逆子を戻すためにできることは?【妊娠中のトラブルシューティング・10】
妊娠するとカラダのあちこちが痛かったり、お腹が張ったり……。マイナートラブルが絶えないものの、その対処法がわからない人も多いはず。そこで、産前産後のママのカラダを整える助産師の是枝貴子さんが、妊婦の痛みや辛い症状のメカニズムとその対処法をレクチャーします。Vol.10は逆子について解説します。
モデル/福本マオ 撮影/志田三穂子 取材・文/野々山幸(TAPE) イラスト/原田晃 スタジオ/マミースタジオ 協力/newR clothes
そもそも逆子って?
おなかの中の赤ちゃんは通常、頭を下にした状態でママのお腹の中に入っています。この状態が「頭位(とうい)」です。しかし、何らかの原因で頭が上にきている赤ちゃんがいます。この状態が「逆子(さかご)」で、医学的には「骨盤位(こつばんい)」と言います。
妊娠中期までは赤ちゃんが動き回るスペースがあるので、くるくると頻繁に体勢を変えます。妊娠後期になると、羊水量も徐々に減り赤ちゃんの頭のサイズも大きく重くなり、全体の約95%は自然に頭位に戻りますが、約5%は逆子のまま出産を迎えると言われています。
逆子の場合なぜ帝王切開が選択されるの?
逆子のままでも一定の条件を満たしていれば経腟分娩が可能な場合もありますが、多くの場合、あらかじめ帝王切開と決めておく「予定帝王切開」での分娩が選択されます。
なぜ、逆子の場合、帝王切開が選択されるのでしょうか。頭位の場合、丸くて硬くて体の中でも最も大きい頭部を子宮の壁にぴったりとくっつけながら産道を通過します。ところが、逆子の場合、おしりや足が下になるため、子宮の壁との間に隙間ができ、頭位よりも早い時期に破水を起こしやすくなります。また破水後にその隙間からへその緒が外に出てしまい、圧迫を受けてしまうとへその緒の血流が遮断され、赤ちゃんが危機的な状況に陥ってしまいます。医学的には「臍帯(さいたい)脱出」、「臍帯下垂」と言います。
これらの事態を回避するために、多くの施設では帝王切開による分娩が推奨されており、妊娠34週前後で帝王切開の予定が組まれます。
逆子を直したい!
逆子を直すための方法として、最もメジャーなのは「逆子体操」です。しかし逆子体操は科学的に効果が証明されているわけではないので、逆子体操を勧めていない施設もあります。しかし、経験的に“逆子体操で逆子は直りやすい”と感じている施設が多くあるのも事実で、逆子体操の効果に関しては、医師をはじめ専門家の間でも意見が分かれています。
私もこれまで多くの妊婦さんのカラダを見て感じていることはいくつかあります。「逆子を直したい!」と逆子対策をしたくなるママの心理はよく理解できますので、今回は逆子体操の方法やセルフお灸の仕方について紹介していきます。無理なく実践してみてくださいね。
逆子の対策その①:逆子体操
子宮の位置を引き上げて、お腹の中で赤ちゃんが自由に動けるようスペースを確保してあげるポーズです。1日1〜2回程度で十分です。せかせか行うのではなく、リラックスできる時間帯を選んで行いましょう。途中でお腹の張りを感じたら無理はせず中断しましょう。
1. 四つん這いの姿勢から腕を伸ばし、両肘を床につける。
2. 顔を伏せるようにして、お尻を上に持ち上げたまま10~15分程度キープ。
3. その後、横向きになってリラックスしましょう。
このポーズが楽にできる方はそのままでよいですが、辛い方は、下の写真のようにお胸の下にクッションなどを入れるだけで楽になりますよ。
写真のような体勢が苦しい場合は、骨盤高位(詳しくはVol.2参照)の体勢も効果的です。骨盤高位にすると、骨盤の中よりもお腹の上の方がスペースが広いので、そちらに子宮を引き上げられるので、赤ちゃんがまわりやすくなります。
逆子の対策その②:セルフお灸
お灸は、逆子を直すために用いられてきた伝統的な療法。「三陰交(さんいんこう)」と「至陰(しいん)」は逆子直しの代表的なツボ。血流を改善し冷えを解消することで、赤ちゃんの回転を促すといわれています。
逆子の鍼灸治療は有効との研究報告もいくつかあり、28~32週が効果がでやすいと言われています。
「三陰交」は、足の内側、くるぶしから指4本分上の部分です。血のめぐりをよくするツボなので、冷やさないことが大事です。火を使うお灸も有効ですが、個人的にはせんねん灸の「火を使わないお灸 太陽」を「三陰交」に貼付し、その上にレッグウォーマーを重ねるのをおすすめしたいです。
「至陰」は足の小指の生え際の角の外側にあります。逆子対策に有効だと言われている代表的なつぼです。以下で紹介している「せんねん灸の奇跡」のような、小さめの火を使うお灸なら、しっかりピンポイントで温めることができます。左右の至陰にお灸を1壮ずつ載せ、燃え尽きたら新たにもう1壮載せるという形で、左右3壮くらい実施できると◎。
妊婦さんが自分で足先にお灸をする場合、お灸を置いて待つ体勢がお腹を潰してしまいます。できれば上のイラストのような骨盤高位(詳しくはVol.2参照)か横向きの姿勢でパートナーなど誰かに置いてもらうのがベスト。自分でやる場合も、できるだけお腹を潰さない状態でお灸が燃焼するのを待ちましょう。
マミーサロンでおすすめしているお灸。左が煙が出ないお灸の「せんねん灸 奇跡」、右が大きめサイズで貼るだけで使える「せんねん灸 太陽」。
逆子は、最終的に戻らなかったとしても大きな問題はありません。でも、対策をしなかったことで心残りがあるとママ自身が辛いかも。今回紹介した対策は、お腹の位置を引き上げる、温めてやわらかくするなど、逆子に効果的なだけではなく、妊婦さんがいいお腹の状態を保つことにもつながります。無理のない範囲でぜひトライしてみましょう。
是枝貴子
これえだたかこ/産前産後のママとベビーのためのヘルスケアサロン「マミーサロン」主宰。助産師、鍼灸師、フットケアトレーナーなど数多くの資格を持つ。産科勤務時代、ママのカラダを助けたいと一念発起し骨盤ケアを学ぶ。25000人以上の妊婦、産後ママをケア。現在月200名以上の施術に従事。
5歳の男の子、1歳の女の子のママ。仕事と子育てに追われる日々を綴るブログやインスタも人気。
マミーサロン http://www.mommy-salon.com
ブログ https://ameblo.jp/diary-mommysalon
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