、散歩中に「この木はなんていう種類だろう?」と思ったり、葉っぱの形が気になったり、不思議な感触の樹皮を触ってみたり……となんとなくいろいろな木のことが気になっています。フジオも木の枝や木の実などを拾うのが大好きで、我が家の玄関には拾ってきた木の枝、謎の実や種、落ち葉などがいっぱいあります。今まで木のことについて考えるようなことはなかったのですが……歳をとったということなのでしょうか、植物に癒やされるような感覚が芽生えてきています。
……と言うことで「木」の妄想を考えてみました。
第12回 フジオの頭からニョキニョキ生えてくる。妄想の木。
頭の上に桜の木が生えてくる「頭山」という落語が好きなのですが、そういう感じで、フジオの成長とともに彼の頭から生えてくるいろいろな木を妄想してみました。
その1 「イヤイヤ木」 2歳頃
「魔の2歳児」のことはわかっていたので、心の準備はしていたのですが、「イヤイヤ期」はやっぱり大変でした〜。かわいい時はとってもかわいいのですが……。今思うとこの時期が一番夫婦喧嘩も激しかったと思います……。
この時期の頭にはトゲトゲで攻撃的な「イヤイヤ木」が生えていました。
その2 「ジュラ木」 4歳(現在)
そんなフジオも4歳になりました。「イヤイヤ木」がだんだんと穏やかな樹木に成長して、今は「恐竜」の事で頭がいっぱいの「ジュラ木」が立派に生えています。「ハクア木」でも良かったのですが「ジュラ木」の方が響きがカッコよいので。
その3 「ハンコウ木」 12歳頃
ここからは未来のフジオです。中学1年生くらい。反抗期まっさかりになっているのではないでしょうか……? 身長も僕より大きくなりそうな感じなので、もうこの頃には抜かれているかもしれません。頭にはグネグネとねじ曲がった「ハンコウ木」が生えていることでしょう。
この木は不用意に近づくととても危ないので、ちょっと遠くから「うわ〜ついにハンコウ木生えて来たよ〜」と観察しようかと思っております。
その4 「ジボウジ木」 28歳頃
そんなフジオも社会に出て、28歳くらい。職場の人間関係や仕事の悩みなどいろいろあり、自暴自棄になっている時期かもしれません。そんな時は一人、終電間際の大衆酒場でホッピーなど飲みながらうなだれているかもしれません。この時期には柳の木のようにうなだれた「ジボウジ木」が生えている事でしょう。こういう時期を乗り越えてフジオらしい、彼ならではの木を育てていって欲しいものです。
ぼくは現在44歳、「チュウネン木」真っ盛りです。フジオの木と一緒にぼくの木もいい感じの木に育つよう頑張って行きたいです。
以上、フジオの頭から生えてくる「木」の妄想でした。ありがとうございました。
大串ゆうじ
おおくしゆうじ/1976年茨城県出身。多摩美術大学絵画科油画専攻卒業。個展などで作品を発表しながら、雑誌、テレビ、広告などのイラストレーションで活躍。著作絵本に『よなかかいじゅうイビキラス』、『ねたあとゆうえんち』(白泉社)『しょうてんがいくん』(偕成社)がある。
www.senggeng.com/kushi/